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日にちの吉凶を占う指標である「六曜」ですが、6つの日の意味はご存知でしょうか。今回は六曜の中でも「赤口」について、民俗情報工学研究家の井戸理恵子先生に教えてもらいました。
「六曜」とは、古くは中国から伝承された日にちや時間の吉凶を占う考え方のこと。かつては時間の吉凶を占う指標として用いられ、賭け事の際に参考にされたりしていました。明治時代の暦改正以降は、日にちを占うものとして利用されるようになり、今では行事などの日取りを決める際によく使われています。
六曜にはその名の通り6つの日があり、それぞれの読み方は「先勝(せんしょう・さきかち・せんかち)」「友引(ともびき・ゆういん)」「先負(せんぷ・せんふ・せんまけ・さきまけ)」「仏滅(ぶつめつ)」「大安(たいあん)」「赤口(しゃっこう・じゃっこう・しゃっく・じゃっく・せきぐち)」です。一つひとつの日に、日としての吉凶やその中の時間帯の吉凶などが決まっており、またその日に「やってはいけないこと」が言い伝えられています。
この六曜が書かれたカレンダーを見ると、毎月1日~末日まで全ての日に何らかの六曜があてはまっているのが確認できます。そのルールは複雑に思われがちですが、実はとっても簡単。基本的には「先勝」「友引」「先負」「仏滅」「大安」「赤口」の順番で並び、繰り返されています。ところが、時々「大安」の次にまた「大安」が来るような並び方があります。これは、基本的な並び方のルールに加え、「旧暦の毎月1日は、あてはまる六曜が決まっている」ため。例えば旧暦1月1日と7月1日は「先勝」といった風に、前日がどんな六曜であっても旧暦1日になれば並び方がリセットされるのです。
今では「日」の吉凶を占うものとして利用される六曜ですが、中国から日本に入ってきた当初は「時間」の吉凶を占うものでした。一日の時間を6つに分け、それぞれの時間帯に六曜があてはめられていました。
赤口はこの時間帯の中で「丑寅(うしとら)の刻」を含んでいるものに該当します。丑寅の刻とは季節によって微妙に時間のずれが生じるものの、現代の時計で考えるとおおよそ午前2~4時くらいのこと。古来、日本においても湿度が高く、魔物が現れやすい不吉な時間帯であると考えられていました。
この「不吉な時間帯」の考え方からも想像できるように、赤口はやがて六曜の日にちにあてがわれてからも、どこかしら不穏な日とされました。仏滅が「物が滅する日」というのに対し、「赤口」は全てが消滅する日。一般的に縁起が良くない六曜として有名なのは仏滅ですが、実は赤口の方が怖くて不吉な日というわけです。六曜の中において、この日は「大凶」とも言える日ですが、正午だけは吉とされています。
赤口には「赤」という漢字が使われています。「赤」のイメージは昼と夜で異なりますが、夜は特に不吉なイメージが連想されます。夜が極まる時刻としての「赤口」においては、「火災」や「血」など「赤」という色から連想される事柄はすべて「死」を予見するものでした。そのためこの日は火や刃物(=料理・家事)を使う際には、特に注意が必要といいます。また、血の気の多い人と諍(いさか)いが起きやすい日でもあるため、そのような知人がいる場合は会うのを避けた方が吉です。
とは言え、実は六曜はあまり信ぴょう性のあるものだとは考えられていません。これは暦改正などにより、本来旧暦の日にちにあてはめて考えられていた六曜が、新暦仕様に日にちなどを変更して使用されているから。元々の形のものではないため、信ぴょう性があまりないとも言われているのです。
ですが、大きな行事などの際は、できるだけ良い日取りを選ぶことで気持ちが前向きになれるのも事実。上手に利用しながら、暮らしに取り入れてみてください。
監修: 井戸理恵子
井戸理恵子(いどりえこ)
ゆきすきのくに代表、民俗情報工学研究家。1964年北海道北見市生まれ。國學院大學卒業後、株式会社リクルートフロムエーを経て現職。現在、多摩美術大学の非常勤講師として教鞭を執る傍ら、日本全国をまわって、先人の受け継いできた各地に残る伝統儀礼、風習、歌謡、信仰、地域特有の祭り、習慣、伝統技術などについて民俗学的な視点から、その意味と本質を読み解き、現代に活かすことを目的とする活動を精力的に続けている。「OrganicCafeゆきすきのくに」も運営。坐禅や行事の歴史を知る会など、日本の文化にまつわるイベントも不定期開催。