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不安症に悩む子どもたちと同じくらい、親御さんも深く悩んでいます。「なぜこんなになるまで気づかなかったのだろう」と後悔する親御さんも少なくありません。こうしたケースでは、親子が「一緒に良くなっていく」ことが大切です。
私のポリシーとして、患者さまを「くん」「ちゃん」付けで呼ばないようにしています。年齢に関係なく、一人の人格者として尊重し、「さん」で呼ぶようにしています。これにより、「この先生は自分のことを尊重し、理解しようとしてくれている」と感じてもらえるのです。そして親御さんにも、「お子さんを一人の人間として尊重してほしい」というメッセージを伝えたいと思っています。
児童精神科には「治療に時間がかかる」というイメージがあるかもしれませんが、実際には早期発見・早期治療で改善するケースも多くあります。1〜2回の診察で大きく回復する患者さまも珍しくありません。
昨年、驚いたことがありました。通院3回目の診察で、ある女の子が「私、何に悩んでいたんでしたっけ?」とすっかり元気になったのです。お母さんも驚いていました(笑)。治療が終わった後も「また来たい」と言ってくれる子どもたちが多く、「近くに来たから寄りました」と顔を見せに来てくれることもあります。本当に嬉しいですね。
親御さんにぜひ実践してほしい、簡単にできる3つのポイントをお伝えします。
1.子どもの不安を無理に聞き出さない
子どもが不安を感じているとき、「どうしたの?」「何を考えているの?」と問い詰めるのではなく、気分転換にドライブに行くなど、自然な形で寄り添うことが大切です。
2.カフェインを控える
コーヒーやエナジードリンクには多くのカフェインが含まれています。カフェインを控え、麦茶やルイボスティーに置き換えるだけでも、子どもの心身に良い影響を与えます。
3.セロトニンを増やす食事を心がける
セロトニンというホルモンが不足すると、不安や気分の落ち込みが生じやすくなります。セロトニンの原料となる「トリプトファン」を含む食品(乳製品、豆製品、蕎麦、バナナなど)を積極的に摂ることで、不安の予防につながります。また、セロトニンは夜になるとメラトニンに変わり、質の良い睡眠を促します。
こうした習慣を親御さんも一緒に実践することで、子どもだけでなく、親御さん自身の心の負担も軽減できます。女の子には「お通じが良くなったり、肌がきれいになったりするよ」と伝えると、楽しみながら取り組んでくれることもあります。
現代の不安症は多様化・複雑化しています。「病院に行くタイミングが分からない」と悩む方も多いでしょう。一般的に、実生活に支障が出たり、学校や会社に行けなくなった場合が治療の対象ですが、私としては「少し辛いな」と感じた時点で相談してもよいと思います。生活に大きな支障が出る前に、気軽に話しに来てください。
取材協力
大和 行男氏
東京大学教育学部卒業。新潟大学医学部卒業。精神科・児童精神科を専門に、複数の医療機関で経験を積む。2024年1月、池上駅近くに『池上おひさまクリニック(https://ikegami-ohisama-clinic.com/)』を開業。