大田市場の卸売会社が運営する野菜と果物の通販サイト「みためとあじはちがう店」。気になるネーミングですが、その中身は「規格外」の野菜や果物を取り扱うというもの。実際に編集部でも試し、そのどんな想いで運営しているのか取材しました。

2021年2月5日に運用開始された野菜の通販サイト「みためとあじはちがう店(通称:みたあじ)」をご存知ですか?
実はこちら、日本最大の青果市場「大田市場」の仲卸会社が運営する生鮮野菜と果物の販売サイト。

提供:みためとあじはちがう店

野菜や果物の通販サイトといわれても、そういった通販サイトはすでに世の中に数多くありますよね。
ではこちらのお店の最大の特徴はというと……ずばり「規格外野菜」を取り扱っていること!

規格外野菜ってなに?

「規格外野菜」とは、曲がっている、キズがついている、色が薄い、太さが足りない、サイズが大きい小さいという理由で市場の流通規格に当てはまらない野菜を指します。一般的にスーパー等で販売されている野菜は大きさの違いや、色や形、品質を市場規格に基づいて価格がつけられています。

その市場規格に当てはまらないものの一部はカット野菜やジュースに加工されたり農家が自家消費したりしまますが、その多くはスーパーなどの小売に姿を見せることなく廃棄されてしまうことが多いのです。

これらの廃棄されるはずだった野菜を流通にのせよう!ということで2月5日にサイトオープン!
店名は「みためはちょっと凸凹だけど、食べるといつもの野菜と同じ味だよ」という意味から「みためとあじはちがう店」という名前がつけられました。

商品は2種類のみ

2021年4月現在、一般の方向けに販売しているのはシンプルな2商品のみ。

提供:みためとあじはちがう店

・おまかせ2000円パック(税込¥2160)
・おまかせ4000円パック(税込¥4320)

それぞれ10種以上の野菜や果物が入っていますが、中身はその日のお任せ。なぜなら、毎日市場にやってくる野菜や果物は変わるから。
その日に集荷・発生する内容を見て品目が決まるのです。

注文してみた!

実はオープン当初からこちらのサイトのコンセプトが気になっていた編集部。2月下旬に早速注文してみました!

届いたときはこんな感じ

中身を全部出して並べてみました

注文したのはお任せ2000円パック(オープニングセールのため実際には送料込み・なんと半額でした)。

届いたのは全部で下記12種類の野菜と果物でした。思ったよりたっぷり入っている印象です。特に白菜は超巨大なサイズがまるまる一つ!

  • えのき茸
  • なす
  • 椎茸
  • なめこ
  • レタス
  • ちぢみほうれん草
  • 白菜
  • チョイサム
  • ニラ
  • 小松菜
  • 青リンゴ
  • リンゴ

どこが規格外野菜・・・?

届いた野菜は規格外ということでしたが、みたところ正直、どのへんが「規格外」なのかよくわからないものばかり……。
とんでもなく曲がったナスやきゅうりなどを想像していましたが実際にはぱっと見普通にスーパーで売られていてもおかしくないものばかり。(※1)

例えば、ナスはよく見ると少し表面がザラついているくらい。歯触りが気になりそうな部分だけカットすれば全く問題なく食べられました。
りんごは少しだけ左右非対称ですが食べる分には全く問題なし。なめこはむしろ何が問題なのか全く不明でした……。

※1・・・もちろん全てがそういうわけではなく、ユニークな形の野菜もあるそうです

小松菜はきのことオイスターソース炒めに

規格外ということで少し身構えていましたが
普通に食べられるしいろんな野菜が届くので楽しぃ〜!!
というのが正直な感想でした。

規格外野菜の定義ってあるの?

それにしてもこんなに食べるのに問題ない野菜が「規格外野菜」になっているのはなぜなのでしょう?

「みためとあじはちがう店」の全体統括をしている東京促成青果株式会社の富田潔さんと運営事務局をしているJTBコミュニケーションデザインの田中慶一さんに話をお聞きました。

手前が富田さん、奥が田中さん

規格外のルールって結構わかりにくい!?

今回購入した野菜、規格外ということで凸凹野菜とかをイメージしていたのですが、正直スーパーで販売されているものと何がちがうのかよくわからず……。
なめことかもはや何がちがうのか完全に謎なのですが……。

例えば極端な例ですが、集荷されてきたきゅうりの中に少し曲がっているものが見えると、その中身が全部規格外になることもあったり、なめこの袋であれば配達中にパッケージが擦れちゃったりとか。そんな理由で売れなくなることもあるんです。

えええええ・・・それだけで・・・?もったいなさすぎ!!

さらに、市場に流通している野菜や果物の規格というのは、実は産地ごとに異なったりするのです。
A県での規格ならば2LまでOKだけど、B県での規格なら1Lまでしか売れないね、みたいな感じ。

出典:全農広島県本部 出荷規格表(左)、札幌ホクレン青果株式会社 出荷規格について(右)

確かにこちらによると、きゅうりの長さの規格は
・広島県:16cm以上のSから
・北海道:19cm以上のMから

となり、例えば18cmのきゅうりの場合、広島県ではSとして扱われるが、北海道では規格外の扱いになります。

全く同じサイズと見た目でも管轄する生産者団体の定めた規格が異なることで販売する機会に影響が出てしまうんですね……。
わずか数センチの差がそんなに影響するなんて、さすがに意外です。かなり厳格なんですね。

もともと日本人は綺麗な形の野菜や果物しか買ってくれないからね。
見た目が綺麗なものばかりが選ばれた結果、市場原理が働いて本来味は全く問題ない凸凹野菜が大量に出回らず、極端な場合「廃棄」されることもあるのですよ。

実際私も食べた感じは全く違いがわからなかったです。普通に売られてる野菜と変わらないじゃんって正直思いました。

そう、それでいいのです!規格外でも普通に食べてもらえるってことがわかってもらえればそれでいい。もちろんキズのあるモノは腐りやすくなったりもしますが、形が悪いくらいならスープやジュースにすればいい。
そういう認識が広まって欲しいです。

なぜ規格外野菜の販売をはじめたの?

それにしても、規格外野菜をあえて食べてみるという試みにはどんな狙いがあるのでしょう?

日本一の集荷量を誇る大田市場発でこういった取り組みをすることで、少しずつ市場のイメージを変えていきたいというのがあります。少しかっこいいことを言うと、「私たちなりのSDGs」として活動を始めた、という思いがあります。

「SDGs」という言葉は最近よく聞きますね。

出典:外務省

※SDGs・・・「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称。2015年の国連サミットで採択され、「貧困を無くそう」「飢餓をゼロに」など、17の大きな目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されています。

先日NHKで特集されていましたが、2030年には食糧危機が現実的なものになるかもしれないという説があります。マクロな話ですが。

2019−2020年の穀物生産量は26.7億トン。
世界の人口から1人1日あたりのカロリーに換算すれば2348kcal。

カロリーベースなら飢餓は起きないはずなのに、実際には8億人が飢餓に苦しんでいるといいます。なぜでしょう?

わからないです・・・。

では、例えば牛肉1kgを作るのにどのくらいの水と穀物が必要かご存知ですか?

水は数百リットルとかですかね……?

6~20kgの穀物が必要で、これを作るのに15,415リットルの水が必要なのだそうです。(※2)

肉を生産するのにはものすごい量の穀物と水が必要なんです。

想像の100倍くらい多かったです。

大量生産された穀物が全部食糧として行き渡れば飢餓は生まれませんが、実際にはその何割かが食用ではなく家畜のエサとして使われている現実があるのです。
また、その穀物を育てる大量の水ですが、世界一の穀倉地帯であるアメリカの牧場ではもうすぐ地下水が枯渇するエリアも出てくるといわれています。

普段食べているお肉の裏には穀物と水が凄まじい勢いで消費されているんですね……。

一方で、野菜はどうでしょう。
トマトの場合はバーチャルウォーター(※2)で1個あたり53.5リットル。
牛肉に比べると、その必要量は少ないですよね。

水だけで約300倍も違うんですか!ひえぇー!

別に「野菜中心の食生活にするべきだ!」とはいいません。
ただ、もし先進国の人たちが肉食から菜食メインに変化していけば、世界中の食糧危機はなくなり、持続可能な社会を実現することにつながる。そんな考え方もアリかなと。

※2・・・water footprint networkの調査による
※3・・・輸入した食料を自国で生産すると仮定したときに必要と推定される水のこと

肉と野菜に必要な水と穀物の差(イメージ)

菜食主義者って牛や豚などの命を奪うことに対しての抵抗的なイメージがあるくらいで正直あまり深く考えたことはなかったのです……。
野菜中心の食生活を送ること自体がエコにつながるというのは新しい気づきになりました。

SDGsを大きく捉えるとそういう考えたかもあるのかな?と思っています。

規格外野菜は「きっかけ」

かなり話が大きくなったので戻しますね。
食糧危機がすぐそこまで迫っているというのに、それでも私たちの食生活の裏で日々大量の野菜が“規格外”という理由で廃棄されています。

これを流通に乗せることで、規格外野菜を普段の食生活の選択肢の一つにして欲しいのです。

なるほど。でもちょっと意地悪な質問をしてもいいですか?
人が一週間で食べられる量ってそう変わらないじゃないですか。
たくさんの野菜が「みたあじ」で届くことによってスーパーで売れるはずだった野菜が廃棄されることにもつながるんじゃないですか?

「みたあじ」で買った分だけスーパーの廃棄野菜が増える?

この事業が大きくなりすぎるとそういった可能性も出てきますが、私たちはそもそもスーパーのライバルになることは目的にしていません。

目的は別にあるということでしょうか?

「みたあじ」を通して規格外野菜というものを知っていただき、興味を持って食べてくれる方が現れてくる。
そうすることでこれまで野菜を積極的に口にしなかった人たちが食べる機会を増やしてゆくことこそが私たちの目的です。

普段食べている野菜の代わりになるというよりも、これをきっかけに普段野菜を食べてこなかった人が増えることが狙いだと……。

まさにそういう目的です。先ほどの話に通じますが、今野菜を買っている人たちのパイを取り合うのではなく、野菜を購入する人をこれまでよりずっと増やしていく、いわば新規需要の掘り起こしとでもいうのでしょうか。
そうすれば食品のロスも減っていくのではないでしょうか。
私たちが販売している規格外野菜は見た目こそ凸凹かもしれませんが、市場から直接発送しているので鮮度に関しては自信があります。是非一度試してみて欲しいです。

そういえば私も肉食メインだったのですが、「みたあじ」っていろんな野菜がたっぷり届くんですよね。中には普段買わないような珍しいものも。
そういったものを試したりするうちにこれまで以上に野菜をたっぷり食べるようになった気がします。

それはうれしいことです。私たちがやっているのは「規格外野菜に触れれば8億人の飢餓が救える」というほどの話ではありません。
ただ、飢餓の問題などを抱える今の時代に「私たちはこういう行動を起こしてきて今があるんだよ」と、子供や孫といった次世代に伝えられるようなことをしたいですね。

なるほど。
最初からスケールが大きすぎてビックリしましたが、普段の買い物の中にいつもとは違った意味を見出せたら素敵なことですね!

はい、何も知らずに後10年、20年を過ごすよりもこういう選択もあるのだということをぜひ伝えて欲しいと思っています。
そこにこの取り組みの意味があると思っています。

「安さ」もいいけれど、背景を知ると買い物の考え方が変わるかも?

「みたあじ」を知った時に勘違いして欲しくないのは、「形が変だから安く売っているサイト」ではないということ。

富田さんによると、時には日頃のお客様への感謝の意味も込めて半額セールも行っているとのことでしたが、サイトのコンセプトはあくまで「規格外野菜や果物を消費者の流通に乗せる」こと。
だからこそ、サイトでは「安さ」をウリにせず、「お得」、「安い」といった言葉は一切使われていませんでした。

これまであまり身近ではなかった「規格外野菜」を知るきっかけに、ぜひ試してみませんか?

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情報提供元: トクバイニュース
記事名:「 “規格外野菜”を販売する「みたあじ」が話題!買い物の考え方が変わるかも!?