カンヌ映画祭のレッドカーペットに立った、ある視点部門に出品された「遠い山なみの光」の、左から三浦友和、広瀬すず、吉田羊、石川慶監督(C)Kazuko Wakayama

世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭(フランス)ある視点部門に出品された日英合作映画「遠い山なみの光」(石川慶監督、今夏公開)が15日、同映画祭の劇場、ドビュッシーで公式上映された。

三浦友和(73)が、20歳だった1972年(昭47)にTBS系ドラマ「シークレット部隊」でデビューして53年で、初めてカンヌ映画祭に参加した。公式上映で、約5分間のスタンディングオベーションを浴び「スタンディングオベーションって映画で初めて経験したので、やはり感動しますね。それがお決まりの、ということではなく、心からと感じたので本当に…やっぱり感動しました」と感激した。

上映後、日本メディアの囲み取材に応じた三浦は、カンヌ映画祭の印象について聞かれ「正直、1日がこんなに長いと思いませんでした」と言い、笑った。「1つ1つの時間が全部、決まってると初めて知りましたし(日本テレビ系)『世界の果てまでイッテQ!』で出川さんのパパラッチのコーナーがあって『カンヌってこんな感じなんだ』って思ってあのコーナーでしか知らなかったもので」と、独特の言い回しでカンヌ映画祭初参加で抱いた思いを吐露。「実際、来てみたら忙しいのと、実際に来られたんだっていううれしさと両方あります」と率直な感想を口にした。

「遠い山なみの光」は、ノーベル文学賞受賞作家カズオ・イシグロ氏(70)の、1982年(昭57)の長編デビュー作の映画化作品で、同氏が生まれた50年代の長崎と80年代の英国が舞台。主演の広瀬すず(26)が演じた主人公の悦子は、長崎在住時代に原爆を経験し戦後、英国に渡る。英国に渡って以降の、80年代の悦子は吉田羊が演じる。悦子は、英国人の夫との間に生まれた娘ニキが、大学を中退し作家を目指そうと執筆のために自宅を訪れ、数日を共にする中で、最近よく見る長崎で暮らしていた頃に知り合った謎多き女性・佐知子と幼い娘の夢について語り始める。

三浦は劇中で、松下洸平(38)が演じた悦子の夫で傷痍(しょうい)軍人の二郎の父で、かつて悦子が勤務していた学校の校長・緒方を演じた。

囲み取材で「キャストの中で一番、戦争というものに近い年代かと思います。戦後80年経った今、こういった戦争の傷痕を描く作品に出られること、映画が製作されることを、どう受け止められているか?」と質問が出た。三浦は「戦後を描いていますから。(作品で描かれた)52年は僕が生まれた年なので、父親の世代があの年よりもうちょっと若いのかな。だけど、戦後を今回描いたときに感じたのは、ものすごく社会が変化している中で、女性たちが強いんですよね。もちろん全員じゃなかったにしても平均的に女性のほうがやっぱり強くて、男は取り残されていますね」と語った。

さらに「自分がやってきたこと、普段から軍国主義の教育をしてきた方の役ですから、それに対しての負い目ももちろんあって、でもどこかで自分は少しは正しかったんだ、という思いも7年たってあるし」と役どころについても言及。その上で「だから戦争映画を描く、反核、反戦もあるんですけれど、こういう形の描き方もやっぱり素晴らしいと思います」と作品を評価した。

情報提供元: 日刊スポーツ_芸能
記事名:「 三浦友和72年のデビューから53年で初カンヌ映画祭「イッテQ ! のコーナーでしか…」