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2024年から始まる新NISA。気になっている方も多いのではないでしょうか。そこでトクバイニュースでは、新NISAについて紹介する短期集中連載を企画!
「新NISAってなにがいいの?」「投資を始めたいけどリスクがあるし難しそう……」とモヤモヤしている人のために、専門家がやさしく解説します。
これさえ読めば、2024年1月の新NISA・投資デビューも間に合いますよ!
第1回目の今回は、「なぜ今、投資が必要なのか」について。
ファイナンシャル・プランナーでFP法人シグマ代表の吉田篤さんにお話を伺いました。
来年から新NISAが始まりますね。どのような制度か、詳しくはこの連載でご紹介していきますが、一言で言えば、投資をするならぜひ活用したい非常にお得な制度です。
これまで投資をしたことがない方も、ぜひこれを機に個人投資家としてデビューしてほしいと思います。
なぜ今、投資をしてほしいのかと言うと、まさに皆さんが今、日々の買い物で感じている「値上げ」が大きな理由です。
食料品や日用品だけでなく、電気やガソリンなどあらゆるものが値上げされ、昨年の物価上昇率は4%と大きく上がりました。一方で銀行の普通預金の金利は0.001%。賃金も横ばいです。
今はまだ、節約で乗り切れるレベルかもしれませんが、この先もこの状況が続くと、生活は厳しくなります。
下の図をご覧ください。これは、2%の物価上昇(インフレ)が続いた場合のお金の価値を表したグラフです。
物価が2%上がると、100円で買えたものが102円必要になります。つまり、持っている100円の価値が下がってしまうのです。仮に、2%の物価上昇が続くと、1000万円は10年後には817万円、30年後には546万円のものとしか交換できなくなります。
政府と日銀は、長く続いたデフレを脱却するため、このまま2%程度の物価上昇率が続くインフレを目指しています。また、エネルギーや穀物など、原材料が上がる原因となっているウクライナ問題も、まだ解決の見通しは立っていません。こうした背景から見ても、当面、物価は上昇し続けると考えられます。
物の値段は上がるのに、銀行に預けてもお金は増えず、給料も増えない。そうなると、手元は苦しくなる一方ですので、むしろ、お金の増えない預金だけではリスクです。せめて、物価の上昇程度には投資で資産運用し、お金でお金を増やす必要があります。
たしかに投資にはリスクもあります。しかし、投資は上がるか、下がるかのギャンブルではありません。成長し続ける資産にお金を置き、じっくり長く育てれば、誰でも預金より高いリターンを得ることは十分可能です。
「ずっと成長し続ける都合のいい資産なんてあるの?」と思われるかもしれませんが、あります。「世界経済」です。
下の図は、過去約50年における世界各国のGDPと、世界の株価指数を表したものです。端的に言えば、どちらも世界経済の成長を表すものです。
ご覧いただければお分かりの通り、株価指数はギザギザと上がったり、下がったりを繰り返してはいますが、長期的に見れば各国のGDPとともに、右肩上がりで成長しています。
世界の人口は今もなお、増え続けています。それはつまり、「これを買いたい」「もっといい生活がしたい」という欲も増え続けているということ。
人の欲やニーズが大きくなるほど、物やサービスは売れ、経済が発展します。この世界経済の大きな流れにお金を置いておく投資をすれば、資産もゆっくりと成長していくというわけですね。
世界経済に投資するなんて、難しそう……と思われるかもしれませんが、実は投資信託を使えば簡単にできます。
投資信託とは、いろんなものが詰め合わされたパッケージ商品のようなもの。お中元などの贈答品やお菓子などでも、「バラエティパック」といった名称で、複数の商品が詰め合わさったパッケージを見かけますよね。あれと同じで、成長しそうな資産がたくさん入ったものが、投資信託です。
先ほどご紹介した「世界経済」が丸ごと入った投資信託もあります。これをひとつ買っておけば、成長する世界経済に自分のお金を置くことができるので、最初はこれを買うのを私はおすすめしています。新NISAでも、もちろん購入可能です。
投資信託は、リスクを分散させられる点でもメリットが大きいです。株式投資でひとつの企業に投資した場合、その企業の株価が下がったら自分の資産も下落しますが、投資信託は商品によっては数百から数千の資産が入っています。どれかひとつ下がっても、他が上がればカバーでき、リスクが軽減されるのです。
そもそも、株式投資で買う銘柄を選ぶのは、企業情報を調べたり、タイミングを見たりと初心者には難易度が高い。しかし、先ほどご紹介した世界経済が丸ごと入った投資信託なら、いわば「全部入り」ですので、スキルを磨く必要はありません。
値上げが厳しい今、投資に回すお金などない、というご意見もごもっともです。ですが、前述のように、何もしなければこれからますます苦しくなります。
物価が上がっているからこそ、少しでも投資を行う必要があるのだという意識を持っていただきたいと思います。
投資信託は金額を調整しやすく、金融機関によっては100円からでも買えます。まずは、今日の買い物で浮いたお金を回す、あるいはへそくりを増やすつもりで、家計に無理のない範囲で取り組んでみてはいかがでしょうか。
特に教育費や、老後資金など先々のために用意するお金は、投資を取り入れていくことをおすすめします。長期で運用すれば、損失のリスクも減るためです。
次のグラフは、世界株式の投資信託を1年、5年、10年保有した場合のリターンの分布を表したものです。
詳しい説明は省きますが、保有期間が1年では、プラスにもマイナスにも大きく動いていた資産が、徐々にマイナスのブレが少なくなり、10年ではマイナスが出なくなっているのがわかります。
長期投資
2024年から始まる新NISAは、個人投資家向けの非課税投資制度です。期間にしばりがなく、一度開設すれば一生涯使えます。
ポイントは、非課税で運用できる点です。通常、金融商品で得た利益には、約20%の税金がかかりますが、新NISAで取引したものについてはかかりません。
たとえば、通常は10万円の利益が出ても、約2万円は税金で引かれてしまうため、手元に約8万円しか残らないのですが、新NISAでは10万円丸ごと残るので、とてもお得です。投資を始めるのなら、活用しない手はありません。
次回は、改正によってこれまでよりぐっと使いやすくなった新NISAの詳しい中身、上手に活用するポイントについてご紹介します。お楽しみに。
取材・文/カクワーズ
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、日本証券アナリスト協会検定会員補(CCMA)。FP法人シグマ代表。日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)、個人富裕層、法人顧客への資産運用設計コンサルティング会社を経て独立。個人相談のほか、全国で講演も行っている。監修著書に「老後、教育費…将来が不安!でも、面倒くさいことナシで、お金が貯まる方法、教えてください!」(エクスナレッジ)