アンチ巨人からも高橋由伸監督(40)に対する同情の声が寄せられているという。原辰徳前監督が退陣し、後任の大本命と伝えられていた松井秀喜氏が色好い返事をしない。在野にも「有力」と目されたOBはいたが、メディアの読みはフロントの意向とは違っていた。「適任者不在」となり、高橋に白羽の矢が立てられた…。その突然すぎる監督要請もそうだが、引退試合すら行われなかった急展開ぶりが「かわいそう」と映るのだという。
 巨人フロントも高橋監督の性格は分かっていたはずだ。監督要請をすれば、チームの指揮を優先し、自分は現役を引退する−−。「これまでチームに尽くしてきた功労者に相応しいセレモニーを」と配慮すべきではなかったのだろうか。

 高橋の監督要請について、興味深い証言がいくつか聞かれた。
 「(前任の)原監督は『次はヨシノブ』という流れを分かっていたのではないか。2015年の最終ゲームとなった10月17日(CSファイナルステージ第4戦)、原監督が最後の攻撃イニングで送った最終バッターは高橋でしたから」(球界関係者)
 また、別の関係者は『高橋監督への継承』が既成路線ではなかったと証言する。
 「CS翌日、高橋は都内トレーニングジムで身体を鍛えていました。原監督が退陣会見を行った翌々日もジムにいましたし」

 現役を引退してすぐに巨人監督に就任したのは、長嶋茂雄氏以来となる。40歳の高橋監督は12球団最年少ともなるが、長嶋氏が監督に就いたのは38歳、V9の歴史を作った川上哲治氏は41歳だった。王貞治氏は44歳、前任の原氏は43歳だ。巨人の歴史のなかでは「若すぎる」ということはない。
 しかし、なぜ高橋監督でなければならなかったのか。その理由がイマイチ伝わって来ない。白石興二郎オーナーは「新しい風を吹き込んでくれる人、原野球を継承してくれ、かつ発展させてくれる人」と高橋監督の就任会見で答えていたが、ピンと来ない。

 完成しきっていない原野球とは−−。巨人の秋季キャンプで高橋監督は2人の野手に熱い目線を送っていた。一人は、打撃フォームの改造に乗り出した大田泰示である。高橋監督の新人時代の打撃指導役でもあった内田順三打撃コーチに託し、徹底的にバットを振らせていた。二人目は同じく「将来の4番候補」である岡本和真だ。岡本は高卒1年目から非凡な打撃センスを見せたが、「今の守備では、レギュラーでやっていくのは厳しい」と言われている。その岡本をショートのポジションでノックを受けさせていた。
 「内野守備を担当する井端和弘コーチの提案です。守備範囲の広いポジションで練習させたほうが早く成果が得られる、と」(前出・球界関係者)
 将来の4番候補の育成。チームの将来像を完成させるとすれば、大田、岡本の覚醒を見届けることのできなかった原監督の思いは継承したことになる。

 2人のことだけではないと思うが、4番打者を育てるのであれば、4番の重責を経験した者でなければ見えないものもある。
 阪神、DeNA、巨人は外野手出身の新監督を迎えた。3監督とも采配に関しては未知数だが、秋季キャンプの雰囲気は良かった。他競技の監督だが、たとえばサッカーではコーチングを学ぶため、日本サッカー協会公認のライセンスを取得しなければ就任できないとされている。メジャーリーグでは選手経験のない人もいる。大半は選手では大成しなかった人で、マイナーリーグでの指導経験を積み上げてその地位まで上り詰めてきた。日本のプロ野球はチーム貢献度で決まるところもあるようだが、知識や経験、技術よりも人間性が重視されている。そう考えると、プロ野球の監督とは、現役時代のポジションよりも、自身の野球観を選手にどう伝えるかを問われるもののようだ。

【記事提供:リアルライブ】
情報提供元: リアルライブ