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血圧が普段から高めで気になっている人にとって、健康診断の血圧測定は恐ろしいものですよね。「問題あり」という診断が出たらいやだな~という気持ちから、血圧を測る前に深呼吸をしているという人もけっこう多いのではないでしょうか。
でも、この「血圧を測る前に深呼吸をすると血圧が下がる」という説、よく耳にしますが、ちゃんとした根拠はあるのでしょうか。もしかして、まったく意味のない都市伝説だったりして……?
そこで今回は、東京目黒区にある五本木クリニック/五本木クリニック 美容皮膚科の院長・桑満おさむ先生に解説していただきました!
【アドバイザー】桑満おさむ
横浜市立大学医学部、1986年卒。横浜市立大学医学部病院 泌尿器科に勤務後、1997年に五本木クリニックを東京都目黒区に開院(泌尿器科・皮膚科・内科・形成外科、美容皮膚科・美容外科)。医療に従事する傍ら、ブログを通じて医療にまつわる疑問やウワサを検証した情報も精力的に発信している。
どうもこんにちは。五本木クリニック/五本木クリニック 美容皮膚科 院長の桑満です。目黒に医院を開業して早20年。日々、患者さんと接する中で「これはちゃんと説明しないといけないな」と思うことが多々あり、「医療を取り巻く素朴な疑問」や「間違った医学情報」について、どなたでもわかるようにブログを書いています(トンデモ医学の解説に力が入りすぎて、「たまには当院の広告も書け!」とスタッフに怒られることも…)。
さて、「血圧を測る前に深呼吸をすると血圧が下がる」というのは都市伝説なのか、それとも本当に効果があるのか? 確かに気になりますよね。そこで、文献にあたってみました。
血圧測定時の深呼吸の血圧に及ぼす影響について調べた論文としては、まさにそのものズバリ、「血圧測定時の深呼吸」というタイトルで、日本の医学雑誌に掲載されたものがあります(血圧 12(12): 1232 -1233 2005)。
この論文の概要は、以下の通り。
1)1186の医療機関がこの調査に参加
2)解析の対象となったのは2万1,563人
3)血圧測定前に深呼吸させた人数は、
4)深呼吸の対照群(この場合は「深呼吸せずに血圧測定を受けた人数」の意)は、
以上が、この論文の概要になります。これにより、以下のような結果が得られました。
論文「血圧測定時の深呼吸」では、調査の結果、以下の結論が得られたと書かれています。
・「正常血圧」「高血圧だけど未治療」「高血圧治療中」のどのグループも、深呼吸をすると収縮期血圧、拡張期血圧が低下した
・脈拍数は、正常血圧の場合、深呼吸すると増加した
つまり、血圧測定前に深呼吸をすると、確かに血圧は低下するのです。都市伝説かと思いきや、本当に効果があるんですね。ただし、「なぜ深呼吸をすると血圧が下がるのか?」という問いに対する明確なメカニズムは、いまだ判明していません。
さて、本当に効果があるとわかった上で、医者の立場から声を大にして言いたいのは、「血圧測定の前には深呼吸しないでください」ということ。
健康診断というものは「一見健康に見えるけど、実際はなにがしかの病気が隠れていないか」を調べることが大きな目的です。以前の健康診断で高脂血症とか尿酸が高めなどと言われると、次回の検査には数週間前からストイックな食生活に入る人が多いですが、これでは健康診断の意味がありません。
健康診断は、抜き打ち的な実力テストであるべきなのです。血圧測定前に深呼吸をするなどのヘンテコリンな行動は控えて、あるがままのご自分の健康状態を把握してくださいね。
※本コラムは「五本木クリニック院長ブログ」より一部を転載し、加筆したものです。