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海のミルクともいわれ、クリーミーな味わいと栄養豊富さが魅力な牡蠣。
実際にどのような栄養や効能があるのでしょうか?
また、生牡蠣や牡蠣フライなどが定番ですが、栄養を効率的に摂るにはどの食べ方がよいのか知っておきましょう。
今回の記事では「牡蠣の栄養」について、管理栄養士が解説します。
牡蠣は亜鉛、タウリンをはじめとする栄養素をさまざま含む、栄養補給に優れた食べ物です。
とくに亜鉛は、食べ物の中でもトップクラスの含有量です。
さらに、肉類に比べるとカロリーが低く、たんぱく質にも役立つため、ダイエットにもおすすめできます。
具体的なカロリーと栄養素の含有量について、100gと1個あたりの場合を見てみましょう。
牡蠣(むき身)のカロリーは1個20gあたり12kcal、5個分100gは58kcalです。
豚ロース248kcal、鶏むね肉(皮なし)113kcalに比べると、大幅にカロリーが低いことがわかります。
続けて、牡蠣の豊富な栄養素に期待される効能を詳しく見ていきましょう。
牡蠣に含まれる亜鉛は、食べ物の中でもずば抜けて優秀です。
亜鉛には以下の働きがあると考えられています。
・免疫機能の維持:侵入してきた細菌やウイルスから体を守る
・たんぱく質合成:健康な肌や髪の毛を作る
・たんぱく質、DNA合成:子どもの健やかな成長に必要
・男性ホルモンの分泌:不足すると男性ホルモンであるテストステロンの産生や分泌の低下が知られている
さまざまな働きのある亜鉛は、成人では1日8~11mgの摂取が推奨されています。
これは牡蠣3~4個分で充足する量です。
亜鉛は男性に不足気味の栄養素であることが知られています。
また汗により排出されることも知られていることから、激しい運動を行うなど発汗の多い方も不足が心配です。
牡蠣のような亜鉛が豊富な食べ物を意識して取り入るとよいでしょう。
タウリンは主に魚介類に含まれる物質で、牡蠣にも豊富に含まれます。
タウリンは肝臓の働きをサポートし解毒作用を強化する働きがあることが知られています。
またコレステロールの吸収を抑える働きや、視力の回復、高血圧の予防などの効果も期待される成分です。
健康が気になる方は食事の一品として、またお酒を飲む方はおつまみとして取り入れるとよいでしょう。
牡蠣には鉄が含まれ、貧血の予防に役立ちます。
鉄は血液中のヘモグロビンの材料となり、酸素を全身に運ぶ働きをします。
鉄が不足しヘモグロビン濃度が低下する鉄欠乏性貧血の状態では、酸素を運搬する能力が低下し、めまい、息切れ、疲労感、また運動パフォーマンスの低下を引き起こすことがあります。
食事の偏りがある場合や、月経のある女性は不足しやすい栄養素であるため、意識して取り入れましょう。
ビタミンB12はアミノ酸や脂質の代謝に関わり、牡蠣に豊富に含まれる栄養素です。
不足すると悪性貧血(ビタミンB12不足により赤血球が分裂できずに貧血を起こす)や神経障害を起こすことが知られており、慢性疲労や体力低下を引き起こすこともわかっています。
ビタミンB12は主に動物性の食品に含まれるため、肉や魚をあまり食べない方は不足することがあります。
バランスのよい食事を心がけるとともに、牡蠣などのビタミンB12が豊富な食べ物を取り入れるとよいでしょう。
※参照:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」,厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」,厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査の結果」
さまざまな栄養素を豊富に含む牡蠣ですが、具体的にどんな方におすすめできるのかを紹介します。
成長に欠かせない亜鉛を含むため、成長期の子どもにぴったりです。
亜鉛のほかに、成長に大切な鉄やカルシウムも含む点からも、牡蠣は優秀であるといえます。
筋肉の材料となるたんぱく質補給ができるため、筋力トレーニングやスポーツを行う方にもぴったりの食べ物です。
また鉄や亜鉛は汗により排出されるため、筋トレやスポーツをする方は不足する心配があります。
不足により疲労感を生み運動のパフォーマンスを落とすこともあるため、意識して取り入れましょう。
牡蠣はほかの肉類や魚類に比べるとカロリーが低いため、ダイエット中にもぴったりです。
クリーミーで濃厚な味わいであり、満足感も得られやすいでしょう。
牡蠣に含まれる亜鉛には、男性ホルモンであるテストステロンの分泌に関わる作用があるため、精力をつけたい男性は取り入れるのもよいでしょう。
また牡蠣に含まれる亜鉛には、精子の濃度上昇にも関連があることが知られています。男性の妊活に役立つでしょう。
牡蠣は妊娠中に不足しがちな亜鉛の補給に役立ちます。
亜鉛はたんぱく質合成や免疫機能に関わる働きがあり、赤ちゃんの健やかな成長や妊婦さんの健康維持に欠かせません。
妊娠が進むにつれ血中濃度が低下することも知られているため、気を付けて摂取しましょう。
なお、妊娠中は食中毒予防の観点から生牡蠣は避け、加熱したものを食べるようにしてください。
さまざまな方が取り入れたい牡蠣ですが、どのように取り入れるのがベストなのでしょうか?
おすすめの食べ方の例をお伝えします。
牡蠣の栄養を無駄なく摂るなら、牡蠣ご飯やクリーム煮などのメニューがおすすめです。
牡蠣に含まれるタウリンやビタミンB12などの水溶性の栄養素は、水に溶け出やすいことが知られています。
クリーム煮や牡蠣ご飯であれば、溶けだした煮汁も食べられるため、ムダなく栄養素を摂ることができます。
定番である牡蠣フライも栄養素の流出が少ないメニューではありますが、カロリーが高くなるため、食べすぎには注意しましょう。
牡蠣にレモン、ほうれん草、ブロッコリーなどを組み合わせることで、効率のよい栄養摂取ができます。
牡蠣に含まれる鉄は、吸収率の低い「非ヘム鉄」が多いことが知られています。
非ヘム鉄はビタミンCと組み合わせることで吸収率を高めることができるため、レモンやほうれん草、ブロッコリーなどとあわせるのがおすすめ、というわけです。
焼き牡蠣や牡蠣フライにレモンをしぼったり、牡蠣のクリーム煮にほうれん草やブロッコリーを入れたりする組み合わせをぜひ試してみてください。
牡蠣を食べる際は、注意したいポイントやぜひ知っておいてほしいポイントがあります。
・ノロウイルスに注意する
・妊婦や子ども、高齢者は生食を避ける
・加熱する際は中心までしっかりと加熱する
・冷凍でも栄養素はなくならない
・毎日食べる場合は4~5個程度を目安にする
・おいしい牡蠣の見分け方を知る
これら6つのポイントをご紹介していきます。
牡蠣を生で食べる際は、必ず「生食用」を選びましょう。
牡蠣にはノロウイルスという、食中毒の原因となるウイルスが含まれており、おう吐、下痢、腹痛などを引き起こすことが知られています。
牡蠣は、海水中のノロウイルスを含むプランクトンをエサとしてとり込むことにより、内臓部分にノロウイルスが蓄積されていることがあります。
生食用の牡蠣は、紫外線で殺菌した殺菌海水による浄化が行われているため、ノロウイルスの心配が少なくなっています。
加熱用と書かれた牡蠣は加熱して食べ、生で食べたい場合は必ず生食用を購入しましょう。
抵抗力の低い妊婦、子ども、高齢者は、生食を避けるようにしましょう。
ノロウイルスの感染により症状が重症化することがあり、脱水症状を引き起こすことや、吐物を気道に詰まらせて死亡する例もあります。
加熱したものであれば心配は少なくなるため、加熱調理したものを食べるようにしましょう。
牡蠣を加熱する際は、中心まで火が通るよう、しっかりと加熱しましょう。
具体的には中心部が85~90度で90秒以上の加熱により、ノロウイルスを死滅できると考えられています。
加熱が十分であると、茶色や黒色の内臓部分が固まり、身が縮みます。
生焼け・生煮えにならないよう、普段以上に気を付けて加熱するようにしましょう。
「冷凍の牡蠣は栄養がないのでは?」と思うかもしれませんが、心配しすぎる必要はありません。
市販の冷凍食品は、栄養素の損失が少なくなるように急速冷凍されており、栄養はもちろん、味も損なわないよう加工されています。
冷凍のものは手軽に調理でき、また賞味期限も長く保存にも便利です。
ぜひ活用しましょう。
牡蠣は毎日食べても心配の少ない食べ物です。
バランスのよい食事の例を示す食事バランスガイドを参考にすると、1日4~5個ほどが目安となります。
牡蠣を毎日10個以上食べると、亜鉛やプリン体の摂りすぎにつながるため、食べすぎは控えましょう。
牡蠣ばかりでなく、ほかのたんぱく源(卵・大豆製品・肉・魚)もバランスよく取り入れましょう。
一般的な牡蠣の旬である冬は、牡蠣を見かける機会も増えてきます。
栄養豊富な牡蠣を食べるなら、せっかくならおいしいものを選びたいですよね。
おいしい牡蠣は下のような特徴があります。
・身の色が黄色みがかったクリーム色
・身が厚くプリっとしている
・貝柱が半透明で大きい
殻付きの牡蠣はこれらの判別が難しくなりますが、厚みや幅があり殻が黒っぽいものがおいしいといわれています。
牡蠣で残念な思いをしないためにも、ぜひ参考にしてみてください。
※参照:農林水産省「ノロウイルス(ウイルス) [Norovirus]」,帝京大学薬学部物理化学講座 薬品分析学教室「食品中プリン体含量」,農林水産省 厚生労働省「食事バランスガイド」
今回の記事では「牡蠣の栄養」について、管理栄養士が解説しました。
牡蠣はさまざまな栄養素を豊富に含み、子どもから大人まで取り入れたい食べ物です。
いろいろなメニューに活用できるため、ぜひ楽しみながら牡蠣を取り入れましょう!
最後に、牡蠣を使った栄養豊富なレシピを紹介します。
牡蠣に含まれる鉄の吸収を高めるビタミンCを含む、ほうれん草と組み合わせたレシピです。
寒い時期は、体の内側から温まりますよ。
牡蠣とほうれん草のグラタン
牡蠣(加熱用)、ほうれん草(茹でたもの、もしくは冷凍)、バター、ホワイトソース缶、ピザ用チーズ、片栗粉
調理時間:20分
牡蠣から流れ出る栄養素やうまみを、ご飯がたっぷりと吸い込んでくれます。
土鍋での作り方を紹介していますが、炊飯器でも同じ分量で作れます。
牡蠣としょうがの土鍋炊き込みご飯
牡蠣(加熱用)、しょうが、米、○酒、○しょうゆ、○和風だしの素(顆粒)
調理時間:40分
噛むと牡蠣のうまみが口いっぱいに広がる、牡蠣フライのレシピです。
カロリーは高くなりますが、牡蠣に含まれる脂溶性ビタミン(ビタミンA・E)の吸収を油が助けてくれます。
牡蠣のチーズフライタルタルソース
牡蠣(加熱用)、ゆで卵、塩、片栗粉、○マヨネーズ、○酢、○砂糖、○塩・こしょう、●薄力粉、●卵、●牛乳、パン粉、揚げ油
調理時間:20分