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『オズの魔法使いのドロシー』と言えば、ハリウッドの伝説的なミュージカル女優 ジュディ・ガーランドがすぐに頭に浮かぶ人は少なくないかもしれない。
では、47歳という若さで亡くなったこの著名な女優の晩年について知る人はどれほどいるだろうか?
そんな晩年の彼女を同年齢のレニー・ゼルウィガーが全身全霊で演じ切り、先日のアカデミー賞では見事主演女優賞に輝いた。
このオスカー受賞も納得の彼女のジュディぶりこそがこの映画最大の魅力。
本格的な歌のレッスンを経て実際に全ての歌を本人自ら歌っており、さらには普段の話し方やその他の仕草の隅々までを研究して演技に挑んだという。
少女時代からシビアなハリウッド業界に取り込まれたジュディ・ガーランドは、天性の歌声で名声を手に入れるのと引き換えに、ハードスケジュールから連日の不眠続き、痩せるためには薬漬けという過酷な生活を強いられていた。
普通の子供時代を送るという経験を犠牲にして手に入れた映画スターの座だったが、度重なる遅刻や乱れすぎた私生活のせいで仕事は次第に減っていき、何度もの結婚と離婚を繰り返した結果、我が子たちとの関係だけに心の拠り所を求めるような悲惨な状況に・・・
本作は、そんな落ち目の晩年の彼女が子供達のいるアメリカを遠く離れた、ロンドンでの公演で再起と逆転を狙おうとする姿が中心に描かれる。
いたいけな少女時代に業界に虐げられた傷が大人になっても未だに癒えないまま、我が子たちと向き合い、新たな恋と向き合い、歌やファンと向き合い、人生そのものと向き合う――
未来を切り開き前に進もうとするけど、不安定な精神状態から問題行動に走ってしまうこともしばしば。
我がままで気まぐれだけど、真の温もりを追い求める少女性をどこか残したその純粋なキャラクターは決して憎めない。
そして、何よりも彼女が舞台に立った時の圧巻のパフォーマンス。
『オズの魔法使い』で、少女のドロシーが現実と異なる理想に想いを馳せて歌い上げた名曲オーバー・ザ・レインボー。
当時、制作段階において「少女が歌うには大人び過ぎた曲ではないか」という意見も出たというこの曲を、十分に大人すぎるジュディが波乱続きの人生の悲哀を乗せて歌う。
その場面では、のちにこの曲がまた別の大きな力を持つことになる宿命も併せて、まるで何かの魔法をかけられたような大きな感動に包まれてあらがえない。
それは、改めて1人の大人の少女にかけられたオズの魔法だったのかもしれない。
ミュージカル映画のスターだったジュディ・ガーランドは、度重なる遅刻や無断欠勤で映画のオファーがなくなり、借金が増え続ける。巡業ショーでなんとか生計を立てていた彼女は、1968年、子供たちと幸せに暮らすためにイギリスのロンドン公演に全てを懸ける思いで挑む伝記ドラマ――。
■監督:ルパート・グールド
■脚本:トム・エッジ
■出演:レネー・ゼルウィガー、ジェシー・バックリー、フィン・ウィットロック 他
■配給:ギャガ
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