フジテレビ

「物言う株主」として知られる米投資ファンドのダルトン・インベストメンツが、フジテレビの親会社「フジ・メディア・ホールディングス」(FMH)は16日、自社サイトを通じて、6月開催予定の定時株主総会において株主提案権を行使する書面を発送したと発表した。

書面を通じ「ダルトンの関連会社であるライジング・サン・マネジメント(以下「RSM」)は、フジ・メディア・ホールディングス(以下「FMH」)に対し、来る6月開催予定の定時株主総会において株主提案権を行使する書面を発送いたしました」と発表。

そして「40年に亘る日枝氏の長期政権が終焉を迎え、FMHおよびフジテレビは生まれ変わるチャンスを得ました」とした上で「今後は、これまでの体制で生じた課題の解消と、フジテレビの放送・メディア事業の発展を実現するための取り組みが求められています。私たちは、こうした取り組みを着実に推進していくうえで適任と考えるFMHの取締役候補者を提案いたします」とつづった。

新たな取締役として、SBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長ら12名を選任するように株主提案。ダルトンはFMHが3月下旬に発表した役員人事案について経営刷新というにはほど遠いと批判していた。

提案内容および提案理由は以下の通り(候補者の略歴等は割愛)

株主提案書

2025年4月16日

東京都港区台場二丁目4番8号

株式会社フジ・メディア・ホールディングス

代表取締役金光修様

ニッポン・アクティブ・バリュー・ファンド・

ピーエルシー(Nippon Active Value Fund

plc)

代理人弁護士水落一隆

ニッポン・アクティブ・バリュー・ファンド・ピーエルシーは、2025年6月またはその他の時期に開催される予定の株式会社フジ・メディア・ホールディングス(「当社」)の定時株主総会(「本定時株主総会」)において、下記の事項を会議の目的とし、かつ、同議案の要領を本定時株主総会にかかる株主総会招集通知に記載することを請求します。

第1提案する議題

1 取締役12名選任の件

第2議案の要領及び提案の理由

1 取締役12名選任の件

(1)議案の要領

以下の12名を取締役として選任する。

1.北尾吉孝

2.北谷賢司

3.岡村宏太郎

4.堤伸輔

5.坂野尚子

6.James B. Rosenwald III

7.菊岡稔

8.福田淳

9.松島恵美

10.近藤太香巳

11.田中渓

12.西田真澄

(2)提案の理由

フジテレビ「らしさ」の復活を。「面白くなければテレビじゃない」

1980年当時42歳で編成局長だった日枝久氏が掲げた「楽しくなければテレビじゃない」のキャッチフレーズで、全日・プライム・ゴールデン三冠を達成したフジテレビの黄金期。テレビに「イノベーションを起こす」という情熱にあふれた時代でした。

あれから40年に亘る日枝氏の長期政権が続き、フジテレビは衰退していきました。

2024年の視聴率は、テレビ朝日、日本テレビ、TBSに置き去りにされており、その低迷ぶりは際立っています。

今、ようやく日枝体制が終焉を迎え、フジテレビは生まれ変わるチャンスを得ました。私たち当社フジ・メディア・ホールディングスの株主は、日枝体制の残滓を一掃し、フジテレビの大変革を力強く推進する経営者たちを当社に送りたいと思います。

当社の課題は4つあります。

1.ガバナンス改革

一つ目はガバナンス改革です。40年に亘る日枝体制が続いた結果、当社は時代の変化に対応し、数少ない民放キー局を抱えるグループでありながら、日本の未来のメディア産業を担うという力強い経営者を迎えることができませんでした。それどころか、日枝氏の顔色を窺う社内の経営陣と日枝氏の知己である社外の経営陣によるずさんな経営によって、プライム市場上場会社であるという立場を無視し、PBR0.3倍という上場会社の経営者としては極めて恥ずかしい状態を継続してきました。経営陣の実力が問われた

今回の騒動においても、その乏しい経営能力が露呈し、結果売上高90%減という未曽有の危機を招きました。私たちは当社の株主として、この機会に、プライム市場上場会社として、いわば当然のガバナンス体制を整備する必要があると考えています。ところが、2025年3月27日に発表された当社および株式会社フジテレビジョン(「フジテレビ」)の新経営体制では、相変わらず親会社である当社と子会社であるフジテレビに同じ取締役が名を連ね、かつ、日枝体制の残滓である金光氏、清水氏、茂木氏、島谷氏、齋藤氏が経営の中枢に残るという、何も変わらないというメッセージを公表してしまいました。正直理解に苦しみます。そこで、私たちは外部から有力な取締役候補を招

聘し、当社のガバナンス体制の変革を行うことを託すことにしました。

2.不動産事業のスピンオフ

二つ目は、不動産事業の切り離しです。当社は認定放送持株会社として、放送法により外資規制がかかり、一人の株主による株式保有の集中が制限されるなど、株主によるガバナンスが効かないぬるま湯の環境に置かれてきました。百歩譲って、国の政策により公共性のある放送会社として株主によるガバナンスが一定程度制限されるとしても、不動産事業までもが関係のない放送法で守られる理由はありません。放送事業と不動産事業は明らかに相互に関連性のない事業であり、認定放送持株会社である当社が不動産事業を保有することは適切ではありません。実際、当社は不動産事業がグループの収益を支え、放送・メディア事業がこれに甘えるという構図を長年続けてきた結果、肝心の放送・メディア事業の衰退を招きました。不動産事業を直ちに税制適格スピンオフすることで、放送・メディア事業から切り離した形で当社の株主が不動産事業の株主となることによって、それぞれの事業がより厳しい環境で成長できるようにすることが必要です。最近ではサッポロホールディングスも株主からの強い要請もあり不動産事業を切り離すことを表明しています。私たちが提案する当社の取締役候補者には、不動産事業のエキスパートも含まれています。

3.政策保有株式の解消

三つ目は、当社が未だに大量に保有する政策保有株式の解消を急ピッチで進めることです。政策保有株式は、会社と親密な関係にある企業との間で相互に株式を持ち合い、互いの株主総会において経営陣のサポーターになってもらうことで、他の株主の意見を弱体化することを目的としています。同時に、そのような目的で政策保有株式を大量に保有するために多額の資金を使うことになり、その資金を本業に使えないという資本効率の観点からも大変問題のある悪しき慣習で、これが30年来の日本の株式市場の低迷を招いた原因の一つと言えます。政府も政策保有株式の解消を早急に進めるよう指導しているところです。これまで当社の日枝体制を長年支えてきたのは当社の株主でもあります。来る6月の当社の株主総会で、当社の親密企業である株主がどのような判断をするのか、多くの方々が注目しています。私たちは、これまでの当社の経営陣による生ぬるい対応と決別し、当社が保有する3000億円の政策保有株式の解消を一気に進め、これにより得た資金をフジテレビの放送・メディア事業の改革のために使い、余剰資金を

株主に還元することのできる取締役候補者を提案しています。

4.フジテレビの放送・メディア事業の大改革

最後に、四つ目は、フジテレビの放送・メディア事業の大改革です。まず、フジテレビの最大の武器とすべきはコンテンツ制作能力です。フジテレビは、2022年に視聴率低迷を理由に早期退職制度を実施し、50代の製作能力に優れた多くの社員たちを流出してしまいました。その結果は、制作能力が下がり、ドラマなどの作品の質が低下し、視聴率が下がるという悪循環が起こりました。

また、テレビ広告収入に頼る結果、広告スポンサーの意向を気にしながらの番組制作となり、ますます均質化した面白くない番組ばかりとなっています。

今フジテレビは原点に立ち返り、コンテンツ制作能力を大幅に強化する必要があります。

積極的に有能な人材を獲得し、また若手を育成し、自由に面白いものを創れる環境を整える必要があります。制作会社との関係も見直す必要があります。制作会社を単なる下請けとしてみるのではなく、共創パートナーとして関係を進化させます。アイデアを出し合い、共に面白いものを創るという活気に満ちた現場を作ります。地方局との関係改善も重要です。準キー局枠を拡げ、地方局の制作能力も活かし、番組制作の多角化を行います。

次に、コンテンツの収益化です。テレビ広告収入に頼る時代は終わりました。制作したコンテンツはテレビに流すだけではありません。SVODプラットフォームとの提携・統合も視野に入れ、流通ルートを拡大していきます。中途半端なプラットフォームを作るのではなく、FODについても抜本的見直しが必要です。グローバルプラットフォームとも提携し、国内だけでなく、海外にも流通させることに力を入れていきます。

また、当社グループ(フジテレビのみならず、ポニーキャニオンやフジパシフィックを含む)がすでに保有しているコンテンツも重要な事業資産です。これらを積極的に活用し、収益を上げていきます。

ほかにも、時代の変化に合わせた柔軟かつ斬新なコンテンツの制作・流通について、外部からも積極的に知見を集め、再びイノベーションを起こしていく。フジテレビは生まれ変わります。

「面白くなければテレビじゃない」

私たちはフジテレビの放送・メディア事業の大改革を強いリーダーシップをもって推進できる当社の取締役候補者を提案します。

なお、当社の取締役がそのままフジテレビの取締役になるわけではありません。親会社である当社の取締役会は、子会社であるフジテレビの経営陣を外部から招聘することも可能です。当社の取締役会が、フジテレビの大改革を行うのにふさわしいフジテレビの経営陣を招聘してくれることを期待しています。

情報提供元: 日刊スポーツ_芸能
記事名:「 米投資ファンド、フジHD取締役人事でSBI北尾吉孝氏ら12名選任を正式提案/発表全文