関東でもいよいよ梅雨入りとなった。そんな梅雨の時期は雨や曇りの日が多く、日差しが少ないため、「紫外線対策をしなくても大丈夫」と油断している人もいるのではないだろうか。しかしこれは大きな間違い。梅雨を迎える6月は、7~8月に続く紫外線量で、曇りや雨の日でも紫外線は降り注がれているのだという。

今回、アンチエイジングのプロである虎ノ門中村クリニック神谷町院・院長の中村康宏氏、同院の管理栄養士、田端麗氏、立木琴菜氏に、6 月の紫外線で気を付けるべきポイントや、内側からの紫外線対策におすすめの栄養素を教えて頂いた。

虎ノ門中村クリニック 院長 中村康宏氏 プロフィール
医師・産業医・MPHホルダー(米国公衆衛生学修士)
関西医科大学卒業後、国家公務員共済組合連合会 虎の門病院に入職。内科医・消化器内科

医として研鑽を積む中で、病気の発症予防だけでなく再発予防、増悪予防の重要性を痛感する。アメリカの最先端予防医学を学ぶため、米国医師免許試験を突破しアメリカ・ニューヨークへ留学。行動科学、健康教育学、医療管理学などを幅広く学び MPH(米国公衆衛生学修士号)を取得。その他、留学中にパーソナルトレーナー・栄養士資格を取得、ライフフスタイル医学コース等を修了。 帰国後、健康増進・健康防衛のための医療を提供すべく「中村康宏内科クリニック」を京都で開業。その後、日本初のアメリカ抗加齢学会登録施設になった「虎ノ門中村クリニック」を東京で開業。一般内科診療からアメリカの最も新しく標準的な医療サービスを幅広く提供。アジア各国で若手医師のネットワークづくりをしながら、定期的に診療中。

梅雨の紫外線に要注意!油断しがちな6月に紫外線が増える理由

雨で日差しが出ていなくても紫外線量が0%になることはなく、曇りの日は快晴時の約60%、雨の日でも30%ほどの紫外線が降り注いでいるという。ではなぜ、日差しが無くても紫外線は発生するのだろうか。太陽光は目に見える光(可視光線)と目に見えない不可視光線があり、紫外線は不可視光線にあたる。同じく目に見えない「空気」同様、雲や雨の間をすり抜けて地上へ降り注ぐため、天候が悪くても紫外線量が0%になることはない。また、梅雨時期は曇りの日も多いが、雲には太陽光を散乱させる働きがあり、快晴の時よりも紫外線量を増加させる場合もあるという。例えば、太陽に雲がかかっておらず、かつ太陽近くに積雲が点在しているような場合には、散乱成分が多くなるため、快晴時に比べて25%を超える紫外線の強度増が観測されることもある。国内の紫外線量が最大値になった事例では全天の80%以上が雲に覆われている状況であったことからも、曇りの日でも紫外線対策はしっかり行った方が良い事がわかる。

梅雨時期に気を付けたい紫外線の注意ポイント

地面や水たまりからの反射に注意

可視光線と同じく、紫外線も地面や水たまりから反射する。そのため空からの日差しだけでなく、下方向からの照り返しにも注意が必要。

地面の種類による反射率
・新雪:80%
・砂浜:10〜25%
・コンクリートやアスファルト:10%
・水たまりや水面:10〜20%
・芝生や土面:10%以下

また、雨や雪が止むと急に晴れ間が広がることがあるが、この晴れ間のタイミングにはとくに強い紫外線が反射するため、水たまりや積雪には注意が必要。反射した紫外線は防止や日傘でガードするのが難しいので、外出するときは日焼け止めを塗って紫外線対策を行っておくのが理想的。

汗や雨による紫外線対策崩れに要注意

高温多湿な時期なので、せっかく紫外線対策をしていても、皮脂や汗でくずれると、そこから紫外線ダメージが入り込んで日焼けやシミの原因に。この時期は、フィット感があり崩れにくい日焼け止めをこまめに塗りなおす、肌の露出を控える、紫外線の強い日中の外出を避けるといった対策はもちろんのこと、併せて、特にこの時期は体内から紫外線対策を行うこともひとつのポイントとなる。

肌の老化の8割は紫外線が原因!今すぐできる紫外線対策

肌の老化には、大きく分けて光老化と、加齢による自然老化の2種類ある。光老化とは太陽光によって引き起こされる老化のことで、老化全体の約8割を占めている。また、自然老化は年齢を重ねることで皮膚の厚さや肌の色が薄く変化していくのに対し、光老化は紫外線を浴びた時間と強さに比例して、皮膚が濃く、厚くゴワゴワになり、色も濃くなるのが特徴。外的刺激による肌のダメージと違い、紫外線を浴びることで、メラニン色素を作るメラノサイトが活性化され、このメラノサイトが過剰にメラニンを生成し蓄積することがシミやそばかすの原因に。さらに、光老化は皮膚がんを発生する原因にもなるため予防がかかせない。

外出時にやるべき紫外線対策

高温多湿な梅雨時期の日焼け止めは、水に強く落ちにくいウォータープルーフでSPF※1や PA※2値が高いものを。また天気が良くても近所への外出程度であればSPFやPAは最高値の半分以下を選ぶなどシーンや天候によって使い分けることで、肌負担を抑えつつ、十分な紫外線防止効果を期待できる。また、紫外線は太陽高度の高さによって降る量が変化するため、1日の間で1番降る量が多いとされる正午前後の外出を避ける、また、外出時は帽子やサングラスなどで肌の露出を防ぐなどといった細かいことを習慣化することが紫外線予防へ繋がる。
※1 UV-B によって起こる急性の炎症を防止する効果の程度。数値が高いほど効果が高い
※2 UV-A を制御する効果の程度

室内での紫外線予防方法

室内は屋根や壁に守られているので、紫外線の影響を受けないと思う人もいると思うが、波長が長いUV-Aは、ガラスやカーテンもある程度通過することができるので、気が付かないうちに紫外線を浴びている可能性も。もちろん、屋外で直射日光を浴びるよりは影響が軽減されるが、室内にいるからといって紫外線対策を怠ると、肌の老化を促す原因になるので、UVカットできる窓ガラス、ガラスシートを張る、さらに遮光できるレースカーテンを取り付けるといった工夫を行い、紫外線の室内への侵入を防ぐことも重要。

紫外線は内側からもガード!紫外線対策としておすすめの栄養素

紫外線対策として日焼け止めや日差し除けはもちろん大切だが、肌が受けたダメージは内側からのケアも重要。ここからは、管理栄養士推奨の紫外線を内側からガードし肌を守るために摂りたい栄養素を紹介しよう。

美肌保守に欠かせない「ビタミンC」

シミの原因となるメラニンは、元々チロシンという無色透明のアミノ酸で、チロシナーゼという酵素の働きによりチロシンを酸化させることで生成され、色素沈着を起こす。ビタミン Cには抗酸化作用があり、チロシナーゼを抑制しメラニン生成を抑える働きがある。また、生成されたメラニンを無色透明に還元する働きもあるため、予防に加えて今あるシミを薄くする効果も期待できる。さらにビタミンCは、真皮にあり肌のツヤやハリに欠かせない重要な役割を担うコラーゲン合成を促進するビタミン。紫外線はコラーゲンや、同じく美肌を保つために重要なエラスチンを減少させ、シワやたるみをつくる原因に。このため、コラーゲンを合成できるビタミンCはシミ予防だけでなく美肌になる為にとても大切なビタミンだ。
ビタミンCは、野菜なら赤・黄ピーマン、ゴーヤ、ブロッコリー。果物ならキウイフルーツ、いちご、グレープフルーツやオレンジなどの柑橘類に多く含まれる。ビタミンCは性質上、水に溶けやすく熱に弱いため、鮮度が良い状態のものを手早く水洗いし、なるべく生の状態で食べることがポイント。加えてビタミンCは食後すぐに摂取する事で食べ物と一緒にゆっくりと吸収されるため、空腹時よりも吸収率が高い。サプリメントなどでビタミンCを補う場合は、朝晩だけではなく、できるだけ吸収率の良い3食の食後に摂取するのがおすすめ。

紫外線対策で不足した栄養を補う「ビタミンD」

ビタミンDは、ビタミンCと違って直接的に紫外線予防ができる栄養素ではないが、カルシウムの吸収率を高め、骨を強くするのに欠かせないビタミン。紫外線を浴びることにより体内で生成できるため、紫外線対策として日光を避けた生活をしていると、ビタミンD不足で免疫が落ち、体調不良や骨粗鬆症などを起こしてしまう可能性がある。また、骨を丈夫にする働きがあるビタミンDが不足することで顔の骨が痩せ、その分皮膚が余り肌のシワやたるみにつながる可能性もあるといわれている。紫外線対策によって2次被害を起こさない為にも、紫外線が厳しいこの時期は特に摂取しておきたい。
ビタミンDはサンマや鮭、アジなど、魚類に比較的多く含まれる。卵、きのこ類からも摂取できるが、含まれている量は魚類に比べると多くはない。また、人と同じく食べ物も、紫外線に当たるとビタミンDが増加するものもあり、乾燥きくらげなど乾物に多く含まれている。なかでもしいたけは、紫外線に当たることでビタミンD2の「エルゴステロール」が増加するため、生のものに比べ多くビタミンDを摂取できる。

美肌の秘訣にかかせない3種「ビタミンACE(エース)」

前述で紹介した 2 種のビタミンの他に、紫外線対策としておすすめしたいのが「ビタミン A」と「ビタミンE」。2つのビタミンとビタミンCは非常に相性が良く、単体で摂取するよりも相乗効果でより多くの力を発揮するため、3種類を合わせて「ビタミンACE」と呼ばれ、近年、美肌やアンチエイジングにオススメの栄養素として注目されている。

肌のターンオーバーを促し、皮膚を健康に保つ作用がある「ビタミンA(β-カロテン)」

ビタミンAには表皮細胞の分化を促し、ターンオーバーを整える作用がある。これによりメラニンの排出も促すため、キメやくすみ、シミや小じわなどさまざまな肌悩みの改善に効果が期待できる。また、肌の乾燥や角質化を防ぐ効果も期待でき、免疫力を高めることからニキビや肌荒れの予防にも効果的。ビタミンEとCの働きを長持ちさせる効果も。美肌に大切な栄養素だが、紫外線を浴びることで、肌内部のビタミンAが破壊され減少してしまう為、肌の健康を保つためにも、ビタミンA摂取は欠かせない。ビタミンAは、レバーや、バター、ニンジンなどに含まれており、脂溶性のため、炒めものや揚げもの、ドレッシングなど油を使った調理方法によってより効率的な摂取が可能になる。

アンチエイジング効果を発揮できる「ビタミンE」

ビタミン E には血行促進効果があり、摂取した栄養が体の隅々まで行き届くサポートをしてくれる。また細胞の酸化を防ぐ効果が非常に高く、細胞の酸化を引き起こす活性酸素から体を守ることで、紫外線対策による光老化の予防にも非常に効果的だ。さらにビタミンEは自分を犠牲にして抗酸化作用を発揮するため、どんどん削られてしまう一方、ビタミンC が酸化してしまったビタミンEを再生する働きがあるので一緒に摂るとよい。ビタミンEは、卵やアーモンドオリーブオイルなどに含まれる。生で食べるよりも炒めものなど、油脂と一緒に摂取すると吸収率が高くなる。また、ビタミンA(β-カロテン)やビタミンCと一緒に摂ることで抗酸化力がアップする。

真夏の日差しを感じると紫外線対策をしなくては…!という気持ちになるが、実は梅雨時期で日差しが当たらない日でも紫外線は降り注いでいることがわかった。紫外線のダメージから肌を守るためにも、1年を通して紫外線対策を行うことが大切である。紫外線対策として日焼け止めを塗るのはもちろん、紫外線に負けない肌作りを目指した食事や、サプリメントで栄養素を補うなどインナーケアも重要だ。いつまでも若々しい美肌を目指し、日々の紫外線対策を心掛けよう。

情報提供元: 舌肥
記事名:「 梅雨時期も紫外線に注意!油断しがちな6月にやるべき紫外線対策と必要な栄養素とは?