おくすり手帳とパスポートをアップして偉そうに呼びかけているが、実は期限切れ。よく見るとパスポートの上下が逆さまなのも後から考えると不吉

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>

還暦のマッチとヨッちゃん-。2日に行われた近藤真彦(60)と野村義男(60)の台湾ライブ「MASAHIKOとYOSHIO in 台湾 2025」を現地取材してきた。気温30度の台北から、気温3度の東京に帰ってきて震えている。

今回のライブは、1979年(昭54)のTBS系「3年B組金八先生」での初共演など、半世紀近くに及ぶマッチとヨッちゃんの友情の証のファイナル。ちなみに記者は、2月27日にはトシちゃん、田原俊彦(64)の会見を取材して、1週間足らずで“たのきんトリオコンプリート”の快挙? を成し遂げた。

2人が還暦といっても、こちらはその上を行く63歳。年寄りならではの「知見」を示そうと考えた。海外出張に一番必要なパスポートは1カ月前から鞄の奥深くしまい込んで忘れないようにした。2日の出発当日、パスポートを忘れるうっかりさんがいたらかわいそうだと、関係者のLINEグループに「大切なものを持って出発」と、お薬手帳とパスポートの写真を投稿して家を出た。

集合時間は午前8時30分。その15分前に羽田空港第3ターミナルに到着した。エバー航空の自動チェックイン機を操作するがうまくいかない。その後、ライバル社のE君もやってくるが、うまくいかない。係員のお姉さんに不具合を告げると、手動のチェックインの列に並ぶように言われた。

時間の余裕はたっぷりある。列に並びながら、スマホでオンラインチェックインを試みる。次々に現れる広告をかいくぐって、最後までたどり着いてチェックイン! これを3回繰り返したがうまくいかない。あらためてパスポートを見ると、なんだか写真が若い! 期限切れの以前のものを、後生大事に1カ月も持ち歩いていたのだ。

血の気が引いたが、気は失わない。カウンターに駆け寄って事情を話すと、お姉さんがすまなそうに「申し訳ありませんが、パスポートだけは正規のものでないと…」と丁寧な対応で説明してくれたが、要するに「ダメーッ!」。

時間は午前8時40分。出発は午前10時25分だ。「次の昼便に空きがありますから、その手続きも進めておきますから…。午前9時30分までに戻っていただけたら」。お姉さんの声を背にダッシュしてタクシー乗り場へ。「恵比寿まで可能な限り早く」。声の震えを押し殺してお願いした。幸い休日とあって高速はすいている。

午前9時15分、恵比寿到着。タクシーの運転手さんに「パスポートを取って戻って来るから、待ってて」と言い残して自宅へ。大事な物を入れているタンスの引き出しをベッドの上にぶちまけた。ない! 部屋のあちこちを探しても見つからない。タクシーに戻り運転手さんにおわびして、料金を払う。

部屋に戻ってぼうぜん自失。次の便どころか、パスポートがなけりゃ…。と、その時、ベッドの下からはみ出ている赤い冊子を発見。パスポートだ。開いてみると本物だ。急いでタクシーを拾って、羽田空港へ向かう。午前9時20分すぎだ。

午前9時30分、芝公園を通過している時に非通知の電話が。無視して、旅行会社の担当者にLINEで事情説明。2時間後の次の便に乗れるであろうこと。台北の松山空港に着いたら、タクシーでどこに向かえばいいかなどを相談した。

そして、40年に及ぶ記者生活を振り返る。寝坊で海外出張をすっぽかした後輩、新幹線に乗り遅れて他社の記者を待たせた某記者、海外出張直前に記者が病に倒れ、それでも記事はなんとか紙面でメーンを張った某社……。頭の中をいろいろなことが駆け巡る。

そして会社になんて言い訳するか。「母親が危篤」。いやいや93歳の母親を言い訳に使うのはシャレにならない。「急に心臓が痛くなって」などなど…。こんなにボケるなら、サッサと引退すべきだったと後悔の念も。

午前9時50分。羽田着。諦めの心境でタクシーを降りると、再び非通知の電話。「今、どこにいます」「第3ターミナルにタクシーで着きました……」「間に合います! 走ってください!」。

エバー空港のカウンターにダッシュでたどり着くと。裏のルートを通って、搭乗手続き、荷物のチェック。次から次へとバトンで、最後は「搭乗口まで走ってください!」。動く歩道の上を汗だくになり、心臓をバクバクさせながら走ると、ちょうど最後の搭乗が終わるところだった。メロスは間に合った。

息を整え、平然とした顔で着席しようとすると、他社の記者がびっくりしていた。LINEで間に合ったことを報告して、台湾の松山空港では一番に降りて同業他社の記者を待った。

記者生活41年目にして、新たな知見を得た。「パスポートは中身もチェックしろ」。

コンサート会場に着くと、そこにはセリヌンティウスじゃなかった、マッチがいた。「なんか、やらかしたんだって」。コンサートは最高だった。事前に地獄の苦しみを味わっただけに、ノリノリの気分で楽しめて、原稿を書ける幸せを実感した。打ち上げの火鍋も、ビールも最高だった。

ご心配をかけたみなさん、申し訳ございませんでした。そして、エバー航空のみなさん、ありがとうございました。「明日も頑張ります」。そんな新たな意欲がわいてくる台湾出張でした。【小谷野俊哉】

情報提供元: 日刊スポーツ_芸能
記事名:「 近藤真彦と野村義男の台湾ライブ 現地取材へ向かうも羽田でパスポート間違いが発覚した記者は…