古舘伊知郎(撮影・中島郁夫)

古舘伊知郎(70)が、12月7日の東京・EXシアター六本木から全国5カ所で「古舘伊知郎トーキングブルース 2025」を開催する。来年1月に福岡、2月に名古屋、3月に大阪、横浜と“しゃべりの巡礼”に出る。テーマは「2025(ニセンニジュウゴ)」。今年2025年(令7)の1年間で、何を見て、何に怒り、何に笑ったのかを2時間半、ノンストップでしゃべりまくる。70歳、古希になった古舘に聞いてみた。【小谷野俊哉】

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ネット時代の到来と、コンプライアンス(法令順守)の徹底でテレビが大きく変わる。

「ワイドショーのあり方、フェイズ(局面)も変わってくると思うんです。放送事故が起きないように、舌禍事件が起きないように、ツッコまれないようにって、あらかじめ打ち合わせで決めた内容を反映してプリントする。パネルにバーッと張り出して、それを両サイドで男女のアナウンサーが読み合うと。この定番をどこもやるじゃないですか。もう、それがつまらなすぎるもん。テレビっていうのは生でやって言うから、危ういし、怖いし、だから面白いし、あざといし。そのスリリングさが、時代を超えての妙なのに。あれは生なのに収録みたいに見えるじゃないですか。破綻がないですよ。ミスプリもあるけど、ほとんどが問題のないコメントを読み合ってる朗読会じゃないんだ。そういう意味では、今はちょっとでも失敗しちゃうと、ネットが炎上してるっていう世の中だから大変ですよね」

フジテレビを揺るがした中居正広氏は会見を開いていない。6月20日に日本テレビの福田博之社長が会見して複数のコンプライアンス上の問題を発表して、降板、引退した元TOKIOの国分太一もひと言も発していない。不祥事で会見して、その後にうまくいったのは一握りだ。

「僕はね、ちょっと違ってて、渡部(建)君だけは成功したと思ってるんですよ。(不倫問題で会見して)あの時は袋だたきにあって、コロナ禍でシールドつけて、それは悲惨でかわいそうとかも言えるし。ああいう風にね、女性を物扱いするようなとんでもないことをやったんだからしょうがないって、いろんな意見が交錯した。僕の中にも何種類もちょっと勝手ながら感想がありましただけど。あれは失敗は成功のもとで、彼はあれをやって人身御供のように袋だたきにされる役目だったんだって思った」

失敗のように思える会見を開いたことで、次に進むことができた。

「あの会見を経たんで、そこからはまだまだ本調子ではないだろうし、分からないけども一応ね。YouTubeで自虐ネタも含めてやってるというのは、あの会見を経たからだと思う。だからみそぎとは言わないです。言わないけども、会見をやってズタボロになるっていうのは始まりでもあるんで。10時間半も夜中まで記者会見やってズタボロになったフジテレビ。最初がダメで逃げ腰になって、ものすごいズタボロになって見せて終わった。あれは夜中までやるということに意義があったんですよ。ここまでズタボロになって恥部を見せてしまった。だから、あの後の株主総会があったんじゃないかと。失敗を失敗と見ない方がいいな、と。あとはもう逃げるっていうね。松本人志も確かにそうだし、中井君もそうだし」

何も言えなくても会見をする。その内容ではなくて、取りあえず会見を開く事に意義がある。

「僕は『トーキングブルース』では、冷めてなければいかんと思ってるんですけど。面白いモードになってきての会見は、リスクが高すぎる。コスパ、タイパが悪いんでやらない。やらないけども、日テレの社長のように『ザ!鉄腕!DASH!!』があるから、ものすごく早めに謝罪をし続ける会見をして、何も中身がない、何も言えない。これはプライバシーに関わる問題だしって、何も言わない。何にも言わないで、ただ謝り倒すというね。これは僕は“謝罪の先出し”と呼んでるんですけども、謝罪の先出しが会見になっていく。この空疎さを売りにする時代に突入した」

会見で事案について説明することよりも、開いた事実が優先する。

「これは今までだったら責任者出てこい、会見出てこい、これじゃ会見にならない。でも、あのフジテレビの夜中までフリーランスの記者がわめきまくったのをピークにして、今度は何もない会見をやってるっていうね、謝罪の先出し会見をね。不思議な時代に突入してるんですよ。これはね、今どきの時代をより映してると思いますよ。よくわからない会見」(続く)

▼「古舘伊知郎トーキングブルース『2025』」

25年12月7日 東京・EXシアター六本木

26年1月18日 福岡・Zepp福岡

26年2月12日 愛知・Zepp名古屋

26年3月7日 大阪・Zeppなんば

26年3月20日 神奈川・Zepp横浜

◆古舘伊知郎(ふるたち・いちろう)1954年(昭29)12月7日、東京都生まれ。立大卒業後の77年にテレビ朝日入社。同8月からプロレス中継を担当。84年6月退社、フリーとなり「古舘プロジェクト」設立。85~90年フジテレビ系「夜のヒットスタジオDELUXE、SUPER」司会。89~94年フジテレビ系「F1グランプリ実況中継」。94~96年NHK「紅白歌合戦」司会。94~05年日本テレビ系「おしゃれカンケイ」司会。04~16年「報道ステーション」キャスター。現在、TBS系「ゴゴスマ」水曜日コメンテーターなど。血液型AB。

情報提供元: 日刊スポーツ_芸能
記事名:「 古舘伊知郎トーキングブルース「会見で袋だたき、ズタボロになるのは始まりでもある」