映画「この世界の片隅に」公開記念舞台あいさつに登場したのん(撮影・野上伸悟)

のん(32)が2日、東京・テアトル新宿で行われた、主演の16年のアニメ映画「この世界の片隅に」の、9年ぶりとなるリバイバル上映記念の公開記念舞台あいさつに、片渕須直監督(64)とともに登壇。「私の中でも、すごく特別な作品。役者をやっていく人生の中で…欠かせない作品になっています。ずっと、ずっと、たくさんの方に見続けて頂ける作品になったことが、心からうれしいです」と一瞬、声を詰まらせつつ喜びを口にした

「この世界の片隅に」は、こうの史代氏の同名漫画を原作に、片渕監督が脚本を手がけた長編アニメーション映画。戦時下の広島・呉を舞台に、大切なものを失いながらも前を向いて生きる、のんが演じた北條(旧姓浦野)すずを描いた。63館で公開したが、戦時中が舞台ながら、かけがえのない日常とその中で紡がれる小さな幸せが共感と感動を呼び、累計484館に公開は拡大。興行収入27億円、動員210万人を記録。日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞、キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位など、国内の映画賞を次々と受賞した。終戦80年を迎え、主人公の、すずが100歳になった年に、前日1日から全国で、初公開時の63館を超えた全国88館で、期間限定での再上映がスタートした。

片渕監督は「すずさんは(劇中で)20歳だったんですけど…戦争中に大人だった人、1つ前の世代の人のお話を聞く機会は少なくなっていく。遠くなっていくのを、つなぎ留めたくて作った映画」と製作の経緯を振り返った。そして「スクリーンの中だけど、現実を描きたく作った作品。実在の人ではないかも知れない、すずさんを、のんちゃんが演じたことで、いつまでも忘れられない人として存在するのは意義があること」と続けた。のんも「今、監督がおっしゃったように、戦時下の日本で起きていた出来事を聞く機会が少なくなってきた中で、こういう生活があったかも知れない。こういう事態に立たされた時、こう生きたかも知れないと思いをめぐらせると(自分たちが)生きている土地で、こういう生活があったと想像してみると、幸せを感じることができると思うんですね。尊く思えるような作品になっていたらいいなと思います」と語った。

トークの中で、のんに演じたすずに成り代わって思いを問う質問も飛んだ。司会から「最後、20歳で終わった。どう暮らしていますか?」と質問が出ると、のんは「そうですね。子どもが大きくなって、言うことが聞かないで大変です。(子どもは)16歳…9年もたつと、ものを言うようになります」と笑顔で答えた。片渕監督から「新幹線に乗りましたか? できてないか。(口にしているのは広島弁じゃなく)標準語じゃないですか? テレビは見ているか?」と問いかけられると、のんは「テレビは見ているので、標準語を覚えました。ほいじゃあねぇ~」と、照れ笑いを浮かべつつ客席に呼びかけた。そして、最後に「作品を見た後は、ご友人、ご家族と感想を言い合って、思いをはせてくれるとうれしいです。末永く、よろしくお願いします」と感慨深げに口にした。

情報提供元: 日刊スポーツ_芸能
記事名:「 のん「この世界の片隅に」9年ぶり上映に感慨「役者人生で欠かせない作品」