「南田南」だけじゃない 満点ドラマ豊作の秋/秋ドラマ評
10月期の秋ドラマが出そろった。大型企画、ブランドシリーズの新作、韓ドラリメークなどカラフルな挑戦が並び、びっくりするほど快作ぞろい。星の数も豊作の秋となった。「勝手にドラマ評」68弾。今回も単なるドラマおたくの立場から勝手な好みであれこれ言い、★をつけてみた(主要枠のみ、シリーズものは除く)。
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◆「救命病棟24時」(フジテレビ系、月曜9時)江口洋介/松嶋菜々子
★★★★☆
1999年から続く金字塔の13年ぶり第6シーズン。救命現場の緊迫から進藤先生(江口洋介)の召喚まで、冒頭20分の臨場感はさすがのクオリティー。再会した小島先生(松嶋菜々子)とのツーショットオペが息ぴったりで心躍った。コンプラと働き方改革で様変わりした医療現場をしっかり描きつつ、命を扱う仕事、命を扱う若手育成に一切こびない進藤流はそのまま。「GTO」とは逆方向の挑戦がすっきりとはまる。当然起こるハレーションと、研修医の成長がストーリーの柱。よくあるフォーマットではあるが、2話の木戸大聖、3話の萩原利久の成長物語は、この作品らしい格調があった。
◆「南田南弁護士は天才肌」(フジテレビ系、月曜10時)芦田愛菜/高橋文哉
★★★★★
自閉スペクトラム症を持つ新人弁護士の活躍。キャスティングから何から韓国版へのリスペクトにあふれ、この作品の奥行きとスピリッツが日本版としてしっかりと映像に。過去イチ素晴らしい韓ドラリメークに感銘を受ける。芦田愛菜が本家パク・ウンビンを完コピした上で、日本版らしさ、南田南らしさをプラスする離れ技。法とまごころを武器に、軽やかに常識の壁を越えていくチャーミングな人間像が生き生きとある。相手役、高橋文哉の起用もずば抜け。期待通り、キャラクターの魅力を正確に理解していて頼もしい。主人公の事情も含め、すてきなエピソードたちがどう描かれていくか楽しみ。
◆「kiDnap GAME」(フジテレビ系、火曜9時)坂口健太郎/イ・ジュンギ
★★☆☆☆
アジア7都市で同時誘拐ゲーム発生。大切な人を救いたい者たちが“負けたら終わり”のデスゲームに挑む。「イカゲーム」のような世界的成功を目指す大型企画だが、1話は7カ所の設定&人物紹介で終わってしまい、つかみが弱くて残念。いきなり「だるまさんがころんだ」の殺戮(さつりく)ゲームで度肝を抜いた「イカゲーム」との設計力の違いを感じる。短気でフキハラな主人公、守られキャラのヒロインという日本パートより、イ・ジュンギを起用した韓国パートの方が不穏なスピード感あり。東南アジアはいまひとつ見分けがつきにくく、副音声で見た方がいろんな言語で臨場感が増しておすすめ。
◆「いろはの恋は時代(とき)をかける」(TBS系、火曜10時)上白石萌音/向井康二
★★★★★
小学校教師の体に、算術好きな江戸時代の娘、いろはの魂が乗り移るタイムスリップもの。教師がモノを言えない令和の教育現場に、先生が天や君主と同等に敬われた江戸流をフルスイング。教壇に正座し「己に克ちて礼に復るを仁と為す!」の論語の突破力に爆笑した。不運な相棒教師を向井康二が端正に演じ、2人の陰陽のやりとりが常におもしろい。回想の江戸パートも大きな見どころ。実在した数学者、関孝和を演じるミセス大森は今期の助演賞。思い出の中の関さまこそ“これぞ師”の姿であり、いろはの背中を押す貴い教えに毎回泣きそう。今期の掘り出しもの。
◆「メリーベリーラブ」(日本テレビ系、水曜10時)チ・チャンウク/今田美桜
★★★★☆
ワケありで日本の島にやってきた韓国人実業家(チ・チャンウク)と、島の農業女子(今田美桜)の恋。思ったよりシュガーパウダー多めだが、チ・チャンウクはやっぱりラブコメうまいなーというありがたみ。監督も脚本も韓国という座組みで今田美桜が堂々と魅力を放っていてうれしい。お芝居も演出も、言葉の壁をラブコメ化する工夫があり、互いに覚えた言葉がここぞという瞬間に効く。干潟の夕日など、ラブに映える映像美もいい。そもそも土地を買収するための来日であり、今後の亀裂でギアが上がりそう。チ・チャンウクを地上波で見るレア感を上乗せして4。
◆「ポリティカルパン」(フジテレビ系、水曜10時)石原さとみ/高橋一生/河合優実
★★★☆☆
ダークな政治のカネを盗む女ルパンの暗躍。石原さとみ×脚本野木亜紀子の「アンナチュラル」コンビによる「怪盗エンタメ」という触れ込みだが、政界というおじさん社会、政治とカネへの風刺といった政治エンタメの色合い。“女ルパン参上”の怪盗感や泥棒のスゴテクを期待するとちょっと違うかも。「ニッポニア」という架空の国設定は、工夫にも後ろ向きにも見える。タヌキの肖像画の札束で政治とカネ問題をかわいくされるより、この国の問題として突きつけられたかった。「民王」といい、政界のフォロー職人がうまい高橋一生が今後どう立ち回るか期待。
◆「波うららかに、めおと日和」(フジテレビ系、木曜10時)芳根京子/本田響矢
★★★★☆
昭和初期の“うぶキュン”ラブコメが早くもシーズン2。だなんさまラブななつ美と、堅物だが優しい海軍将校、瀧昌さまの結婚生活が相変わらず初々しい。1話は前作のおさらい、2話は妹が家に押しかけるドタバタ。イチャイチャ増量のパワーアップにヒヤッとするも、深見(小関裕太)と芙美子(生田絵梨花)のサブカップルがそろった3話から、この作品らしい夫婦愛が安定。前作の名場面、寝顔に「メシうまかったです」みたいな、息が止まるキュンがそろそろほしい。今後、戦争の影が忍び寄るにつれ、切ない物語が大きく展開しそう。本編の後に、現代版アナザーストーリー付きのおまけ付き。
◆「LOST10」(TBS系、金曜10時)横浜流星/小栗旬
★★★★★
登山ツアー6人の遭難事故は保険金殺人だった疑惑。刑事(横浜流星)と保険調査員(小栗旬)が真相を追う。「Nのために」「最愛」の制作陣が集結し、雄大な山々の映像美、二転三転するサスペンス性は圧倒的。動機や証拠を調べる警察と、お金にフォーカスする保険調査員というリバーシブルな視点でテンポが良く、目障りな相棒となる横浜&小栗のコンビネーションが息ぴったり。「嫌です」「お邪魔しまーす」みたいなひょうひょうとしたやりとりと、シリアス展開のバランスがすてき。「すべてを疑え」。10人のキャラクターが何を隠し、何をロストしていくのか最後まで見る。
◆「俺たちの箱根駅伝」(日本テレビ系、土曜9時)大泉洋/伊藤沙莉/山下智久
★★★★☆
箱根駅伝にまつわる人間たちの逆転劇を、大学陸上部と、中継する放送局の両輪で描く。40年近く箱根を中継する日テレの大型企画。広々としたクオリティーは申し分なく、スポーツ中継にタレントを出す是非、バラエティーを下に見るテレビマンの体質など、あえての自己批判も熱い。崖っぷちにある古豪陸上部の新監督に山下智久。逆風の中、冷静沈着なシゴデキオーラがすごい。小林虎之介ら選手陣も個性派ぞろいで、チームワークも上がってきた。原作池井戸潤×主演大泉洋。テンションも仕上がりも、どう見てもTBS日曜劇場なのがずーっと気になる。
◆「ハイド&シーク 0秒前の彼女」(日本テレビ系、日曜10時半)福士蒼汰/志田彩良/田中樹
★★☆☆☆
爆弾事件の首謀者として追われる身となった公安捜査員が、違う名前で生きていた恋人を救うため敵を追う。フジ「東京PD」が素晴らしかった福士蒼汰×「このミス」1位今村昌弘書き下ろしのタッグに期待したが、銃を横撃ちするタイプのつんのめりワールドで好みが別れそう。2話あたりから、彼女が愛しているのはどっちなのか、気になって仕方がない男子2人の恋心が涙ぐましい。「夜空のどこかを銀河鉄道が通るんじゃないかな」「僕もそう考えてました」。ウソみたいなポエムの雨あられなので、早く楽しむコツをつかみたい。
◆「もうパパ!」(テレビ朝日系、日曜10時15分)原菜乃華/堤真一
★★★☆☆
大学で初恋をし、家族系YouTuberを卒業したい娘(原菜乃華)と、配信が生きがいになっているパパ(堤真一)のすれ違い。「ニコニコな家族」の正義で子どもを縛るパパのストーカーぶりと、パブリックイメージで「ナイスファーザー賞」に選ぶ世の中のテキトーさ。朝ドラ「虎に翼」の吉田恵里香脚本。父親の支配、承認欲求の闇など問題提起が随所にあるが、ホームコメディーの額縁で、笑顔の毒親というホラーに戸惑った。ヒロインの自立のきっかけとなる陽日先輩。「期待値を超えない男」の妙味を岩瀬洋志が生き生きと見せてくれて救われる。
【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)