名言で振り返る「タイプロ」人材育成術、究極形は佐藤勝利のあの言葉
大きな話題を集めたtimeleszの新メンバーオーディション「timelesz project-AUDITION-」(タイプロ)が先ごろ終わり、5人の新メンバーを加えた8人体制の新生timeleszがスタートしました。6次審査までの道のりがNetflixで配信され、門外不出のアイドル育成法もさることながら、菊池風磨(29)佐藤勝利(28)松島聡(27)の人材育成力、言葉の力も大きな見どころがありました。印象に残った名言をメモします。
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【歌詞忘れてるようじゃ無理か。歌詞はね、入れとかないと】(1話、菊池風磨)
350人の面接がスタートした1話。応募理由を「女の子が僕を待ってると思ったんで」と豪語しながら歌詞が飛んだ24歳応募者に、菊池風磨が「歌詞は入れとかないと。女の子待ってるのに」と余裕の返し。「○○なようじゃ無理か。○○はね、○○しとかないと」の言い回しは「菊池風磨構文」として大きな話題に。
【(大事なのは)言葉選びだと思っていて。言葉ひとつが命取りになるってことを覚えておいてほしい】(2話、菊池風磨)
「タイムレスさんがまだつかめていない本物の景色をつかみに来ました」「僕が入ることによって、もっと大きな景色を」。熱い思いを語るほど失礼になる候補生にかけた言葉。本気度のグラデーションがすごい2次面接は名珍場面の宝庫。「応募者の中でいちばんやる気がある」のにデビュー曲を言えない人、「絶対に負けたくない」のにエントリーシートがスカスカな人。一般企業の採用面接でもあるあるの光景では。
【黙るというのもひとつのスキル】(4話、菊池風磨)
9人でチームを組む3次審査で、踊るパートをめぐって自己主張が止まらないチームの様子を見て。一歩引き、俯瞰(ふかん)して物事を見る重要さ。時間がむざむざと過ぎる中、「有意義に決めた方がよくない?」とさっさと譲歩し、問題点を秒で整理して話をまとめていった篠塚大輝は最終的にメンバー入り。
【あいさつは基本中の基本。スタッフの皆さんに対して、ありがとうございます、お疲れさまでした、よろしくお願いします、ごめんなさい。こういう基本的なことが心の底からちゃんと言えるかどうかで、皆さんの人間性がすごく出てくる】(7話、松島聡)
どの世界でも、これに勝る真理はないかと。現状を見て、候補生たちにすぐ訓示した松島聡くんはかっこよかったです。
【ファンの方は、自分の人生をかけながら、お金をかけて見に来てくれるわけですよ。ファンをなめてもらっちゃ困ります普通に】(8話、松島聡)
パフォーマンスにお金が支払われるというプロの定義をきっぱり。「1カ月あったのに何してたのっていうのが本心で」「みんなのパフォーマンスを見て、僕がファンだったら、お金を出して見たいかというと、それは一切思わなかった」。「パフォーマンス」を「商品」「サービス」に置き換えればどの業界にも通じる話。後の候補生座談会で、この言葉が心に刺さったという人多数。
【売れてえんじゃねえの? 俺は死ぬほど売れたい】(9話、菊池風磨)
まったく殻を破る気配がない18人の候補生たちにカツを入れたタイプロ名場面。これだけ売れた人が、「死ぬほど売れたい」と欲望丸出しにする姿に候補生たちの目の色が変わった瞬間。「そんなんじゃタイムレス終わっちまうよ」「俺たちで売れようぜ」。
【盛り上げ隊長】(9話、菊池風磨)
人見知りでクールすぎて、テンション爆発の楽曲に大苦戦する橋本将生に、あえてチームの「盛り上げ隊長」を任命。照れながら「赤チーム頑張るぞーっ!」のまさかの大声にチームがどっと沸き、何かがガラリと変わる音が聞こえた感じ。「イエーイ!」の担当パートで完全に殻を破ると、実は誰よりも面白い人間味が次々と明らかに。スイッチ次第で人はこれだけ変わるというタイプロミラクルを体現しメンバー入り。
【0点出そう】(15話、佐藤勝利)
「カワイイ」をテーマにした激甘ソングに直面し、殻を破れないチーム4人に佐藤勝利がアドバイスした言葉。頭でっかちに考えず、1度徹底的にふざけて曲を楽しんでみるという発想の離れ業。「64点とか要らない。マジの0点出してみて」。「殻を破れ」ではなく、「0点を出す」という明快な課題を得て4人の表情がパッと明るく。見事0点のパフォーマンスを出し、チームはスポ根のノリで「カワイイ」を攻略していくやる気集団に激変。
【羽を広げだして、やっと何か自由になって、楽しみながらやっている姿を見て、末恐ろしい存在ですね、ロイは】(17話、佐藤勝利)
5次審査を1位で通過し、タイプロの顔として6次ファイナル審査のステージを迎える浜川路己(ろい=19)に関して、佐藤勝利が評した言葉。ロイ落選はタイプロファンに大きな衝撃となりましたが、人材育成という視点において、個人的にはこれが究極の形だったとも感じています。
ロイくんは、スキルも、いるだけで人をハッピーにするアイドル性も、3人が「段違い」と評してきたタイプロの秘蔵っ子。天衣無縫の才能がありながら、これまでの挑戦の歴史で自信を失っていたらしく、彼をいかに再生させ、覚醒させるかは、振り返ればタイプロの裏テーマでもありました。5次審査で自身の佐藤チームに入れ、文字通り手塩にかけて「革命のDancin’night」の大覚醒に導いた勝利さんのロジカルな手腕は、大変な見応えがありました。
新メンバーに選ばれた5人がバラエティー即戦力の才能を持っていたことを考えると、ロイくんは、3人が常に基準にしていた「バランス」の点で確かに違ったのかも。ロイが飛ぶ空はここじゃない、という親心さえ感じます。
「1位を落とすくらいなら」という声もありますが、5次で落とすという選択肢は3人にはなかったと思います。3人が候補生に順位をつけたのは、ロイの1位が最後。タイプロを制したセンターはこの人だとはっきりさせておくというか、その輝きを、大切なファンに見てもらいたかったのではないかと、勝手に思っています。
そう考えると、「羽を広げて、やっと自由になって」という勝利さんの言葉は、何か大役を果たしたような響きもあり、無償の愛情という、人材育成の究極形にも感じられるのです。
タイムレスと同じ空を飛びたかっただけであろうロイくんも、「僕らを追い越してほしい」と願う勝利さんも、この師弟の物語だけは、少年漫画のように躍動したタイプロの中でどこまでも純文学。「いつかロイのショーをプロデュースできたら」。未来へ続く育成が、いつか実現することを願っています。
【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)