【石原伸晃】仏ワイン旅 晴れてシャンパーニュ戴冠騎士団に
7月に続き、妻とのフランス紀行後編をお届けします。アルザスワイン街道を発ち、次なる目的地はシャンパーニュ地方のランス。ここは「戴冠(たいかん)式の都」として有名だ。13世紀に建てられたノートルダム大聖堂では、かのジャンヌ・ダルクに導かれたシャルル7世をはじめ、歴代25人のフランス国王の戴冠が行われ、その歴史的価値から世界遺産に登録されている。
荘厳なファサードとステンドグラスは実に美しく、そのたたずまいは誰しもを敬虔(けいけん)な心持ちにさせる威厳に満ちていた。
シャンパーニュ地方には東京都の約16%に当たる、3万5000ヘクタールのブドウ畑があり、370のシャンパンセラーがある。シャンパーニュ戴冠騎士団日本アンバサダーのフィリップ・ソーゼッドさんの引率の下、ダビッド・ブルダールの畑で領主より様々なお話をうかがった後、いよいよ騎士団の叙任式へ。
剣でシャンパンのボトルを切り開くサブラージュや、サーベルを肩に当てる厳かなセレモニーを経てディプロマ(修了証明書)をいただき、晴れて戴冠騎士団の一員と相成った。ブドウの木の1本に自分の名前をしるしてもらい、暑さに負けずおいしく育てよ、と念を送った。
叙任式の後はお楽しみのローランペリエへ。世界に向け年間700万本、グループ全体では1200万本を出荷する、家族経営では世界一の規模を誇るメゾン(生産者)。1812年の創業以来の歴史についてレクチャーを受け、畑、カーブ(地下ワイン貯蔵庫)の見学後、試飲会へ。1本のシャンパンができるまでの膨大な手間と時間を学んだせいで、今まで何げなく飲んでいたアワに何とも高雅な味わいが加味された気がする。
そしてサロンへ。異論もあるやも知れないが、シャンパンの王様、と称される究極の1本は「サロン」であろう。本来はなかなかお邪魔できないこのメゾン訪問がこの度のハイライト。良年のみにしか造られず、その際にも出荷量はわずか4万から6万本という伝説的存在。最新のビンテージは2015年で10年の瓶内熟成を経てリリースされた。めったにお目にかかれないのもむべなるかな。
カーブの中はまさに宝庫。1928年のビンテージなどが眠っており、それらは地球最後の日までそこにあるだろう、とのこと。一体どのような味わいなのだろうか。
レクチャー後の質疑応答で、妻が手を挙げ、サロンとは何のサロンだったのですか? と尋ねると、案内役のイネスさんは横にあった白黒写真を指さし、「この方が創始者のムッシュ・サロンです」とのこと。王族絡みか何かの由緒ある答えを期待したのでちょっと肩透かし。でも試飲会で振る舞われた2015年のサロンはやはり王族のお味でした。