NHKがラジオ国際放送などのガバナンス強化策発表 昨年の外部スタッフ不祥事受け
NHKは30日、昨年8月のラジオ国際放送などの中国語ニュースで中国籍の外部スタッフが、沖縄県・尖閣諸島を「中国の領土」などと原稿にはない発言をした問題に関する再発防止の取り組みなどを発表した。
短期施策は昨年中に完了しており、現在は中長期的な施策に取り組んでいるところとし、同局は「今後も、ガバナンスを強化しながら、“質的充実”を図るなど、国際放送における改革を間断なく進め、『日本の視座』を発信していきます」とした。
短期施策ではラジオ国際放送(英語除く16の外国語)の事前収録への切り替え、ラジオ・テレビ国際放送での緊急対応強化、リポートラインの再確認、外部スタッフの理解向上に向けた説明会の実施、国際放送局全体のガバナンス強化、関連団体「NHKグローバルメディアサービス」(Gメディア)との責任範囲の明確化などを行ってきた。
中長期施策では、外部スタッフの理解向上と適切な管理のための業務委託改革、ラジオ国際放送と英語テレビ国際放送に携わる外部スタッフに対しては、本年度の契約を更新する際、国際放送の業務を担う上でのルールや方針を改めて徹底し、理解向上を図ってきたという。
また、ラジオ国際放送においては、Gメディアに翻訳とアナウンス業務を委託してきた言語の外部スタッフについて、今年11月からは、Gメディアを介さず、国際放送局が直接、契約を結ぶという。これに先立ち、国際放送局の管理体制を強化するなど、より緊密なコミュニケーションとリスク管理を行うことができる業務委託改革を進めている。
事案が起きた中国語ニュースについては、本年度から放送時間を見直すなどして十分なチェック体制を確立してきた。加えてAI音声読み上げも本格的にスタート。中国語に翻訳したニュース原稿をもとに、AIで音声を作成し、中国語が堪能な職員やネーティブのスタッフなど複数の担当者が内容や品質を細かくチェックしたうえで事前収録して放送している。
同問題は、中国籍の外部スタッフが昨年8月19日の生放送で、靖国神社で落書きが見つかったニュースを読み上げた後、尖閣諸島を「中国の領土」と発言したほか、英語で「南京大虐殺を忘れるな。慰安婦を忘れるな。彼女らは戦時の性奴隷だった。731部隊を忘れるな」などと述べた。
問題を受け、当該スタッフとは契約解除、信用毀損(きそん)などの損書賠償を求める訴訟も提起していた。同スタッフは48歳の男性で2002年にNHKと業務委託を結んでいた。この件を受け、稲葉会長ら役員の報酬自主返納や当時の担当理事が辞任、関連するNHKグローバルメディアサービスの社長やNHK国際放送局長らの減給などの処分が行われていた。