左から劇団四季の吉田智誉樹社長、笠松哲朗、立崇なおと、野中万寿夫、阿久津陽一郎、ジョン・ランド(荒井健氏撮影)

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4月6日に初日を迎える劇団四季のミュージカル「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(東京・竹芝の四季劇場「秋」)の稽古風景が公開された。1985年に公開され、世界的に大ヒットした映画のミュージカル版で、2020年に英国で開幕し、ブロードウェーでも上演された。今回が日本初演で、初回販売分(4~9月)のチケットは完売する人気ぶり。主人公マーティ役候補の立崇なおと、笠松哲朗、演出のジョン・ランドらが意気込みを語った。【林尚之】(敬称略)

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話題のミュージカル「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のベールがとかれた。この日公開されたのは3シーン。1985年から1955年にタイムトラベルしたマーティが元の世界に戻るため、変わり者のタイムマシン発明者のドクに助けを求める場面で、ドクの雷を利用する思いつきに、マーティは道が開かれたと喜んで「FUTURE BOY」を歌う。そして、その計画に陰りが見えた時、ドクが夢を諦めずに追い求める大切さを訴える「FOR THE DREAMERS」を歌う場面。最後はマーティの父ジョージを励ます「GOTTA START SOMEWHERE」をみんなで歌い、陽気なリズムに誘われて激しい群舞を繰り広げ、「何事も為せば成る」というメッセージを届ける、ショー・ストッパー(拍手で進行が中断する)必須の場面だった。

英国の初演の演出も担当したランドは「この作品は、家族のきずなが1つのテーマで、時代を超えた物語性がある。映画からミュージカルにする上で、1950年代、80年代の時代性を音楽や振り付けにも反映した。コメディー要素もあって、見た後に心が明るくなる作品だと思う」と話した。

マーティ役の立崇は「(映画のマーティ役の)マイケル・J・フォックスのイメージが強いけれど、リスペクトを持ちつつ、自分らしいマーティを目指して日々稽古しています。生オーケストラで上演されるので、あの音楽を目の前で聴いて歌えることが楽しみです」と言えば、笠松は「マーティとしてドラマを生きることができる、その旅路を楽しめることに喜びを感じています。ザ・ミュージカルという要素も盛り込まれていて、舞台空間でしかできない表現を楽しんでほしい」。

ドク役の野中万寿夫は「上映されたのは20代のころで、励まされた映画だったので、それが舞台化されると聞いてとても驚きました。稽古を重ねて、コメディーとは笑わせるのではなく、必死に物語を生きる私たちをお客さまが笑い飛ばすということなのではないかと感じています」。同じくドク役の阿久津陽一郎は「ドクは自分の行動の先に未来があり、諦めないことで成功に近づくと信じている人物だと思う。今作といえば、(車を改造したタイムマシンの)デロリアンですが、デロリアンとのやりとりも面白く仕上がっているので、楽しみにしてください」と話した。

劇団四季では、今作の上演決定前に市場調査会社を通して「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の認知度を調査したという。吉田智誉樹社長は「唯一無二というぐらいの知名度を持っていて、性別年齢も幅広く、多くの方に愛されていることが分かった。原作映画には男性のファンも多いため、現在女性のお客さまが多いミュージカル界にとって、新しいお客さまを招くチャンスになる作品だと考えています。子供2人の4人家族だと、これまではお母さんと子供2人が劇場に足を運んでいたただいたけれど、今作はお父さんも見たがるはず。チケット3枚だったのが、4枚売れるようになるのかなと思います」と男性客が増えることに期待を寄せていた。

この日は映画のシンボル的存在であるデロリアンのお披露目はなかったが、すでに劇場に運び込まれているという。映画を緻密に再現したデロリアンが、舞台上に突如として出現するシーンはどうなるのか。本番が楽しみです。

◆バック・トゥ・ザ・フューチャー 製作総指揮をスティーブン・スピルバーグが務め、ロバート・ゼメキス監督、マイケル・J・フォックス、クリストファー・ロイドの出演で1985年に公開された。世界的に大ヒットし、SF映画の金字塔ともいわれ、89年と90年に続編が公開された。ミュージカルは第1作目をもとに創作された。ロックスターにあこがれる高校生マーティが、友人である変わり者の科学者ドクが発明したデロリアンを改造したタイムマシンで30年前にタイムトラベル。そこで高校時代の母親ロレインと出会い、内気な父親ジョージとの2人の仲を取り持ち、未来に帰ろうとするが…。ミュージカル版は2020年に英国マンチェスターで初演され、翌21年にロンドン・ウエストエンドで開幕。ブロードウェーでは23年8月から25年1月まで上演され、オーストラリア、ドイツでも上演を予定している。

■主な映画からミュージカルになった作品

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」と同様に、映画からミュージカルとなった作品は多い。上演中や4月以降に上演予定の作品を紹介する。

▼上演中 劇団四季ではアニメ映画をもとにしたディズニーミュージカルを数多く上演している。ディズニーが演劇界に進出した時の第1弾となった「美女と野獣」は91年に長編アニメとして公開され、94年にブロードウェーでミュージカルとして上演された。翌95年には四季が日本でも初演し、再演を重ね、現在は舞浜アンフィシアターでロングランしている。第2弾が94年公開の「ライオンキング」で、こちらは97年にミュージカル化され、四季は98年に初演した。日本演劇史上初めての無期限ロングラン公演として走り続け、現在は有明四季劇場で上演されている。92年公開の「アラジン」は14年にブロードウェーで初演された。翌15年に日本での上演が始まり、電通四季劇場でロングランしている。「アナと雪の女王」は13年の映画公開前からミュージカル化が決まっていた作品で、ブロードウェーで18年に幕を開けた。四季はコロナ禍の21年に初演し、四季劇場「春」でロングランが続いている。

▼今後の上演予定 4月9日初日の高畑充希主演のミュージカル「ウエイトレス」(日生劇場)は、07年公開の同名映画をベースに製作され、16年にブロードウェーで上演された。作曲、脚本、演出などを女性クリエーターが手がけ、21年に高畑主演で日本でも初演された。4月27日初日のミュージカル「キンキブーツ」(東急シアターオーブ)は05年に公開された同名映画をもとに、シンディ・ローパーの作詞・作曲によって、12年に米国シカゴで初演され、13年にはブロードウェーに進出。日本では16年にチャーリー役の小池徹平、ローラ役の三浦春馬のダブル主演で上演された。19年、22年と再演され、今回はチャーリーに東啓介、有澤樟太郎、ローラに甲斐翔真、松下優也が出演する。5月10日初日のミュージカル「ダンス オブ ヴァンパイア」(ブリリアホール)は、ロマン・ポランスキー監督の映画「吸血鬼」を下敷きに、97年にオーストリア・ウィーンで初演された。日本では06年に山口祐一郎主演で初演され、今回は山口と城田優のダブルキャストとなる。

情報提供元: 日刊スポーツ_芸能
記事名:「 劇団四季が「バック・トゥ・ザ・フューチャー」舞台化 1955→1985→2025年4月に日本公演