広島東洋カープから、ポスティングシステムでメジャー移籍を目指していたマエケンこと前田健太投手(27)のドジャース入団が決まった。

 だが、喜んでばかりもいられない。基本年俸があまりにも低く、出来高偏重の契約となったことで、前田を心配する向きも多いようだ。

 前田は身体検査でイレギュラー(異常)な点が見つかり、一時は破談寸前までいったようだ。イレギュラーな点とは、本人は明言こそ避けたが、肝心の右ヒジといわれている。しかし、双方が歩み寄り、低年俸を前田側が、ドジャース側が長期契約を受け入れた結果、無事合意に至った。

 契約内容は、契約金100万ドル(約1億1700万円)、8年契約で基本年俸はわずか300万ドル(約3億5100万円)。広島時代の昨季年俸3億円から、さほど上がらない。契約金と基本年俸を併せた総額は8年で2500万ドル(約29億2500万円)。トレードされた場合には、100万ドルが支払われる。

 2年前にポスティングでヤンキース入りした田中将大投手は、7年総額1億5500万ドルの大型契約を結んだ。今とはポスティングシステムのルールが違うが、12年にレンジャーズ入りしたダルビッシュ有投手は6年総額5600万ドル(出来高が別途あり)だった。2人と比べると、前田の年俸はあまりにも低すぎる。

 しかし、前田の場合、異例といえる破格の出来高が付く契約となったのだ。その内容は、開幕ロースター入りで15万ドル(約1755万円)。先発登板が15試合に達したら100万ドル、20先発でさらに100万ドル。以降、25先発、30先発、32先発で150万ドル(約1億7550万円)ずつが加算され、最大650万ドル(約7億6050万円)。

 投球回は90回で25万ドル(約2925万円)。以降、10回毎に190回まで25万ドルずつプラスされ、200回に到達すれば75万ドル(約8775万円)が付き、最大350万ドル(約4億950万円)。

 出来高総額は最大で1000万ドル(約11億7000万円)となり、この契約が8年間続く。満額を獲得できた場合、基本年俸と併せて1年1300万ドル(約15億2100万円)となり。8年間満額が続けば、契約金を加えた総額は8年1億500万ドル(約123億435万円)となる。

 ただ、それはあくまでも活躍した場合の机上の計算にすぎない。32先発、200回は年間を通じて、故障、不調なく、ローテーションに入って登板しなければ到達は不可能。メジャーに行って、故障がちの田中は達成できておらず。ダルビッシュは13年に32先発、200回を1度だけ達成したのみだ。黒田博樹投手(現広島)は7年間のメジャー生活で、4度の32先発、3度の200回を成し遂げているが、それは黒田がタフで故障が少なかったからで、容易な数字ではない。

 また、契約には前田側のオプトアウト(契約破棄権)、トレード拒否権は含まれておらず、ドジャースに極めて有利な内容。田中やダルビッシュは一定の条件をクリアすれば、オプトアウトできる条項を契約に入れている。この契約内容では、前田の意思でFAとなることはできず、ドジャースから移籍するとしたら、トレードなど、球団側の意向の場合のみ。

 ドジャースにとって、いつ故障するかわからない前田に高額な年俸を保証できない。それでも、活躍すれば、出来高で支払う。前田側からオプトアウトもできないため、ドジャースに有利なばかりの契約。ただ、前田にとっては、働けばそれなりの年俸となり、ケガしたときも300万ドルは保証される。故障して手術を受けたとしても、8年の期間があるため、復活するチャンスもあるのがメリットとなる。ただ、いずれにせよ、田中やダルビッシュの大型契約と比べると、あまりにもさびしい契約内容であることに変わりはない。

 「前田側からオプトアウトも、トレード拒否もできませんから、活躍できなければ、早々にトレードされてしまう可能性も秘めています。問題はドジャースが2000万ドル(約23億4000万円)の譲渡金を広島に支払わなければならないため、その元は取る必要があります。前田がそこそこの活躍をするか、獲得を希望する球団が、譲渡金の一部に相当する額をドジャースに補てんするようなことがあれば、トレードもまとまるのでは?」(某スポーツ紙記者)

 もちろん、ドジャースも8年という長期契約を結んだからには、1、2年で放出することはないだろうが、前田の働きがパッとしなければ、いずれ放出要因になりかねないだろう。

※年俸は推定。為替は現在のレート117円で算出。

(落合一郎)

【記事提供:リアルライブ】
情報提供元: リアルライブ