【写真】舞台への抱負を語る桜井日奈子(撮影・たえ見朱実)

清純派、極悪妻、どコメディー。あらゆるジャンルのクリエーターのハートをつかむ売れっ子である。桜井日奈子(29)。あこがれの劇団☆新感線に初参加し、「髑髏城の七人 LAST STAND」(14日から、新橋演舞場など)の舞台に立つ。期待されない「失速期」を経験し、「負けて帰るわけにいかない」今が、いかにも楽しそうだ。【梅田恵子】

★アクションも自ら志願

新感線への出演を切望する若手俳優は多い。「髑髏(どくろ)城」への出演依頼が来た時は「うれしさのあまり絶叫した」という。6年前に「偽義経冥界歌」(主演生田斗真)を見て以来の大ファン。「規模もカロリーも規格外。命がけで演じている皆さんの姿に胸が熱くなって、いつかは自分もと火がつきました」。

「髑髏城」は、1990年の初演から7年周期で上演されてきた看板演目。今回が最後とアナウンスされており「ぎりぎりセーフで夢がかないました」と感激する。「20代最後の大事なタイミングに素晴らしい挑戦の機会をいただけた。プレッシャーはありますが、自分でやりたいと決めたこと。負けて帰るわけにはいかない」ときっぱり語る。

作品は、織田信長の死から8年後の世界を舞台にした戦国スペクタクル。天魔王を倒すため、髑髏城を目指す男たちの戦いを描く。

桜井が演じるのは、主人公、捨之介(早乙女太一)と行動をともにしていく娘、沙霧。髑髏城の図面を持って逃走する、物語の始まりを担う。「過酷な運命を背負っているけれど、信じた道をまっすぐ走っていく、一本気でたくましい女の子。新感線が描く女性たちって、それぞれの立場でみんなたくましくてかっこいい。私は女性が強い物語が大好きなので、挑みがいがあります」。

アクションも自ら志願した。9年前からアクションスクールに通い、4月に映画「SAKAMOTO DAYS」で念願のアクションデビューを果たしている。「幼稚園から高校3年までバスケをやっていて、運動神経には自信があるんです。ちゃんと磨けば自分の武器になると思い、トレーニングを続けてきました」。足を見ると、スネに大きな青タン。「けいこ場であちこちぶつけて苦戦していますが、思う存分アクションをやれる機会はそうないのでうれしい」と話す。

初代の高田聖子をはじめ、鈴木杏、清野菜名ら多くの実力派女優が演じてきた沙霧役。「髑髏城ファンの皆さんそれぞれの沙霧像がありますよね。それを考えると頭がぐぁーってなりますが(笑い)、私らしい沙霧をお見せできるよう、身も心も捧げる覚悟です」。

★「岡山の奇跡」キュートな笑顔

女優業を「生涯の仕事」としてのめり込む日々だが、バスケ一筋で芸能界にあこがれたことはなかったという。高校2年の時、副賞のディズニーランド目当てで「岡山美少女・美人コンテスト」(14年)に応募し、グランプリを獲得。キュートな笑顔が「岡山の奇跡」と話題を呼び、翌年芸能界入りした。

「『岡山の奇跡』って、すごいインパクトですよね(笑い)。めっそうもないという気持ちでいっぱいでしたが、このフレーズのおかげで名前を知っていただけたり、活動を支えられたりと、いろいろ救われたのも事実です」

女優デビューは舞台だった。戦中戦後を舞台にした「それいゆ」(16年、主演中山優馬)で、借金のカタにストリップに売られる女学生という難役に挑んだ。「2カ月前まで素人だった子によく任せていただけたなと」としみじみ。「舞台って、始まったら終わるまで止まれない。集中力も向き合い方もウソがつけないという体験をして、女優としての覚悟が固まった。舞台でデビューできたことは私の財産です」。

あっという間にドラマ、映画、バラエティーと売れっ子になったが、2、3年後に挫折を味わった。

「失速感っていうのかな。だんだん飽きられる感じ。期待されていない、見限られたみたいな自覚があったんですよ。ドラマの打ち上げで監督から『全然期待してなかったんだけどね』みたいに言われることも多くなって。根拠のない自信で立ち向かえていた現場に、どんどん臆病になっていった」。二人三脚で芸能活動を導いてくれたマネジャーと離れるタイミングも重なり、いよいよレールを見失った。

「このままでは生き残れない」。26歳あたりで、持ち前の負けず嫌いに火が付いた。

「バスケでも、シュート1本外そうものなら100本打ち込むくらい負けず嫌い。ど根性娘なんです(笑い)」。元マネジャーに恩返しできないままフェードアウトするのも許せなかった。清純派や好感度ヒロインを演じることが多かったが、所属事務所に「作品が面白くなるなら、悪女でも濡れ場でも、どんなチャレンジングな役でもやる」と伝えた。「桜井日奈子が出ているから面白そう、と思ってもらえる俳優になるのが夢。任せてくれる人にも、見てくれる人にも、期待されたいんです」。

コメディー、ダークミステリー、大人のラブストーリーなど、今や無双のフィールドでキャスティングされる存在だ。ぶっ飛んだ不倫妻ぶりが話題を呼んだドラマ「余命3ケ月のサレ夫」(4月期、テレビ朝日系)では、深夜枠ながらドラマアカデミー賞(ザテレビジョン)助演女優賞2位に選ばれた。「うれしくて泣きました。見てくれる人がいて、私のお芝居で楽しんでもらえたんだと」。

★人の目や評価をすごく気にする性格

今はこの仕事を「生涯かけてやりたい」と即答する。そのために、「負けず嫌いなくせに、人の目や評価をすごく気にする性格」と必死に折り合いをつけているところという。

「この二面性をなんとかしたいけれど、周りをよく見ているからこそ働くセンサーもあると思うんですよね。この仕事に役立っていると思えば、面倒くさい気質も愛せそうです」。ちなみに、ストレスがたまると食に走るタイプという。「15キロ太ったこともある」と底抜けに明るい。体重が変化すると「劣化した」とネット世論に指摘される時代。「うるせぇ! って思いますよ」と大笑いし「そういう声も、しっかり気にします(笑い)」。

来年は30代。「自分の可能性は自分が信じてあげなさい」という、所属事務所の社長からもらった言葉をお守りにしている。「自分のことをいちばん見ているのは自分。まずは自分が背中を押してあげないと」。そう語ると「分かってはいるんですけどねー。まだまだ難しいです」。「まずは来年3月まで『髑髏城』約70公演をきちんと走り抜けて、無事に生き残らないと(笑い)。30代への抱負は、そこから考えます!」。

▼劇団☆新感線プロデューサー柴原智子氏

桜井日奈子さんを知ったのは約10年前、CMで見た真っすぐな瞳と笑顔でした。それから活躍の場は舞台にも広がっていたのを知って「舞台やっている!」と心の中でガッツポーズをしました。舞台界隈(かいわい)ではイイ子情報はすぐに共有される。性格も現場での姿勢もイイ子はみんなが狙っているわけで。さらにウチは求められる体力と気力が半端ない舞台。実際に会って、素直な心と前向きな姿勢に「沙霧がいた!」と感じました。彼女は今、「髑髏城の七人」に向けて、まっすぐなまなざしで汗だく絶賛稽古中です。

◆桜井日奈子(さくらい・ひなこ)

1997年(平9)4月2日生まれ、岡山県出身。2014年「岡山美少女・美人コンテスト」でグランプリを獲得し芸能界入り。16年、舞台「それいゆ」で女優テビュー。今年は主演映画「死神バーバー」など映画、ドラマに多数出演。「桜井日奈子2027カレンダーブック」(東京ニュース通信社)発売中。身長160センチ。血液型O。

情報提供元: 日刊スポーツ_芸能
記事名:「 桜井日奈子 「負けて帰るわけにはいかない」あこがれの劇団☆新感線初舞台 」