深川栄洋監督「あなむす」25日閉館シネスイッチ銀座で初日迎え「幸せです」
映画「あなたの息子ひき出します!」の初日舞台あいさつが2日、東京・シネスイッチ銀座で開かれた。1955年(昭30)9月に開業した同劇場は、建物の老朽化等を理由に、25日の営業をもって閉館し、71年の歴史に幕を下ろす。深川栄洋監督(50)は「憧れ続けてきた映画館。25年以上、監督をやり25本以上、作ってきて、初めてかかるのがこの作品。素敵な映画館が。この25日で終わってしまう。かけていただき、幸せです」と感慨深げに語った。
同作は、深川監督が約10年かけて企画、取材して作り上げた。その中、撮影1カ月前に出資者が降りたため、妻で主演の宮澤美保(52)がプロデューサーも務め製作費、配給、宣伝費も含め、3500万円の予算を自分でまかない、自主映画として作り上げた。同監督は「撮影1カ月前に、全額出資すると言った出資者がいなくなった。キャストも決まっていた段階で、自分たちでお金を出そうと借金して映画を初めて作りました。自主映画になってしまったんですけど」と当時を振り返った。
テーマとして引きこもり、犯罪者更生、小児性愛者を3つの柱として描いている。深川監督は「自主映画でないと、こういう題材の映画は作れないという日本の現状もあるんだなと思いながら、途中で止めたくなかった」とも語った。
主演の宮澤は、都会から離れた平穏な街に幼い息子・颯太(小野光南翔)と2人で暮らす小林典子を演じた。典子は、社会から孤立している、ひきこもりを支援する活動を展開。つながりを必要としているさまざまな葛藤を抱えた人々と一心に向き合う典子の元に、他に行くあての無い人や相談が集まってくる。25年9月2日に90歳で亡くなった吉行和子さんが、同2月に撮影に参加し、最後に演技をした作品で、大森南朋(54)演じるひきこもりの息子・三浦雅彦を持つ数子と、同じ読みの名前の役どころを演じた。
宮澤は「役を演じながらスタッフも同時にやっていまして、初日を無事に迎えられて、とてもうれしいです」と目に涙を浮かべた。この日は、典子と颯太と同居して引きこもりの支援をする、橋本由梨を演じた平野ノラ(47)矢崎修吾役の、のせりん(23)も登壇した。
◆「あなたの息子ひき出します!」 ある時、いつものように依頼を受けた典子が任されたのは、長い間ひきこもったままの三浦雅彦(大森南朋)だった。初めは一切の関係を拒んでいた雅彦も、典子の地道な働きかけにより徐々に周囲と言葉を交わし始める。このまま順調に外の世界へとつなげることができるはずだった。しかし、彼には決して引き出したくない過去があった。