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『セッション』『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督がブラッド・ピット、マーゴット・ロビーをキャストに迎えて撮り上げた新作がお待ちかねの公開だ。
もうこの3人のコラボと聞いただけで興味を掻き立てられずにはいられない。
舞台は、1920年代、ハリウッド黄金期。
これから映画業界に躍り出ようとする若い男女と、既に頂上に上り詰めたスター俳優。
時はサイレント映画からトーキーに移行する激動の過渡期。
暴走する狂騒と、大きな時代のうねりの中で繰り広げられる悲喜劇。
そういえば、ブラッド・ピットとマーゴット・ロビーは、タランティーノ作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でも共演していた。
あの映画も1960年代だがハリウッドの意地と魔法を見事に描いてくれたが、パワーとスケールなら本作の方だろう。
ブラッド・ピットがそこはかとなく発するスターの貫禄と悲哀、マーゴット・ロビーが振りまく力強さとその大胆なキャラクター。
魅力的すぎる演者たちの確かな存在感をそのままに、たかが外れたように進んでいくサーカスのような物語はエミール・クストリッツァ作品を彷彿させる熱狂ぶりだ。
他方で物悲しくてどこかスイートな陶酔感すら感じさせてくれる点は、まるでフェリーニ作品のようでもある。
何より音楽が素晴らしい。
未だに何度もサントラを聴いているけど、チャゼル作品に欠かせないジャスティン・ハーウィッツによるジャズ中心の熱狂的な曲の数々が見事に炸裂し、全編をエネルギッシュに盛り上げる。
映画は終わりの見えないパーティーのようにハイテンションで加速し続け、時に緩急をつけながら、魅力的な登場人物たちの溢れ出す感情すらも代弁する。
この映画は一つの生き物のようだ。
その生き物を動かす動力は、映画愛というよりは、映画界愛とでもいうべきか。
それは映画を愛し、映画に関わり、そして映画に人生を翻弄された人たちの愛情と狂気が宿って、暴れ続ける生き物だ。
当時の人々が映画業界の勢いに、時代の流れそれ自体に飲み込まれたように、この映画は登場人物も観客も圧倒的な勢いで全て飲み込んでいく。
『セッション』以来のチャゼル監督の狂気が、今度は映画史に宿って観る者に襲いかかる。
ラストの加速ぶりは特に鳥肌もの、観客はただなすすべもなく目撃するだけで十分なのだ。
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