- 週間ランキング
ゴボウやレンコン、さつまいもなど、「あく」が多いと言われている野菜たち。普段どんな風に下処理をしていますか。「あく抜きの正しい方法って? 」「絶対に抜かないとダメ?? 」「そもそもあくって何? 」など、気になる疑問について管理栄養士が解説します。
あくとは一般的に、食物の苦みや渋み、酸化・褐変(かっぺん=野菜などの色が褐色に変わること)の元となる成分のことをいいます。あく抜きは、好ましくない味を取り除いたり、料理を色よく仕上げたりするために必要な下処理です。
しかし、全ての食材においてあくの成分を取り除く必要があるかというと、そうではありません。あくはそれぞれの食品が持つ個性的な風味でもあります。取り除くことで料理の見た目を良くしたり、澄んだ味わいを作ることができますが、抜きすぎるとその独特の味わいが損なわれる場合もあります。
また、あく抜きは体に悪い成分を抜くことだと思っている人もいるかもしれませんが、これらの成分の中には体にとって良い働きをするものもあります。あくの良い部分を残しつつ、おいしく料理できる下処理方法を覚えましょう。
えぐみの強いタケノコやわらび、ぜんまいなどはあく抜きが欠かせない野菜です。その他、えぐみのある野菜としてほうれん草や春菊、大根などもありますが、近年はえぐみの少ない品種も多く、必ずしもあく抜きが必要かというとそうでもありません。変色を防ぐ目的であく抜きが必要な野菜といえば、ゴボウやレンコン、じゃがいも、さつまいもなどがあります。
しかし、前述した通り野菜のあくの主成分は体にとって良い働きも持っています。また、あくの成分は水に溶けやすいことからあく抜きは主に水にさらして行いますが、この時に他の栄養成分も流出してしまいます。どんな料理を作るのか、何を優先させるのかによって、適度なあく抜きを行いましょう。
ここでは、家庭料理によく登場する「ほうれん草」「ゴボウ」「レンコン」「じゃがいも」「さつまいも」の5種の野菜についてあく抜き方法を紹介します。
ほうれん草のえぐみ成分はシュウ酸です。水に溶けやすい成分なので、あく抜きする際は茹でて水にさらします。水にさらす時間は茹でたほうれん草が冷める程度。なお、シュウ酸は結石の原因となりますが、ほうれん草を生のまま大量に食べるなどしない限り、通常の摂取量では問題ありません。また最近ではあくの少ない品種や、シュウ酸をほとんど含まず生食できる品種も増えています。
これらの野菜のあくはポリフェノール系の成分によるもの。こちらも水に溶けやすい成分なので、切った後に水にさらすことでクセのない味わいを作ったり、変色を防ぐことができたりします。水にさらす時間は5〜10分程度。長時間つけすぎると、栄養素や野菜の持つ風味まで損なわれてしまうので注意しましょう。
このポリフェノール系の成分は、身体に良い働きをするものでもあります。また野菜それぞれの個性的な風味を楽しむためには、あくを残すことも大切。変色が気にならない料理であれば、必ずしもあく抜きが必要な訳ではありません。
なお変色を防ぐためには、水にさらす以外にも「酸性の液(例: 酢水)につける」「加熱する」などの方法も効果的です。これらの野菜が切った時に変色するのは、野菜の中のポリフェノール系の成分が空気に触れて酸化するため。酸化反応が進むためには酸化酵素が必要です。
つまり、ポリフェノール系の成分と酸素、酸化酵素がそろうと、酸化反応が進んで変色が起こります。空気を遮断する、酵素の働きを止めるなど、これらの作用を1つでも止めれば変色を防ぐことができます。
料理のレシピを見ていると、レンコンやゴボウを酢水につける手順が出てきますね。これは、レンコンやゴボウをより白く仕上げるためです。方法としては、500mlの水に小さじ1杯ほどの酢を入れた液に5〜10分程度つけましょう。レンコンは酢水につけるとホクホクとした食感が失われてしまうので、シャキシャキとした食感を生かし、見た目も白く仕上げたい料理の時、例えば「酢ばす」などの調理の際には酢水につけると良いでしょう。反対に、煮物の際には酢水につけると食感が損なわれるので避けたほうが良いでしょう。
また「加熱する」ことで酵素の働きは止まるので、煮物や炒め物、揚げ物などの際には調理の直前に切ってすぐに鍋に入れることでも変色を防げます。
どんな料理でも均一の下処理をするのではなく、目的や仕上がりに合った方法を選んで下さいね。