シンガー・ソングライターおかゆができるまで“スナック生まれスナック育ち”からギャル/連載2
うだるような暑さとなった25年6月21日。“ギャルの聖地”渋谷109の店頭イベントスペースには、この日のためだけに自らデザインして作った衣装に身を包み、新曲「ジモンジトウ」を歌う“シンガー・ソングライター”おかゆ(34)がいた。この日、さまざまな思いが交錯し、目を潤ませた。それを紛らわすように明るく努める姿が印象的だった。このミニライブを“第2章の始まり”と位置付け目を潤ませた、その意味に迫った。【川田和博】
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渋谷109店頭イベントスペースでのミニライブ。渋谷109は“ギャルの聖地”だ。実は、元々ギャルに憧れて札幌から上京した。
「東京に出て、渋谷のギャルになりたかった。それで本当に渋谷のギャルになったんです。平和島でアルバイトをして、渋谷に通ってギャルをしていました。夢かなえたみたいな感覚で、もう一生これでいいみたいな感じでした」
なぜ、ギャルに憧れたのだろうか。
「多感な時期にあまり周りとなじめなくて。自分を表現したいけど、その表現の仕方が分からなくて、すごく生きづらさを抱えていた時期があったんです」
そこで出会ったギャル雑誌が背中を押してくれた。「私にはとてもかっこよく見えて、『これになりたい!』みたいな。ギャルにときめきを感じ、初めての憧れをもちました」
その理由に“ギャルマインド”を挙げた。
「多分ギャルはみんな自信を持って自分を表現しているんです。それが私にはアートに感じました」
34歳、その根底にはギャルマインドがある。
「34歳でギャルと言っていいのか分からないけど、やっぱり心にはまだギャルの頃の自分がいて、渋谷は“ずっとギャルでいさせてくれる街”なんです」
だからこそ、渋谷へのこだわりは人一倍強い。
「渋谷に住んでいて、事務所も渋谷で探しました。どんなことがあっても『渋谷に住んでるじゃん』と思えるんです」
その思いは行政にも届き、2年連続で渋谷区観光協会・観光フェローに任命されている。
そんなおかゆの幼少期は、演歌・歌謡曲好きな母がスナックで歌う姿を見て育った。
「物心が付いて、自我が芽生えたときから光景が全てスナック。小さいころの思い出って、お出かけしたとかだと思うけど、私は全部スナックなんです。母はお酒も歌も大好きな人で、そのスナックはおばあちゃんの代から、家族ぐるみの付き合いでした」
スナックで聞く母の歌が胎教にもなった。
「母は髙橋真梨子さんが一番好きだでした。そんな母が歌う真梨子さんとか、美空ひばりさんとかの演歌・歌謡曲をずっと聞いて育ちました。生まれる前の写真も出てきています(笑い) だから、もう完全に“スナック生まれ、スナック育ち”。お客さんたちにおつまみとかいただいて、あやされていたのも覚えています」
17歳で上京。憧れだったギャルにもなり、夢をかなえたと思えた。だが、人生を変える出来事がおかゆを襲うことになる。(つづく)
◆おかゆ 本名、坂本由佳(さかもと・ゆか)1991年(平3)6月21日、北海道生まれ。19年5月1日、「ヨコハマ・ヘンリー」でビクターからメジャーデビュー。23年5月、5枚目シングル「渋谷のマリア」が発売週のオリコン演歌・歌謡曲ウイークリーランキングで1位を獲得。また、第16回CDショップ大賞2024歌謡曲賞を受賞。167センチ。血液型A。