木曜劇場「波うららかに、めおと日和」(C)フジテレビ

ノーマークから一気に4月期ドラマの話題をさらったフジテレビ系木曜劇場「波うららかに、めおと日和」(木曜午後10時)が、26日に最終回を迎えます。なつ美(芳根京子)と夫の海軍将校、瀧昌(本田響矢)のピュアでまっすぐな恋模様に加え、この作品の凜(りん)とした世界観を印象付けた芙美子(山本舞香)と深見(小関裕太)の“ふかふみ”ペアも大いに話題になりました。サブカップル好きとしては、こちらのエンディングも大いに気になります。

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深見は海軍に勤める瀧昌の同僚、芙美子は海軍士官の妻たちと親交がある独身タイピスト。いかにも物語のかき回し役や恋敵といった役回りで描かれがちなポジションですが、2人とも登場回からそんなテンプレとは無縁な輝きがありました。

家柄もルックスも抜群の深見は、遊び人に見えて人をよく見ている大局観キャラ。昭和初期にタイピストとして自立する芙美子は、ドライな物言いの中に人への優しさが詰まっているクールビューティー。腹の内を見せないタイプの胸の内、という人物の奥行きを、山本舞香と小関裕太が生き生きと立ち上げて素晴らしかったですね。結婚に距離を置いてきたそれぞれの事情に1歩ずつ共鳴し、対等な関係を築いていく過程にしっとりとしたオトナのキュンがあって、“交際ゼロ日婚”のピュアな主人公たちのキュンとバランスがいいのです。

昭和初期のブルジョアな日本語も印象的で、すてきなせりふがたくさんありました。深見でいえば、「横から失礼」みたいなひと言だけでも紳士的でかっこいいんですよね。子どもを諭すシーンで「それ以上言わない方がいい。君の品性が疑われる。同情されたくないのならそれなりの振る舞いを」とか。人をあしらうのがうまい深見が、子どもには真剣に向き合う意外な横顔が最高でした。

芙美子も名ぜりふの宝庫でしたが、個人的に好きだったのは、「歯の浮くようなせりふ。軽蔑とともに若干尊敬いたします」。突き放すような切れ味の中にしっかり深見への信頼も感じられ、美しい立ち姿とセットで聡明(そうめい)なキャラクターが匂い立つのです。

突然セッティングされたお見合いでの心理戦は、そんな2人の真骨頂でした。ワケあって季節外れのヤマユリの着物を着ていった芙美子のプライドも、「ヤマユリのようにきれいでした」と仲人に伝言を残した深見も上等。すっかり相手を好きになっていることに気付いた2人が、それぞれの自宅で「あの女たらし」と赤面したり、「参ったな」とため息をついたりと、自分に困惑する姿も心躍りました。

韓国ドラマ「愛の不時着」の社長令嬢と詐欺師、「トッケビ」の死神とサニーなど、大ヒットするラブコメには魅力的なサブカップルがいるもの。いいバランスでメインカップルの物語とからみながら、作品の世界観をブーストさせていくんですよね。

最近の国内ドラマでは、「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~」(21年)の鈴木伸之と奈緒、「リバーサルオーケストラ」(23年)の坂東龍汰、恒松祐里あたりがすてきな物語がありましたが、基本的に日本のラブコメは三角関係を軸にした当て馬キャラを愛でる脚本が多く、サブカップル少なめ。描かれたとしても、ふられた者同士とか、多カップル設定の中のひとつなどにとどまりがちです。

今回の“ふかふみ”のように、視聴者発信でニックネームまでつくのは珍しいこと。芳根京子×本田響矢、山本舞香×小関裕太らキャンスティングの確かさも含め、原作愛を共有し、しっかり形にしたチームの志に感銘を受けるばかり。ドロドロした不倫ドラマや復讐(ふくしゅう)愛憎劇ばかりが量産される中、若くさっそうとした恋愛ドラマの挑戦がしっかり受け手に届いたのは痛快でした。

最終回は、急な招集で瀧昌と深見が艦に乗り、暴風雨に見舞われるという不穏なところから。なつ美と瀧昌、芙美子と深見たちの物語を楽しみに待ちたいと思います。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

情報提供元: 日刊スポーツ_芸能
記事名:「 いいラブコメにいいサブカップルあり「めおと日和」“ふかふみ”ペアの最終回も気になる