「インフルエンザは冬に気をつければいい」。そんな感覚で対策を考えている人も多いのではないだろうか。しかし、2026年は8月の時点ですでにインフルエンザが流行入りした。厚生労働省の集計では、8月17~23日の全国の定点当たり報告数が1.11となり、現在の集計方法になった1999年以降では、2009年の新型インフルエンザ流行時に次ぐ早さだ。過去10シーズンの流行入りの中央値と比べると、約3カ月半も早い。また、埼玉県では9月25日、2023年以来となる、9月時点でインフルエンザ流行注意報を発令した。沖縄県では10月2日、県内全域にインフルエンザ警報を発令した。9月21日~27日(第39週)に報告された1定点医療機関当たりの患者数は42.50人となり、警報の発令基準30人を超え、すでに流行目前の危機的状況にある。まだ暑さが残るなか、ワクチン接種が本格化する前から流行が始まったことになる。しかも、ワクチンは接種すればその日から十分な効果が期待できるわけではない。さらに近年では、接種前後の睡眠や運動、食事と、その後の抗体応答との関係を調べた研究も報告されている。




今年はワクチンだけでなく、普段の過ごし方も含めて対策を考える必要がありそうだ。







8月からインフル流行、「まだ早い」は通用しない?




異例の早さで始まった今年の流行。すでに各地では学級閉鎖も起きている。国際医療福祉大学市川総合病院呼吸器内科部長で、同大学医学部教授の寺嶋毅医師は、「冷房を使用している時期から、インフルエンザが流行したことは、今まで経験がありません。当院では、すでにインフルエンザに感染した患者さんが肺炎を合併し入院されています」と話す。




寺嶋毅先生 
国際医療福祉大学
市川総合病院呼吸器内科 教授





では、なぜ今年はこれほど早いのか。一つの可能性として挙げられているのが、猛暑や大雨が続いた夏の生活環境だ。気圧の変化や寒暖差により、自律神経に過度なストレスを与えてエネルギーを消耗させ、免疫力を低下させることに繋がる。暑さや雨で屋外に出る機会が減れば、エアコンの効いた室内に人が集まりやすくなる。人との距離が近い環境で過ごす時間が増えることも、感染が広がる一因になり得る。




寺嶋医師は、今年の流行について、長期化したり、一度収まった後に再びピークを迎えたりする可能性にも言及している。すでに流行が始まっている以上、「冬になってから」ではなく、今から対策を始める必要がある。







「ワクチンだけ」ではない、日常でできる対策は?




今年厄介なのは、インフルエンザワクチンの接種が本格化する前に、すでに流行が始まっていることだ。しかも、ワクチンは接種したその日から十分な効果が期待できるわけではない。接種後、抗体がつくられるまでにはおよそ2週間かかるとされている。




また、ワクチンによる防御効果は、接種から時間が経つにつれて徐々に低下するとされている。一般的なインフルエンザなどのワクチンの効果は5か月~6 か月と言われている。そのため、流行状況を踏まえ、接種時期についても考えておくことが大切だ。




だからこそ、まずは感染する機会を減らすことが基本になる。外出後の手洗い、必要に応じたマスクの着用、換気、人混みを避けるといった対策に加え、空気が乾燥する時期には室内の湿度にも気を配りたい。厚生労働省では、適切な湿度の目安として50~60%を挙げている。




同時に意識したいのが、日頃の体調管理だ。インフルエンザ対策では、十分な休養とバランスのとれた栄養摂取も基本とされている。




寺嶋医師が挙げるのは、7~8時間程度の睡眠、適度な運動、ストレスをため込まない生活だ。近年では、こうした生活習慣とワクチン接種後の抗体応答との関係も研究されている。例えば、睡眠時間が短い人では抗体応答が低い傾向を示した研究や、運動・身体活動とワクチン接種後の抗体応答との関連を調べた研究もある。




ワクチンを打つかどうかだけではなく、その前後をどんな状態で過ごすか。例年より早く流行が始まった今年は、そこまで含めて考えておきたい。




食事は「何を足すか」より、まず偏らせないこと




では、食事では何を意識すればいいのか。「免疫対策」と聞くと、特定の食品や成分を摂ればいいと思いがち。だが、免疫機能はさまざまな栄養素や体の働きが関わる複雑な仕組みだ。一つの食品だけに期待するより、まず毎日の食事を偏らせないことを考えたい。




たんぱく質だけ、ビタミンだけと一つの栄養素に偏るのではなく、主食、主菜、副菜などを組み合わせて必要な栄養素を摂る。忙しいからと朝食を抜いたり、昼食を麺やパンだけで済ませたりする日が続いているなら、まずそこから見直したい。




こうした食事を基本にしたうえで、食事と免疫の関係について、少し気になる研究もある。




特定の乳酸菌株で発酵したヨーグルトを継続して摂取したグループで、インフルエンザワクチン接種後の一部の抗体価が高かったという試験結果※が報告されている。もちろん、これは「ヨーグルトを食べればだれもがインフルエンザを予防できる」という話ではないが、とはいえ、ヨーグルトは普段の食事に取り入れやすく、免疫細胞や抗体の材料となり体調管理に欠かせないたんぱく質と免疫細胞を活性化させる乳酸菌などを一緒に摂れる理想的な食品の一つだ。朝食に加えたり、間食として選んだりと、日々の食事を整える選択肢として取り入れてみるのもいいだろう。




睡眠、運動、食事を含めて体調を崩しにくい生活を続けることが大切だ。







早すぎる流行 今からできること




9月にインフルエンザ対策と言われても、まだ実感が湧かないかもしれない。だが今年は、すでに流行が始まっている。「ワクチンを接種する。手洗いや換気をする。しっかり眠る。食事をおろそかにしない。」どれも目新しい対策ではないが、流行が例年より早い今年は、始める時期も早めた方がよさそうだ。




「冬になったら気をつけよう」と思っていた人も、今年は少し予定を前倒ししたい。まずは今夜きちんと眠る、明日の食事を少し見直す。インフルエンザ対策は、そんな普段の生活からすでに始まっている。




※出典:Consumption of yogurt fermented with Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus OLL1073R-1 augments serum antibody titers against seasonal influenza vaccine in healthy adults



情報提供元: 舌肥
記事名:「 まだ9月なのにインフル流行入り!? ワクチンは“打って終わり”じゃない、研究で分かったワクチンの効果(抗体応答)を左右する生活習慣とは 」