- 週間ランキング
ACSM(米国スポーツ医学会)認定EP(Certified Exercise Physiologist)
一般社団法人日本ダイエットスペシャリスト協会(JDSA)理事長
研究分野は「肥満と代謝」で、生活習慣病予防と改善の為の食事療法としてGI値(グリセミック・インデックス)に着目して実験・研究を重ねた後、2001年に「低インシュリンダイエット」を提唱、関連書籍は国内外で64冊、総販売部数500万部を突破している。主な活動としては、健康・ダイエット関連の指導者養成、各企業の健康・保健指導や生活習慣病予防と改善対策、薬機法・景品表示法等に於けるアドバイスやコンサルタントを実施している。
日本のサプリメントは「栄養補助食品」としての位置づけが強く、カプセル・顆粒・錠剤などの形状は様々だが、全て「食品」とみなされる。そのためサプリメントのパッケージや容器には内容成分だけでその含有量までは表示義務がなく、TVや雑誌などで話題となった成分が僅かでも含有していれば選択の余地が高まる。しかしこのような“健康ハロー効果”によってパッケージや広告効果に大きく左右され、効果効能は二の次になってしまい、サプリメントを愛用する日本人の大多数は「体調が優れない時」や「疲れが取れない時」あるいは「食生活に不安を感じる時」などと、飲用するタイミングを見計らっている場合が多く、健康予防のための常用派はあまり多くないと推察される。昨今、日本でもセルフメディケーションが浸透され始めて軽度の体調不良なら市販の薬剤を購入して快復させようする人も増えてきたが、サプリメントで健康管理をするという考え方が乏しく医薬品に頼る傾向があり、予防策が充実していない。また、日本のサプリメントは食品扱いゆえに厳格な規定がなく自由に製造販売できるので、健康に支障がない程度の極稀な粗悪品や欠陥品などが混入する可能性には注意したい。
それに対して米国では、日本のような健康保険制度がなく保険料も高額なので多くの人は保険に加入することなく、治療・手術・処方薬などに要する医療コストも年々上昇していることから、消費者はサプリメントや健康食品を摂取することにより健康を維持しようとする背景がある。また米国人口の高齢化と共に慢性的関節痛・骨粗鬆症・心血管疾患・消化器系疾患・ 網膜黄斑変性症等の問題を懸念する人々の増加、更には健康への関心度が高まっており、医療従事者(医師や看護師)からも健康維持向上に向けたサプリメントの摂取が勧められているほど医薬品に近い位置づけとなっている。国際食品情報協議会(IFICF:International Food Information Council Foundation)の調査によると、回答者の65%が食品を購入する際に栄養素分析のラベル表示を確認し、50%以上が健康維持のために何らかのサプリメントを摂取。このように、米国国民の疾病予防意識は高く、日常生活にサプリメントを積極的に取り入れており、日々のショッピングの際にも店舗内で薬剤師によるアドバイスが受けられる機会が多くあることも日本との大きな違いと言える。
米国のサプリメントは日本とは別物だと言っても過言ではなく、食品よりも医薬品寄りに位置づけられていて、日本ではまだ義務化されていない「GMP」と言う厳格な品質基準が義務付けられている。GMPは各国に設けられているが、米国のFDAに定められている品質基準は「cGMP:current GoodManufacturing Practice」と表記されて最も厳しく定められている。GMPもcGMPも同じ品質基準だが「c:current(現在の・最新の)」が付けられることで「安全・品質の基準は移り変わるので常に更新しなくてはならない」という考えの下で、GMPは常に最新基準で監視されるため、安心・安全が保たれている。GMPとは適正製造規範(Good Manufacturing Practice)の略称で、原料の搬入から、製造・出荷までの全過程に於いて安全で一定基準の品質が保持されるように定められた厳格な規則であり、生産機器・設備・管理から品質システムの構築や品質リスクマネジメントの整備、販売後にも抜取検査で厳重に管理する規定がある。このGMPの設定・管理は世界一厳しいと言われる米国のFDA(食品医薬品局:Food and DrugAdministration)と言う日本での厚生労働省にあたる政府機関が担っていて、安全・承認の最終審査を経てDSHEA(ダイエタリー・サプリメント健康教育法:Dietary Supplement Health and Education Act)に登録された後にサプリメントとして市販される。全てのサプリメントには内容・成分値の表示が義務付けられているので、ラベル表示を確認することで苦手な成分やアレルギー及び宗教上の理由などによっても適正なサプリメントを選択することができる。
ビタミン関連の市場は長期間穏やかに安定した分野であり、健康食品業界において最も多くの売上を占めている。2020年にはコロナ禍に直面した際にその手軽さから健康戦略としてビタミン剤を利用する人が増え、市場において22.3%、売上高にして32億4,000万ドル増加。しかし2022年にはビタミンの売上高が4億6,500万ドル低下。これは業界全体の売上高の成長率鈍化における原因として大部分を占めている。免疫力に関係する『ビタミンC』、『ビタミンD』の売上高は、2020年の成長から翌年以降は減少傾向。『マルチビタミン』の売上も免疫とは関係ないものの減少している。ビタミンにおける売上高の成長率は2022年から低下し2023年には1.1%、その後0.5%の減少と横ばいが続き、2026年には1%の成長というゆっくりとした回復が見込まれている。
サプリメント市場で最も成長している「ミネラル」。なかでも『マグネシウム』は2023年こそ2.7%の成長にとどまる見込みだが、ここ数年10%以上の推移を見せている。2020年には『カルシウム』の売上高が上昇。加えて免疫力向上に関連して『亜鉛』や『マグネシウム』が成長。ただ、『マグネシウム』に関しては、長期間にわたって穏やかに推移しているが、168.3%上昇した『亜鉛』を除いて他の「ミネラル」との差別化には欠けている。
2022年の『鉄』市場は、2018年と比較し、わずか3,000万ドルの上昇。『セレン』は成長を続けているが、市場規模はまだ小さい。どの分野でも不調だが、特に「ミネラル」は減少傾向にあり2022年の売上高は8.2%の減少、そして2026年には10%の減少に向かっている。また、通信販売・ダイレクトTV・ラジオチャンネルなどの販売経路に関しては、ネット通販での「ミネラル」市場は、2021年の7.9%の成長から大きく落ち込んだが、それでも他の販売経路と比較して良好な数字だといえる。
2018年には単一ハーブが混合ハーブよりも13億2,000万ドル多い売上だったが、2024年には初めて混合ハーブが単一ハーブを超えた。NBJは2024年に混合ハーブの売上成長率を単一ハーブの予測1.1%を大幅に上回る5.3%と予測。この分野は長期間にわたってネット通販が上位を占めており、その市場シェアは2018年から3倍以上になったが、2022年には落ち込んで7.5%減少。通信販売・ダイレクトTV・ラジオチャンネルの10.9%の減少に次ぐ減少となった。しかしこの不況は長くは続かず、ハーブ&植物でのネット通販売上高の伸びは2024年には10%台に戻る見込み。ハーブ&植物分野は2018年と比較して、2022年には41%増加し、2026年には69.4%増加する可能性がある。新たに登場した『アシュワガンダ』は、昨今50%もの高成長を遂げているが、今後数年は1%の増加にとどまる見込み。また『エルダーベリー』の売上は112.8%増加して、『ニワトコ』は減少。『キノコ』は急速に成長していて2018年の4倍の規模になると見込まれている。
※出典:NBJ/Nutrition Business Journal@2023
日本人にとってサプリメントは栄養補助食品としての位置づけが強い。日本人の体形や体質に合わせられており、飲みやすさや買い求めやすいのが特徴と言えるだろう。一方、疾病予防意識の高いアメリカでは、サプリメントは医薬品に近い存在で、その分製品にも厳しい品質基準が定められていることがわかった。成分値の表示が確認できるため安心して使用できるだろう。今後サプリメントを選ぶ際の参考にしてみてはいかがだろうか。