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空前の少林寺ブームを巻き起こした映画が40年の時を経て4Kリマスター版で鮮やかに甦った。
ブルース・リー、ジャッキー・チェンに続いて国際的なカンフー映画スターに上り詰めたジェット・リー(現在58歳)。
その彼が19歳の頃に本名のリー・リンチェイ名義で華々しく主演で映画デビューを果たしたのがこの作品だ。
11歳の頃から5年連続で中国武術大会に優勝した彼をはじめ、数々の大会で活躍した実際の武術家たちが出演し、驚きの体技を披露する。
時代は中国隋の末期、名高い武術家である父親を暴君に殺されたリー演じる小虎(ショウホ)は自身も重傷を負うが少林寺に匿われて何とか命を取りとめる。
父の敵討ちを心に強く誓ったショウホは自ら少林寺の仏門に入り、仲間や師とともに厳しい修行に身を置く。
そんな中、暴君の魔の手が聖域であるはずの少林寺にも迫り、ショウホは仲間たちともに立ち上がる。
この映画で描かれるのは、ブルース・リーのカンフーのような瞬殺の反射の動きとは違って、攻撃と防御が交互に繰り出される、日本で馴染みのある分かりやすいカンフーだ。
まるでテニスのプロが延々とラリーを続けるように、豊富なバリエーションで実に見事に攻めと受けの交代劇が続いていく。
公開当時は日本でも特に若い男の子たちは熱狂してこのスタイルを迎え入れ、こぞって真似をした。
決まった型どおりのアクションを演じるとはいえ、その型自体にはそこらへんの人には真似できないほどの身体能力が要求される。
そこには紛れもなく実際の武術家のチャンピオンたちが実演している凄み・真実味がある。
アクション映画にスターを出演させて付け焼き刃で格闘シーンをやらせるのとは大違いなのだ。
怪我を負った不幸な境遇の主人公が本格的に武道の教えを学んで心技体ともに成長していくというカンフー映画は他にも少なくないが、その原点はこの映画かもしれない。
厳しい教えと修行が実践される少林寺だが、そこでショウホが出会う仲間たちは、彼自身も含めてユーモアに溢れていて、アニメ「一休さん」のお寺の小坊主たちみたいだ(一休さんのお寺にこんなに格闘が強いお坊さんは誰一人いないけれど)。
一致団結して命を賭して真剣に闘いながらも、どこか青春の香りを感じさせるのは甲子園球児のような雰囲気もある。
もちろん髪型的にも。
ちなみに、少林寺の僧たちのおでこにある6つのお灸の痕は、戒疤(かいは)と言って、中国の元の時代から広まった、仏教に出家した者の額に焼印を押すという習慣らしい。
ということは、厳密にはこの映画の隋の時代にはまだ普及してなかったようだが、日本ではこの映画と、その公開から2年後に連載が始まる漫画「ドラゴンボール」のクリリンによって、カンフーを使う中国僧のイメージとして定着したと言っていいだろう。
肉食を禁止されてる僧がよりによってそんな生き物を食べるのか!とか、殺生を禁止されてる僧が禁忌を犯す際の理屈が思いのほかあっさりしてる!とか、いろいろツッコミどころも楽しみながら、人間離れした最高の体技とどこか甘酸っぱい青春の香りを40年ぶりに、もしくは初めて楽しんでみるのもきっと悪くないはずだ。
監督:チャン・シンイェン
ジェット・リー ユエ・ハイ フー・チェンチァン チャン・チェンチュー
ティン・ナン ファン・クァンチュアン チー・チュアンホア ユエ・チェンウェイ
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