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平安遷都1100年を記念して、明治28年(1895)に創建された神社です。
「ご祭神は遷都の立役者である第50代桓武天皇」 と紹介されることが多いですが、これ、情報としては正しくないんです。実は、平安神宮のご祭神はお二人いて、京都の最初の天皇と最後の天皇が祀られています。つまり、 第121代孝明天皇もご祭神 なんです。
なぜ、「桓武天皇」という理解が広まっているかというと、創建当初はそうだったから。孝明天皇が合祀されたのが昭和15年(1940年)で、市民の声によって京都最後の天皇も一緒にお祀りされることになったそうです。
私は関東在住のため知らなかったのですが、京都の街全体を見守っている神様ということで、 「京都のおや神様」「京都の総鎮守」 という呼び名もあるようです。
境内の社殿は、平安京の大内裏の正庁である朝堂院を約5/8で復元したものです。こちらは大極殿(重要文化財)。朝堂院の正殿にあたります。
観光用の写真で見るときは、たいてい建物のクローズアップなので分からなかったのですが、現地に行って驚いたのが、空間の広さです。儀式の際は、高級官僚たちが建物内や上段に、下級官吏たちが広場に集合していたのかなと、想像力をたくましくしました。
これはですね、テレビの「京都ぶらり歴史探訪(BS朝日)」で紹介されていた時の切り口です。あんまり面白かったので、見出しに使わせていただきました。
というのも、「平安遷都1100年を記念して創建」というと、いかにも記念して新しい神社構想が生まれたと考えがちですが、平安神宮の成り立ちはちょっと特殊なんです。
明治になって内国勧業博覧会(いわゆる万博)が開催され、第4回の会場をどこにしようか?と考えた時に、京都案を推す強い声がありました。幕末の戦乱で京都の市街地が荒廃したり、都が東京に移ったことで京都の経済は低迷していたんですね。そこで、復興を後押しする意図もあって会場が京都に決まり、開催年も平安遷都1100年の年に合わせることになったんです。
なので、パリ万博で「エッフェル塔」が作られたのと同様に、 内国勧業博覧会の目玉として「京都らしいものを!」として計画されたのが「平安神宮」 なわけです。
実際、公式ウェブサイトの記述にも、
応天門…第4回内国勧業博覧会のモニュメントとして、平安遷都1100年にあたる明治28年に大極殿等と共に造営された
と明記されています。
上記の由来とリンクするのですが、平安神宮は、増築を繰り返しているのも特徴です。昭和51(1976)年には過激派のテロにより一部の社殿が焼失し、のちに再建という悲しい出来事もありました。
創建時に造営《博覧会の一環で建設》
昭和3(1928)年に造営
昭和15(1940)年に造営
昭和54年(1979)に造営《火事で焼失後、再建されたもの》
高さ24メートル、幅18メートルの大鳥居。現在でも、京都で最も大きい。
明治時代の代表的な池泉回遊式庭園で、昭和50年に国の名勝に指定。広さは約1万坪(33,000㎡)もあります。
入り口は、西側にあって、 南→西→中→東の順に散策ルート が設定されています。
春の桜、初夏の杜若・花菖蒲、秋の紅葉、冬の雪景色と四季折々の楽しみ方がありますが、これからの季節はなんといっても、 5月の杜若(かきつばた)6月の花菖蒲(はなしょうぶ) です。
神苑入口を入ってすぐのところには、有名な紅枝垂桜があるのですが、私が訪れたのは9月だったので、ひたすら緑のお庭という感じでした。東屋(あずまや)に向かっておりていく道は傾斜があるため、車椅子で行かれる方はご注意ください。
また、神苑内は 写真撮影・自由 ですが、 桜のシーズンは三脚の使用が禁止 となっています。
「なぜ日本庭園のなかに電車が?」と思いますよね? 私も思いました。なので、調べてみました。
こちらは「日本最古の電車」と説明書きにもある通り、由緒あるチンチン電車。平安神宮ができるきっかけとなった 内国勧業博覧会の際に京都市内に敷かれた京都電気鉄道の車体 。なんと 重要文化財 に指定されています。
こちらは、 「平安の苑」 と名付けられたエリア。平安時代に書かれた 伊勢物語・源氏物語・古今和歌集・竹取物語・枕草子に出てくる約200種の植物 が、その一節とともに植えられています。
夏から初秋にかけて、濃い緑が楽しめるのが西神苑です。生命力あふれる空間に、人工的な庭のはずなのに自然の息吹を感じました。
6月に花菖蒲が咲くのは、白虎池。 日本古来の品種が2,000株もあって、見頃を迎える6月上旬は圧巻の景色です。花が見やすいよう、この時期には池の上に「八ツ橋」が架かります。
西側から東側に移動するときに通る道。ここを紹介する旅行サイトはまずないと思いますが、ものすごく落ち着く場所だったので写真を載せました。本殿の裏側に位置していて、巨木が立ち並び、太陽がさんさんと降り注ぐ西神苑と比べると少し薄暗いほど。でも、木漏れ日が差し込んで、「原始の森」という風情です。この一帯だけ急に空気がひんやりとしていました。
再び色鮮やかな場所、蒼龍池のある中神苑です。この写真を撮ったのは9月なので、杜若(かきつばた)の群生は、手前と奥に見える緑のところ。この緑色も「のどかな自然美」で美しいですが… 5月上旬から下旬にかけては紫の花弁が花開き、1,000株の杜若が蒼龍池を彩ります 。
蒼龍池の 臥龍橋(がりゅうきょう) です。名前の由来は 「龍の背にのって池に映る空の雲間を舞うかのような気分」 という、造園家・小川治兵衛の芸術性を感じるネーミング。そして、この橋を渡る際は、手前に松の木が張り出しているので、背の高い方は頭上にお気を付けください。
栖鳳池(せいほういけ) と右手に見えるのが 尚美館 、奥が 橋殿 です。
尚美館は、京都博覧会の中堂として建築され、明治45(1912)年からは京都御所にありました。その後、大正2(1913)年に平安神宮に貴賓館として移築され、尚美館と命名。日本画家・望月玉渓による襖絵は、部屋ごとに鶴・松・竹・梅が描かれています。
橋殿は、左右がベンチになっていてひと休みできる場所です。池にすむ生き物たちに餌やりもできます(有料)。建物自体は、泰平閣という、これまた京都博覧会の建造物を移築したもの。楼閣の上には青銅の鳳凰が鎮座しています。
平安神宮の隣には、岡崎公園が広がっています。京都博覧会の跡地の一部を公園にしたもので、京都市美術館、京都市動物園、京都府立図書館などがあります。併せて観光するのもいいですし、近くには 「料亭の朝ごはん」で有名な瓢亭 もあるので、老舗グルメに舌鼓をうつのもおすすめです。(要予約)
リーズナブルな朝ごはんであれば、500円で朝からモリモリ食べられる 「キッチンくじら」 も穴場です。京都はパンも美味しいので、「テイクアウトして公園のベンチで食べる」というのも、これから暖かくなる季節にはいいですね。ぜひ自分好みの朝ごはんを見つけてみてください。
「キッチンくじら」の朝ごはん。箸置きがくじらです。
https://tabelog.com/kyoto/A2601/A260301/26001012
https://tabelog.com/kyoto/A2601/A260302/26028663
出典・参考
- 平安神宮 公式ウェブサイト
- 博覧会 近代技術の展示場(国立国会図書館・電子展示会)
- 京都ガイド
- 京都岡崎コンシェルジュ
余暇プランナー
小さい頃の夢は「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンター、ライターのtomokoです。本業は演劇と外画アニメの演出をしています。子供向けの番組を数多く担当しているからか、小さな子供とすぐ仲良くなれるのが特徴。よく一人旅に出るので独身と間違われますが、既婚です。旅先では美術館や博物館に行くことが多いです。どうぞ宜しくお願い致します。