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日々更新されるWebマンガ。大手出版社も本腰を入れ始め、その量たるやハンパな数ではなくなってきた。いくら我らがマンガ大好きジャパニーズだとはいえ、すべてを追いかけるには時間がいくらあっても足りないことだろう。積んどくことができない媒体なのも悩ましいところ。そこでmitokでは絶対に外せない注目作品を定期的にご紹介。Webマンガ、これを追うべし!
ド派手な殺人事件ではなく、些細な日常の物事に端を発した謎を解明する推理ミステリといえば、『古典部』シリーズや『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズなどイロイロ人気作があるジャンル。ミステリのタネは様々ですが、中でも「地図」を題材にした地理ミステリというのはちょっと珍しいかも。
東鹿塚高校生徒会一年の堅物系男子・杜子ダイチは、「空想地図研究会」というサークルの立ち上げ申請に来た地理好きの高身長女子・塔元チリエと出会う。チリエが所持する東京都江戸川区の地図を見たダイチは、「江戸川区に住んだ事実は無いのにそこで暮らしていた記憶がある」という自らの幼少期の謎について、彼女に相談を持ちかける。
証言を元にダイチの記憶にある場所を推理していく中で活用されるのが地図。東京の東端に位置し、度重なる河川改修と治水工事でゴチャゴチャした土地の江戸川区。南部のほとんどは埋立地で、各区画に粗密の差があり、町名に統一性がなく、川の形は入り組み、そして海抜の高低差や建物の位置……などなど、地図や地形から読み取れる様々な情報からその土地の歴史を浮かび上がらせて謎を解く、というスタイルが特徴的な作品です。
なかなか漫画の舞台にゃならない東東京の、しかも更にマイナーな江戸川区にフォーカスした第一エピソードはいきなり地味~な読み味(個人的な話、江戸川区に長く住んでた人間としては結構グッときました)。だけど、謎解きの過程が丁寧かつ発想も新鮮で、ローカルな土地にまつわるアレコレを掘り下げて『ブラタモリ』的な紀行番組っぽい楽しみもアリ。身近な題材を扱っているのに考証やロジックは骨太で、読み応えはもちろん雑学的な楽しみもバッチリです。漫画ファンもミステリファンもがっつり楽しめそうな意欲作となっておりますよ!
・作者:高舛ナヲキ
・掲載メディア:デンシバーズ