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一般的な入院患者だと、70歳代ではまだまだ若い。
80歳代だと入院患者の平均年齢、90歳以上でようやくお年寄りというイメージだ。
血圧が少し高く軽度の糖尿病があるぐらいで、ずっと元気に過ごしてきたがここ最近食欲が落ちてきたとのことで病院を受診した。
医師は、高齢だし老衰かもしれないと考えたが、念のため胃カメラをすると進行胃がんが見つかった。
手術をすれば治る可能性が高いが、この時あなたが本人なら手術をするだろうか。
また、家族であれば本人に手術をすすめるだろうか。
医師から手術の説明を受けた当初、本人はもう歳だから手術はしたくなさそうだった。
しかし、家族はおじいちゃんにはまだまだ元気でいて欲しいので、がんを治療したいという思いから手術を強く勧めた。
本人は最後まで嫌がっていたが、周りの家族全員から説得されてしぶしぶながら手術することにした。
手術は無事に成功した。
手術翌日、家族と電話をしていた。元気そうだった。
術後2日目の夜中、事態は急変した。
夜中に看護師が患者のベットを訪れると、心臓がすでに止まっていた。
医師を呼び出し対応したが生き返ることはなかった。
あまりにも急な出来事なので、家族の希望もあり原因を探るために遺体は解剖された。
しかし、はっきりとした死因は分からなかったが、手術のストレスなどによって身体がもたなかったのだと思われる。
家族は、手術を勧めたことを後悔していた。
本人も嫌がっていたし、手術しなければ少なくとも数ヶ月は生きられたのだから。
医師も急変したことにかなりの驚きを感じつつ悔やんでいた。
自分が検査して手術を勧めなければ、少なくとも数ヶ月は生きられたのだから。
医療は常に結果論だと言われる。
結果がうまくいけば喜ばれ、うまくいかなければ怒り、後悔などが残ってしまう。
特に高齢者の方は元気そうでも、ある時急に呼吸が止まってしまったり心臓が動かなくなってしまったりすることは、たまにある。
後悔しないためにも、常に最悪の場合もきちんと想定しておくことが大切だ。
執筆者:あやたい
医療制度や医療職・医療現場が抱えるさまざまな問題について考える医師。
日々変わっていく医療現場から生の声や、日常に役立つ医療知識を発信したいという思いで執筆。