UFOの写真や動画が撮影され、世間的に注目されることはよくあることだが、これが国内問題や国際問題まで発展する事は少ない。撮影されたUFOがトリックの産物である可能性も存在するし、そのUFOが「本当に地球外から来たもの」か正確に判別する情報や手段は現状では存在しないからだ。だが、中には公に「本物かもしれない」とする発言が出てしまったケースも存在する。

 1958年1月16日、ブラジルのトリンダデ島にて測量調査を行っていたアルミランテ・サルダーニャ号に乗船していたアミラル・ヴィリエラ・フィルホ元空軍大尉らが、島の上空に空飛ぶ円盤らしき物体が飛行しているのを目撃、水中写真の専門家であるアルミロ・パウラナを呼び寄せて数枚の写真撮影に成功した。この写真は一時間ほど後に即席の暗室で現像され、目撃者らも先ほど見たUFOがたしかに写っていることを確認。後にトリンダデ島海洋調査基地のカルロス・アルベルト・バセラール中佐の元へ分析のためにフィルムは引き渡され、同年2月にブラジルの新聞等で報道、国内外の注目を集めた。当時のUPI通信社の記事によれば「ブラジル海軍が写真を分析中だが、オリヴェイラ大統領は写真が本物であると考えている」となっている。

 この写真は前述の報道を元に、現在でも「一国の大統領が認めた本物のUFO写真」として紹介される事がある。

 だが、この写真はブラジル海軍に引き渡されるまで、暫く撮影者であるパウラナ氏の元にあったこと、またUFO本体が不鮮明なこと(後に書籍等で紹介される時はUFOが見やすいように修正を加えられていることが多い)等から、早々に研究家の間では大きな鳥を撮影したものに手を加えたフェイク写真ではないか、とする疑問の目が向けられていた。

 また測量調査船には300人近い乗組員がいたにもかかわらず、UFOを目撃したと証言したのは数人程度しかいなかった。そして、UFOのフィルムを分析していたブラジル海軍からも、当初から懐疑的な声が上がっていたのである。

 これらの点からこの事件は、はじめはいたずら程度で作成されたUFO写真が報道や世間の反応によって本物認定されてしまった事件であると見た方がいいかもしれない。

文:和田大輔 取材:山口敏太郎事務所

【記事提供:リアルライブ】
情報提供元: リアルライブ