9月に入っても、だるさや食欲不振、寝つきの悪さが抜けない。そんな不調の背景にあるのは、長引く暑さだけではないかもしれない。


実際、9月上旬の東京では秋雨前線の影響で雨や曇りの日が続いた。東京都心では8月27日から9月13日まで18日連続で降雨を観測。関東甲信地方の日照時間は、9月5~18日の14日間で平年比40%にとどまるなど、まるで梅雨が戻ったかのような天候となった。

2026年の夏は、高温に加えて台風や突発的な豪雨が相次いだ。9月8日には愛知県から岐阜県にかけて線状降水帯が発生。名古屋では1時間に104.5ミリの雨量を観測し、観測史上1位を更新した。庄内川や矢田川には警戒レベル5相当の氾濫特別警報も発表された。


愛知県の発表では、9日正午までに23人が軽傷を負い、床上浸水と床下浸水がそれぞれ45棟確認されている。9月になっても、暑さと局地的な大雨を繰り返す不安定な気候が続いている。


暑さだけではない「雨季化バテ」




高温、突発的な豪雨、雨上がりの蒸し暑さ、冷房の効いた室内との温湿度差が重なり、だるさや食欲低下、睡眠不調などが続く状態を、今回の資料では「雨季化バテ」と呼んでいる。医学的に確立された病名ではなく、近年の気象と体調不良の関係を表すための呼称だ。


一般的な夏バテとの違いは、身体への負担が単純な暑さだけでは説明できない点にある。


湿度が高いと、かいた汗が蒸発しにくい。汗が蒸発するときに身体の熱が奪われるため、高湿度の環境では体内の熱を外へ逃がしにくくなる。雨や曇りで気温がそれほど高く感じられない日でも、蒸し暑さによって身体に熱がこもることがある。


さらに、蒸し暑い屋外と冷えた室内を何度も行き来すると、発汗や血流、体温を調節する自律神経が働き続ける。済生会横浜市東部病院患者支援センター長の谷口英喜医師は、こうした負担に食欲低下や睡眠の質の低下が重なると、疲労が抜けにくくなると指摘する。


気象庁によると、2026年は8月だけで10個の台風が発生し、9月17日までの年間発生数は25個に達した。民間気象会社ウェザーニューズも、7~9月のゲリラ雷雨について、全国で約11万回と前年より25%多くなると予想していた。


疲労の蓄積は感染症リスクにも関係


今年は、インフルエンザの動きも早い。


最新の第37週(9月7~13日)は、全国の定点当たり報告数が5.54人、報告患者数は20,697人となり、前週の3.29人から約1.7倍に増加した。前年同期の定点当たり0.72人と比べると約7.7倍にあたる。入院報告も前週の284例から478例へ増えている(9月18日公表)※。



感染にはウイルスへの接触が必要であり、流行には人の移動や集団生活、ウイルスの型など、さまざまな要因が関係する。


一方で、疲労に食欲低下や栄養不足、睡眠不足が重なると、身体の回復力が落ち、免疫機能も本来のバランスを保ちにくくなる可能性がある。「雨季化バテ」そのものを感染原因と考えるのではなく、感染症に備える身体の状態を弱めかねないものとして捉えるのが適切だろう。


9月の体調管理では、二つの対策を分けて考える必要がある。


一つは、手洗いや換気、咳エチケットなど、ウイルスとの接触や拡散を抑える感染対策。もう一つは、身体に熱や疲労を残さず、水分、栄養、睡眠を確保して体調を立て直すことだ。


後者の対策として注目したいのが、身体にたまった熱を逃がしながら、水分や栄養も補える「アイススラリー」である。


身体の内側から冷やすアイススラリー


アイススラリーとは、細かな氷の粒を液体に分散させた、飲めるシャーベット状の飲料を指す。


氷が溶けるときに周囲の熱を吸収する性質を利用し、スポーツや暑熱環境での作業前後などに活用されている。外出や運動の前に飲む「プレクーリング」では深部体温の上昇を抑え、活動後の「ポストクーリング」では体内にたまった熱を逃がすことが期待される。


ただし、競技前のように身体を強く冷やす必要は、9月の日常生活では必ずしもない。氷の量を控えめにして、冷たくて心地よいと感じる範囲で取り入れることがポイントになる。


そこで考えられるのが、ヨーグルトや果物を使った“アイススラリー風”の飲み物だ。氷が中心の一般的なアイススラリーよりも冷たさを調整しやすく、食欲が落ちているときにも水分と栄養を一緒に取り入れやすい。


ヨーグルトで「水分保持」と自律神経を支える


ヨーグルトを使う理由は、口当たりや味だけではない。


ヨーグルトに含まれる乳たんぱく質には、摂取した水分を体内に保持する働きが期待されている。乳たんぱく質を加えた飲料が、運動後の水分保持を助けたとする研究もあり、ヨーグルトを使うことで、冷却と水分補給にたんぱく質やカルシウムの補給を組み合わせられる。


もう一つのポイントが、自律神経との関係だ。腸と脳は、自律神経などを介して双方向に情報をやり取りする「脳腸相関」の関係にある。ヨーグルトを日々の食事に取り入れて腸内環境を整えることは、乱れがちな自律神経を整える働きを支える選択肢の一つとなる。


ただし、ヨーグルトを食べることに加えて、朝日を浴びる、軽く身体を動かす、睡眠時間を確保するといった生活習慣と組み合わせることが前提だ。


また、汗を多くかいた場合は、こまめに水分と電解質を補う必要がある。


家庭でも作れる2種類のヨーグルトアイススラリー


管理栄養士・料理研究家の渥美まゆ美氏は、家庭で作りやすい二種類のヨーグルトアイススラリーを紹介している。




ミキサーを使う場合は、ヨーグルトに冷凍のミックスベリーなどの果物、水、氷を加えて滑らかになるまでかくはんする。冷凍フルーツを使えば、氷を増やしすぎず、好みの冷たさに調整しやすい。


ミキサーがない場合は、ヨーグルトと一口大に切ったキウイ、好みではちみつを保存袋に入れ、冷凍庫で冷やす。途中で何度か手でもみほぐし、飲む前に水を加えれば、シャーベット状に仕上がる。


9月以降は胃腸を冷やしすぎないよう、氷だけではなくヨーグルトを使うというのがポイント。ヨーグルトアイススラリーは感染症を防ぐ食品ではなく、あくまで暑さや食欲低下による疲労を翌日へ持ち越さないための選択肢だ。


9月は「もう夏ではない」という油断が生まれやすい一方、蒸し暑さや急な豪雨、冷房との温度差は残る。感染症への基本的な備えと、疲れをためない体調管理。その両方を意識することが、長引く不調を断ち切る第一歩になりそうだ。


なお、強い頭痛や吐き気、意識の異常、自力で水分を取れない状態は、単なる「バテ」ではなく熱中症などの可能性がある。発熱や呼吸器症状が続く場合も含め、食事だけで対処しようとせず、早めに医療機関へ相談したい。





※ 国立健康危機管理研究機構(JIHS)「インフルエンザ(2026年第36週)疫学情報」/感染症発生動向調査速報(2026年9月15日更新)
(https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/article/influenza/article.html)



文・取材 Kume


情報提供元: TREND NEWS CASTER
記事名:「 インフル報告が前年同期の7倍超…9月の「雨季化バテ」と感染症リスクの関係