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壬生寺は京都市中京区の壬生というエリアにあります。幕末の頃は、にぎやかな町から少し離れた普通の田舎町でした。そこへやってきたのが、多くの浪人たちです。彼らは、壬生寺周辺の豪農の民家や寺院を宿舎として滞在しました。
やがて多くの浪人は江戸へ帰りますが、10数人が残ります。 壬生寺のすぐ近くの八木邸を宿舎としていた彼らは、その後新選組となったのです。
新選組と壬生寺の関係については、のちほど紹介しますので、まずは、壬生寺の由緒とご本尊についてお話ししましょう。
壬生寺が創建されたのは正歴2年(991)年、 律宗(りっしゅう)の快賢僧都(かいけんそうず)が開祖 です。白河天皇の時代(1077~1080年)になると、壬生寺が御所の裏鬼門(うらきもん:西南の方角)にあたることから、毎年2月に 節分厄除け大法会(だいほうえ) が行われるようになりました。
鎌倉時代に入り、伽藍(がらん)を焼失しますが、円覚上人(えんがくしょうにん)が復興させました。以来民衆からの篤い信仰を受けていましたが、昭和37年(1962)には、放火により再び境内の多くの建物が焼失しました。そのため現在ある建物は、近年に再建されたものがほとんどとなっています。
Photo by photoAC
壬生寺のご本尊は、 延命地蔵菩薩 です。地蔵菩薩は大きな慈悲の心で生きとし生けるすべてを救う菩薩とされています。子どもの守り仏でもあり、道端のお地蔵様としてもとても親しみのある仏様として知られていますね。
ただでさえとてもありがたい地蔵菩薩様ですが、壬生寺の延命地蔵菩薩様はご利益がなんと10個もあります!
少し長いですが、壬生寺公式ウェブサイトよりその十益(じゅうえき)を紹介しておきますね。
このように民衆に親しまれていた壬生寺ですが、そこで剣術や大砲の訓練を行ったのが、壬生狼(みぶろう)とあだ名された新選組でした。 新選組は、屯所(とんしょ:隊士の詰め所)を壬生寺周辺の豪農たちの屋敷(八木邸・前川邸・南部邸)に置きました。
剣術道場などは屯所内に置いていた新選組ですが、軍事教練などで広い場所が必要な時は、壬生寺の境内を使用することも多かったようです。隊士が非番の時は、壬生寺を散策したこともあったのでしょうか。
子供好きと言われている沖田総司などは、壬生寺で近所の子供たちと遊んでいたという話もありますね。
壬生寺の方には迷惑だったかもしれないですが、今となっては新選組とは切っても切り離せない関係となりました。境内の阿弥陀堂を抜けたところには、近藤勇の胸像や池田屋事件で亡くなった隊士、暗殺された芹沢鴨(せりざわかも)らのお墓もあります。
すぐ近くには 新選組屯所跡である八木邸 (離れの公開)、旧前川邸(非公開)内の新選組グッズ販売所などがあり、歴史好きや新選組ファンが多く訪れています。
https://www.mibu-yagike.jp/index.html
壬生寺には坊城通り(ぼうじょうどおり)に面した表門から入ります。表門を入ると正面に見えているのが、ご本尊がお祀りされている本堂です。
本堂は、昭和45年(1970)に再建され、律宗総本山・唐招提寺(とうしょうだいじ)から移されてきたのが、現在のご本尊・延命地蔵菩薩立像です。
本堂内には、 文化財展観室 があり、長谷川等伯(はせがわとうはく)の列仙図屏風(れっせんずびょうぶ)や壬生狂言に関する史料が展示されています。
本堂に向かって左手には、大きな円すい形の千体仏塔(せんたいぶっとう)があります。これは明治時代に行われた京都市区画整理の際にお祀りする場がなくなったために各地から集められたもので、室町時代の仏像など約1,000体の石仏から作られています。
本堂へ向かう参道途中の左側にあるのが、 壬生寺に唯一残っている塔頭・中院(ちゅういん) です。こちらには、鎌倉時代に作られた十一面観音菩薩のほかに、歯の病にご利益がある 歯薬師如来 がお祀りされています。
参道の右側には、本堂に近い順に、
と並んでいます。それぞれにありがたいご利益がありますので、しっかりと手を合わせておきましょう。
弁天堂とよなき地蔵の間にある新しいお堂は、阿弥陀堂です。平成14年(2002)に再建され、堂内には阿弥陀如来・観音菩薩・勢至菩薩(せいしぼさつ)がお祀りされています。
地階には、壬生寺歴史資料館があり、寺宝や壬生寺の歴史に関する資料、新選組に関する資料のほか、隊服のレプリカなども展示されています。
阿弥陀堂を抜けると壬生塚があります。
小さな池を渡ると正面奥には 近藤勇の胸像 があり、初代の局長である芹沢鴨、平山五郎など隊士たちのお墓も並んでいます。 令和4年には、新しく土方歳三の像も設置されました ので、新選組ファンが集う場所としてますます注目されることでしょう。
境内の最も北側に位置するのが壬生狂言の行われる狂言堂:大念仏堂です。こちらは安政3年(1856)に再建されたもので、重要文化財に指定されています。
毎年、節分と春・秋に狂言堂で開催されるのが壬生大念仏狂言、壬生狂言です。 重要無形文化財に指定されている壬生狂言は、中興の祖である円覚上人によって始められました。
当時、円覚上人の教えを聞こうと毎日多くの人が壬生寺に足を運んでいました。しかし、民衆の中には仏の教えが難しくてよく理解できないという人もいます。そこで円覚上人は、誰にでも仏の教えがわかるように、セリフを発せず身振り手振りだけの無言劇(パントマイム)を考えつきました。
これが壬生狂言の始まりと言われ、今もセリフのない無言劇として演じられています。
https://www.youtube.com/embed/5ER4W8sI0SM?si=y4TsRpIaep0R5Gcw
壬生狂言の日程は毎年以下の日程で開催されています。
https://www.mibudera.com/index.html
https://www.google.com/maps/embed?pb=!1m18!1m12!1m3!1d3268.2009517286615!2d135.7408127742129!3d35.00167446700706!2m3!1f0!2f0!3f0!3m2!1i1024!2i768!4f13.1!3m3!1m2!1s0x6001062fce3df753%3A0x65a823117f80f5a7!2z5aOs55Sf5a-6!5e0!3m2!1sja!2sjp!4v1701692511035!5m2!1sja!2sjp
壬生寺周辺は、新選組関連の建物や寺院が多く、また大通りから少し離れていることもあり、古き良き風情が残っています。新選組屯所跡である八木邸などは、幕末の空気がいまだ漂っているようです。
160年前に暮らした彼らを思い、壬生寺やその周辺を散策すれば、有名観光地とは違った京都の表情が発見できるかも。静かな壬生エリアでぜひ素敵な京都の時間を過ごしてみてください。
出典・参考
- 壬生寺リーフレット
- 京都守護職新選組巡礼会公式サイト
- 京都の寺社505を歩く上巻 槙野修著 山折哲雄監修 PHP研究所 2007年
余暇プランナー
京都の歴史や文化、町並みをこよなく愛する副業ライターです。 普段は夫と共に弁当宅配店を運営し、お勤めの方にランチをお届けしています。 趣味は読書、映画鑑賞、御朱印集めです。 京都在住と歴史(特に幕末・新選組)好きという強みを生かして、ひと味違った京都の表情や素敵なスポットの情報をお届けしたいと思っています。 ちなみに京都検定2級取得済み、難関の1級はまだまだ先になりそうです。
【京都】新選組ファン必見!10個もご利益がある壬生寺の延命地蔵さま