柄本明、76歳で過酷な「全国映画館の旅」車で3200キロ…映画製作も並行「面白いよね」
柄本明が朗読劇「今は昔、栄養映画館」を引っ提げ、5月の1カ月間、日本各地の単館系の映画館を回り上演し続ける。
座長を務める劇団東京乾電池のアトリエで上演した、映画がテーマの同作を映画館で演じることに面白みを感じたことがきっかけ。共演の劇団員・西本竜樹(49)とスタッフ含め6人で車に乗り、14府県の23館を巡る。総移動距離3200キロに及ぶ、過酷な「全国映画館の旅」。76歳で挑むにあたり「やったことないし、どうなるんですかね。とても楽しみ」と期待した。
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「今は昔、栄養映画館」は劇作家・竹内銃一郎氏の戯曲で、映画館で映画の完成セレモニーをセッティングして開始を待つ中、やり合う自称監督と助監督の掛け合いを描いた。30年以上前に1度、2人芝居で演じたことはあった。アトリエ乾電池でここ2年以上、毎朝9時から行っている無料朗読会で一部を読み、好評だったため昨年11月に全編を朗読劇として上演。同12、今年1月と再演を重ねる中、観劇に訪れた脚本家の荒井晴彦氏(78)と話し「映画館で上演したら面白いのでは?」と着想した。
過去の上演では場内にスクリーンを貼り、柄本演じる監督が「よーい、スタート」と声をかけると舞台が暗転し、映画の映像を流す演出で観客を沸かせた。それを本物の映画館とスクリーンを使って行う。「2次元の世界を見る映画館で、俳優が生で芝居を始め、真っ暗になってスクリーンにバッと映画が映ると、あぁ、やはりここは映画館なんだとなる感じ。どう受け止められるか」と期待した。
ミニシアターと呼ばれる単館系の映画館は、最前列の客席とスクリーンの間のスペースが狭いところも少なくない。生で演じること自体、難しい可能性もあるが「面白いと考えれば面白い。開演時間が来たら、やるだけでしょ」と意に介さない。観客の手が届きそうな目前でパンツ1枚になるシーンもあり「パンツだけは死守したい」と笑った。
さらに「全国映画館の旅」の道中を収録し、ドキュメンタリー映画の製作も並行する。「せっかくだから、ツアーを撮る。リアルロードムービー…面白いよね。『3200キロ』って題にするか」と目を輝かせた。
休演日は6日あるが、撮影など別の仕事や移動日で実質的に1カ月、休みはない。「その間(休演日は)仕事だもんね」と言いつつも「本当に、体に気を付けないと。でも1日、1時間ですからね。アトリエで本番を何日かやって、1日1回やると、体の具合がどうなるか分かっているから」と軽やかに笑い飛ばした。【村上幸将】
○…公演は荒井氏の弟子の映画監督・脚本家の井上淳一氏(59)が全国のミニシアターに話を持ちかけ、ブッキングした。同氏は20年のコロナ禍で集客が落ち、存続の危機に立たされたミニシアターが、今度は2010年代にデジタル化が進み導入したデジタル映写システム(DCP)に寿命がきて「更新による多額の設備投資の壁にぶち当たっている」と指摘。「行かない映画館から『何で来ないの?』と声が出ています」と柄本の試みに期待の声も多いと明かし、シリーズ化の可能性を示唆。柄本も「うれしい」と意欲を見せた。