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ところが、許可を得ようにも作者も権利継承者もわからない。
手がかりは絵の裏に書かれた「イサム・イノマタ」の署名だけ。
守谷は元記者としての知見を活かし、謎の画家の正体を探り始める。
だがそれは、秋田のある一族が、暗い水の中に沈めた秘密に繫がっていた。
1945年8月15日未明の秋田・土崎空襲。
芸術が招いた、意図しない悲劇。
暴走した正義と、取り返しのつかない後悔。
長年秘められてきた真実は、一枚の「絵」のミステリから始まっていた。
戦争、家族、仕事、芸術……すべてを詰め込んだ作家・加藤シゲアキ「第二章」のスタートを彩る集大成的作品。
「死んだら、なにかの熱になれる。すべての生き物の成れの果てだ」
前作『オルタネート』の執筆時から考えていた本作が、構想からおよそ3年の歳月を経てついに完成しました。
『なれのはて』は自著のなかで最も壮大なテーマに挑んだエンタメ作品であり、また問題作でもあると考えています。
三十代半ばとなる(なった)私が何を書くべきか、問い続けた結果がこの作品です。
舞台を2019年の東京と、私の母の地元である秋田にしたのは、私自身がこの物語に深く没入するためでしたが、その過程で日本最後の空襲のひとつといわれる土崎空襲を知り、自分がこの小説を書く宿命を感じました。
この小説を書いたのは本当に自分なのか、それとも何か見えざるものによって書かされたのか。今はそういった不思議な気分です。
作家活動が十年を超えた今だからこそ、全身全霊で書き上げることができました。
一枚の絵の謎から広がる世界を、どうぞご堪能いただけると幸いです。