『ゴーン・ガール』で圧巻の存在感を見せたロザムンド・パイクがさらにパワーアップして帰ってきた。

今回は失踪する妻ではなく、高齢者をケアする法廷後見人。

ただし、その正体は医師や介護施設と結託して資産家の高齢者の資産を搾取する「悪徳」後見人だ。

監督・脚本は本作が長編3作目のJ・ブレイクソン。デビュー作の『アリス・クリードの失踪』はクライムサスペンスの傑作だったが、先の読めない展開の面白さは確実に本作にも引き継がれている。

ロザムンド演じる主人公マーラーの相棒のフラン役にメキシコのクールビューティー、エイザ・ゴンザレス。

一癖ある被後見人の老女役を大女優ダイアン・ウィーストが、マーラーと敵対する重要な役に『ゲーム・オブ・スローンズ』のテォリオン役を人気を博したピーター・ディンクレイジが演じる。

贅沢なキャスティングをもって監督が仕掛けるのは観客の想像を超える怒涛の展開だ。

主人公が多数の高齢者を餌食にする悪徳後見人という一見共感できないような設定にもかかわらず、そのキャラクターの魅力を最大限に引き出すストーリーには見入ってしまうこと必至。

モラルの問題はいったん横に置くとして、その主人公の魅力には笑ってしまうほどに感服せざるを得ないエネルギーがある。

そしてこの巧みな脚本は全て監督オリジナルなのだからさらに脱帽だ。

本作の演技が高く評価されてゴールデングローブ賞の主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)も受賞したロザムンド・パンクは、「この映画が“制約”から自由になることの喜びを与えてくれることを願う」とインタビューで答えている。

彼女も示唆するとおり、本作が既成の映画の枠から外れたものの一つであることは間違いない。

最近は特にネット社会を通じて正しいか正しくないかだけを理由に些細な揚げ足取りをする風潮が加速しているかに見える。

そんな中、この映画は、他者の意見には脇目も振らず誰よりも自分を信じ、不屈の精神で現状を切り開き未来を手繰り寄せることの絶対的な熱量を提示してくれる。

気づかないうちに診断書を用意されて後見人に介護施設に放り込まれるのは勘弁だが、もしあなたが「小さくまとまりがちな考えや価値観にスケールの大きな風穴を開けてほしい」と思っているとしたら、きっとこの映画はそんな思いだけには完全に寄り添いケアしてくれるはずだ。

 

『パーフェクト・ケア』

■キャスト:ロザムンド・パイク、ピーター・ディンクレイジ、エイザ・ゴンザレス 他
■監督: J・ブレイクソン

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