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ダイエットや健康作りには、自分にとって理想的なPFCバランスを意識して、食事をとることが大切です。
しかし「本当に痩せるのか」「炭水化物(糖質)が多すぎるのでは」「自分にとっての理想のバランスは」と疑問に思う方もいるでしょう。
そこで、今回の記事では「PFCバランス」と「自分の理想がわかる4ステップ計算法」について、管理栄養士が解説します。
PFCバランスとは、1日の摂取カロリーに対し、エネルギー産生栄養素であるタンパク質(protein)、脂質(fat)、炭水化物(carbohydrates)がどのくらいの割合を占めるか示したものです。
PFCバランスは、どの栄養素も過不足なく摂れるバランスを示しています。
PFCバランスを整えることが、いわゆる「食事のバランスを整える」ことにつながり、健康づくりやダイエットを支える食の土台となります。
理想的なPFCバランスは、厚生労働省「日本人の食事摂取基準」により、下記のように示されています。
・タンパク質…13~20%
・脂質…20~30%
・炭水化物…50~65%
この割合は、それぞれの栄養素の過不足を防ぐことと、生活習慣病の予防(または重症化予防)を目的に決められたものです。
カロリーに占める割合を示すため、具体的な摂取量は下記の数字を用いて計算できます。
・タンパク質…4kcal/g
・脂質…9kcal/g
・炭水化物…4kcal/g
1日に必要なカロリーが2,000kcalの場合、PFCバランスのよい摂取量の目安を計算してみると、下記のとおりとなります。
・タンパク質…65~100g
・脂質…44~67g
・炭水化物…250~325g
詳しい計算方法や、自分にとって最適なPFCバランスについては、のちほど詳しく説明します。
「多すぎず少なすぎない、ちょうどよい量」の目安として、PFCバランスが活躍してくれます。
そもそもタンパク質、脂質、炭水化物は下記の働きがあり、体に欠かせない働きをしてくれています。
例えば、脂質の摂りすぎは肥満や悪玉コレステロール値を増加させる原因となり「悪いイメージ」ばかりあるかもしれません。
しかし、極端に不足すると皮膚炎やホルモンバランスの乱れ、エネルギー不足を起こすことが知られており、まったく摂らないのも体によくないのです。
このように、栄養素の過不足のないようにPFCバランスは考えられています。
またPFCバランスを意識することは、ダイエットにも役立ちます。
体にとって必要な量をしっかり補給できるため、ダイエット中でも体調を崩しにくく、リバウンドも防げるからです。
健康づくりやダイエットには、PFCバランスを意識した食事が欠かせないといえるでしょう。
自分にとって理想のPFCバランスは、下記の4ステップで計算できます。
1.必要なカロリーを知る
2.タンパク質を計算する
3.脂質を計算する
4.炭水化物を計算する
順番に詳しく解説します。
必要なカロリーは性別、体格、年齢、活動量によって異なりますが、平均的な体格の場合は下記が目安とされています。
▼男性
▼女性
【身体活動レベル】
Ⅰ(低い)1日のうち、座っていることがほとんど
Ⅱ(普通)座り仕事中心だが、軽い運動や散歩などをする人
Ⅲ(高い)立ち仕事や移動が多い仕事、または活発な運動習慣を持っている人
この表の中から、自分に当てはまるカロリーを探してみましょう。
ここからは、女性(30~49歳)のカロリーの目安である1,750kcalをもとに計算を進めていきます。
まずは1日に必要なカロリー(1,750kcal)のうち、13~20%をタンパク質から摂るとして計算をします。
ここではタンパク質を15%と設定して計算を進めてみましょう。またタンパク質は1g4kcalなので、タンパク質の量に換算します。
1,750kcal×15%÷100=262.5kcal
262.5kcal÷4kcal=65.6g
1,750kcalの場合、タンパク質摂取量を65.6g程度にすると、バランスがよくなることがわかりました。
タンパク質は13~20%と幅があるため、どの割合(%)を用いたらよいか悩むかもしれません。
この範囲内であれば健康に問題のない量ですが、例えば下記を目安にするのはいかがでしょうか。
・15%…どの栄養素もバランスよく摂りたい
・20%…タンパク質をしっかり摂りたい
脂質は20〜30%の範囲であるため、今回は25%で計算をしてみます。また脂質の量は1g9kcalで計算できます。
1,750kcal×25%÷100=437.5kcal
437.5kcal÷9kcal=48.6g
1日に摂ってよい脂質の量は48.6gである、という結果になりました。
脂質の場合も20~30%と幅がありますが、下記のイメージで決めてみるとよいでしょう。
・20%…脂質を減らしたい(コレステロール対策など)
・25%…バランスよく摂りたい
・30%…脂質の多い食べ物も適度に楽しみたい
最後の炭水化物は「タンパク質と脂質の残り」という決め方をします。
ここではタンパク質15%、脂質25%で合計40%となったため、残りの60%を炭水化物から摂る計算です。炭水化物は1g4kcalなので、量を求めるには下記のとおり計算します。
1,750kcal×60%÷100=1,050kcal
1,050kcal÷4kcal=262.5g
炭水化物は262.5g摂ると、バランスのよい食事となることがわかりました。
それぞれを計算した結果、1,750kcalの場合は、下記の摂取量になるように食事をとるようにするとよいことがわかりました。
・タンパク質…65.6g(15%)
・脂質…48.6g(25%)
・炭水化物…262.5g(60%)
もし、もう少し炭水化物の量を減らしたい場合は、下記のように調整しても問題ありません。
・タンパク質…87.5g(20%)
・脂質…58.3g(30%)
・炭水化物…218.8g(50%)
また毎日この量をきっちり守る必要はなく、1週間程度の平均が近くなっていればOKです。
食事のポイントは次で詳しく紹介します。
PFCバランスをきっちり整えるには、食事の栄養価計算が必要ですが、下記の工夫でもおおまかに整えられます。
主食は炭水化物の主な補給源となるため、毎食しっかり食べるようにしましょう。
炭水化物は「悪者」とイメージする方もいるかもしれませんが、適量であれば太る心配はありません。
むしろ、腹持ちのよさから食べすぎやドカ食い防止になるため、ダイエットや健康作りをサポートしてくれます。
主食の量を決めるのは、カロリーやPFCバランス、また個人の食習慣により異なるため難しいのですが、一例を紹介します。
【1食あたりの白ご飯の量の目安】
・成人女性…約165~235g
・成人男性…約235~265g
これはバランスのよい食事がわかる「食事バランスガイド」を参考に計算した量です。
中盛1杯は食べても問題ないため、しっかりと食べてバランスを整えましょう。
主菜と副菜の割合を意識すると栄養バランスを整えやすくなります。
主菜である肉や魚、卵などを食べすぎるとタンパク質と脂質の摂取量が増えてしまうため、PFCバランスは崩れてしまいます。
タンパク質は意外にもご飯やパンなどの穀類にも含まれるため、タンパク質を摂ろうとして肉、魚、卵をたくさん食べる必要はありません。
主菜は控えめにして、副菜(野菜や海藻類、きのこ類)をたっぷり取り入れることで、タンパク質や脂質の摂取量を適正に整えやすくなります。
副菜は主菜の倍の量にするイメージにすると、バランスが整いやすいでしょう。
PFCバランスの「バランスが崩れたら?」「本当に痩せるの?」などの疑問について、管理栄養士が解説します。
PFCバランスが崩れると、何年後、何十年後の健康に影響することがあります。
例えば、タンパク質の摂取量が多いと脂質も多くなる傾向があるため、悪玉コレステロールを増やしてしまい、心筋梗塞や脳梗塞などの病気のリスクとなります。
また炭水化物の摂取量が多いと、血糖値や中性脂肪値を上げてしまい、さまざまな病気を起こしてしまうかもしれません。
バランスが崩れたからといって、すぐに影響が起きるわけではありませんが、元気に長生きするためにも、ぜひ食事のバランスは整えておきたいものです。
PFCバランスを整えると、ダイエットに必要な栄養素をしっかりと補給できます。
しかし、PFCバランスが整っていたとしても、自分に必要なカロリーを大幅に上回っていれば「痩せられない」といえます。
例えば1日に必要なカロリーが2,000kcalのところ、いくらバランスがよいからといって3,000kcal摂ってしまっては、痩せられませんよね。
適正なカロリーにしながら、PFCバランスを整えることで、無理なくダイエットを続けられ、リバウンドしにくい体を作れます。
炭水化物は1日のカロリーの50~65%を占めるため、多いように思う方もいるかもしれません。
しかし、繰り返し伝えているとおり、炭水化物は体に必要な役割があり、優れたエネルギー源となるため、毎日を元気に過ごすためにも欠かせないものです。
特に、糖質(ブドウ糖)は脳の唯一のエネルギー源といわれており、脳では糖質を毎日75g(300kcal相当)消費すると考えられています。
脳のエネルギーが不足すると、ぼーっとしたり、イライラしやすくなったりすることもあるため、毎日しっかりと補給したいものです。
50~65%の間でバランスよく食べられていれば、太る心配は少ないため、安心して取り入れましょう。
今回の記事では「PFCバランス」について、管理栄養士が解説しました。
PFCバランスを整えることで、体に必要な栄養素をちょうどよく摂ることができます。毎日守るのは難しいため、1週間単位でバランスが整っているかチェックするようにしましょう。
また実際に食べたもののPFCバランスを知るには、食事管理アプリを活用すると自動計算されるため便利です。一度チェックしてみるのもよいでしょう。