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その歴史を簡単に紐解くと、19世紀末、台湾総督府は台湾の気候と土壌がコーヒー栽培に適していることを発見。中部の埔里にあった北海道大学の演習林などで研究を行い、生産を推奨した。その後、極東アジアで最大の生産地となった台湾のコーヒーは東京などでも流通。大正天皇や昭和天皇に献上されたという記録も残っている。戦後になって生産は衰退したが、1999年に台湾中部を襲った大地震からの復興の過程で、農業部水土保持署を中心に栽培が復活。今では国際団体から最高評価を受ける質の高いコーヒーが生産され、栽培農園を巡る“コーヒー観光”も盛り上がりを見せているという。
つまり百年前の日本では台湾産のコーヒーが広く流通しており、もしかしたら我々の何世代か前の先祖が初めて飲んだコーヒーは台湾産だったかもしれないなんて思うと…、一杯のコーヒーに積もる歴史ロマンを感じずにはいられないのである。
そうした歴史的な縁のもと、台湾珈琲をもっと日本で広めていこうという取り組みの一環が、今回の日台6組織による調印式だ。この日、6つの団体を代表して調印を行ったのは、台湾側より台湾行政院・農業部農村發展及水土保持署南投分署の陳存凱副分署長、台湾珈琲策略聯盟の林哲豪議長、台湾珈琲發展協會の蔡治宇理事長、日本側より丸美珈琲有限会社の後藤英二郎代表取締役、株式会社台灣新聞社の錢妙玲社主、ORIOWL株式会社の長谷川典子COOの計6名。6名は調印に先立って挨拶に立ち、台湾珈琲に対するそれぞれの思いを述べた。
そのうち、今回の調印式を主催した農業部農村發展及水土保持署南投分署の陳副分署長は、台湾珈琲普及におけるこれまでの取り組みやこの日を迎えた喜びを述べた上で、「台湾のスペシャルティコーヒーの長期的なプロモーション関係を確固たるものにし、コーヒーを通じて台湾と日本の友好関係をさらに深めていければ」と日台間の関係強化を確認。
また、台湾珈琲策略聯盟の林議長は、他の産地との比較をあげながら、「台湾のコーヒー農家を突き動かすもの。それは、世界一おいしいコーヒーを作りたいという『夢』です」と力説。一方で、札幌でスペシャルティコーヒー専門店を6店舗展開する丸美珈琲有限会社の後藤氏は、台湾を代表するコーヒー焙煎士・賴昱權氏との間に生まれた交流について述べつつ、「昨年、台湾で開催されたオークションで品質鑑定したサンプルロットに圧倒的な驚きを感じ、世界のトップレベルと比べても見劣りしない魅力的なコーヒーに感動したことを覚えています」と台湾珈琲の品質を称賛した。
調印式の後には懇親の場が設けられ、淹れたての台湾珈琲を片手に参加者間の交流が図られた。この日、味わったのは雲林・古坑の「TGC」という農場で生産されているもの。口に含むと、ほのかに洋酒のような香りを感じる。
主に台湾中部の山岳地帯で生産される台湾のスペシャルティコーヒーは、栽培から精製、焙煎までを生産者が一貫して行っているため、安定した品質が保たれているのが特徴。ティピカ、ゲイシャ、SL34などの多彩な品種が栽培され、精製の仕方などにも生産者のこだわりが表れているという。
そのほか、「豆を一粒ずつ手摘みで収穫しているため、実の熟度のばらつきがなく、高いクオリティが守られていること」「台湾から日本へは輸送距離が短いため、低炭素の物流で高品質のコーヒーを届けられること」「ここ5年の間にコーヒーの世界チャンピオンを5人輩出していること」など、台湾珈琲のさまざまな魅力が紹介され、新たな台湾グルメとして定着しそうな予感を感じさせた。
その歴史とこだわりを知れば、きっと一度、飲みたくなるに違いない台湾珈琲。なお、農業部農村發展及水土保持署南投分署は、歌手の鈴木亜美が主題歌を歌うショートフィルム『初めての珈琲』を制作し、下記のYouTubeチャンネルでも公開している。こちらを見ると台湾珈琲についてより詳しく知ることができるだろう。
【台湾珈琲YouTubeチャンネル】
https://www.youtube.com/@taiwancoffee1