映画「はらむひとびと」上映4週目突入、主演含め5役の相馬有紀実「まだ伝えたい」涙で訴え
7月11日の公開後「予告だけで泣ける」と話題の映画「はらむひとびと」(中嶋駿介監督)が2日、東京・新宿武蔵野館で、公開4週目も上映延長が決まったことを記念した舞台あいさつを行った。企画、プロデュース、主演、配給、宣伝の1人5役を、妊娠、出産、育児と並行しながら行う相馬有紀実(38)は「まだまだ、この映画を伝えたい!!」と目を潤ませ、声を大にして訴えた。
「はらむひとびと」は、幼児の車内への置き去り事件と、育児と仕事の両立とを題材に描いたことで話題を呼んでいる。伊藤沙莉(31)佐津川愛美(36)さとうほなみ(35)吉田栄作(56)ら俳優、河瀬直美(56)三島由紀子(56)諏訪敦彦(64)の各監督をはじめ芸能界、映画界から称賛の声が相次いでいる。相馬は劇中で、3歳の息子ゆうり(野田瑛仁)を育てるも、社会から隔絶されていく日々の中、育児ノイローゼに陥った乾亜湖を演じた。夫との間に望まぬ妊娠をしてしまったことに悩む、旧友の真山郁美と偶然、再会。交流を重ねていく中で協力関係を築いた2人が、前を向いて生きていこうとした中、ゆうりを車内に置き去りにする事件が発生してしまう物語。
長編映画監督デビューを果たした中嶋監督は「僕が伝えたかったこと…何個かテーマがある。特に、幼児の車内置き去り事件の責任は、本当に母親だけにあるのか?」と、客席に問いかけた。「夏に、まれにあることですけど父親、母親といった当事者だけが責められる。もしかしたら、いろいろな結果があって、そうなっているかも知れなくて…本当に、そうなのかな? という、責任の紐解きをしたいのがあって作った」と語った。
相馬は「私は、35歳の高齢出産。すごい仕事人間で、人脈、キャリアも全部なくなる恐怖があって向き合えなかった。きっかけがあって良かった。(映画が)そういうきっかけになればという思い」と、映画を作った1つ目の動機を説明。その上で「妊活、妊娠、出産、0歳児育児を並行し、葛藤中ですけど、こういう人がいるとパワーをお渡しできれば良いという思い」と、世の中のママにエールを送りたかったことが2つ目の動機だと口にした。そして「最後に、私も育児が大変なところがある。どちらかと言うと、いうと手がかかる子だったので。電車の中で(子どもを)笑わせてくれる人が結構、いる。気持ちが軽くなった。小さな優しさで、いろいろなものを救うという思いがあった」と3つ目の動機を語った。
劇中には、子どもが絡む苦しいシーンもある。この日、司会も務めた相馬は「(映画を見た)若い人に(子どもが)欲しくないと思われたら怖い。そんなことはない。この作品は、絶大な娘のエネルギーがあって劇場までたどり着けた」と目を潤ませ、声を震わせた。映画には当時10カ月の娘も出演し、瀬戸かほ(31)が演じた真山郁美の夫俊介役の浅香航大(32)と共演し“0歳女優デビュー”も飾っている。
観客からの反響の大きさも、上映延長に繋がった。中嶋監督は「劇場公開後、ロビーで、ご感想を聞いたら『妻に見てこいと言われた』というパートナーの方や、カップルで来た方がいた。もしかして、夫に見せた方がいい映画ではないか?」と語った。相馬も「(妻は)『私、子ども見るから、先に見てきて!』と(夫に)言うのが良いかもしれない」とうなずいた。
一方で、中嶋監督は「作品のインスタグラムが、バズっている。予告を見たパパさん、ママさんから『結末が怖くて見られない』という声も…葛藤はあります」と「予告だけで泣ける」と言われる予告のハードさが、若いカップルを遠ざけていることへの不安も口にした。相馬は「予告はハードですけど、予告で見た時の想像と(本編を見た後の感想)は、違うかなとも思っております」と補足した。その上で「パパさんの声を聞くと『妻に、まずありがとう、と言いたい』という声が多い。見る方々、立場によって違う。『もう少し、優しくしたくなった』というご意見もいただき、ありがたいなと思っております」と観客に感謝した。
相馬は、明日3日に日本テレビ系で放送される、三代目 J SOUL BROTHERS岩田剛典(36)主演のドラマ「DOCTOR PRICE」(日曜午後10時30分)第4話に、病気の子どもを持つ母の麻生裕子役で出演する。舞台あいさつの司会を含めれば6役を務める「はらむひとびと」とは違い「ドラマは出演しております!」と強調し、告知した。【村上幸将】
◆「はらむひとびと」乾亜湖(相馬有紀実)は、3歳の息子ゆうり(野田瑛仁)を育てる中、仕事優先の夫雅人(前原瑞樹)に頼れず、社会から隔絶されていく日々の中で育児ノイローゼに陥っていた。一方、広告会社に勤める真山郁美役(瀬戸かほ)は、有名コピーライターの夫俊介(浅香航大)との間に望まぬ妊娠をしてしまう。偶然、再会した旧友の2人は、互いの境遇に共感し、やがて協力関係に。亜湖は回復の兆しを見せ、都美もゆうりとの交流を通じて母になる覚悟を抱き始めた矢先、夏の暑い最中に、ゆうりを車内に置き去りにする事件が発生してしまう。