映画「あんのこと」で第67回ブルーリボン賞の監督賞を受賞し、心境を話す入江悠監督(撮影・菅敏)

東京映画記者会(日刊スポーツなど在京スポーツ紙7紙の映画担当記者で構成)主催の第67回(24年度)ブルーリボン賞が28日までに決定した。授賞式は2月12日に都内で開催する。

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監督賞となった入江悠監督(45)は「コロナに直面し、あの時の閉塞(へいそく)感を忘れてはいけないと思った」と、対象作「あんのこと」の製作動機を明かした。

毒親と薬物中毒を克服して、ようやく更生の道を歩み始めた少女が、コロナ禍に希望断たれた実話。「もとになったのは小さな新聞記事です。書いた記者さんを始め、関係者のお話をうかがいながら脚本(兼)が出来上がっていきました」

主演の河合優実(24)はその段階から作品に関わった。「事前取材から同席してくれました。僕の質問が一段落しても、彼女の質問はなかなか止まらない。主人公に年齢が近い分、理解も僕より深かったのではないかと思います。まるで『監督』のように引っ張ってくれました」と明かす。

主人公の杏に関わる刑事と記者には佐藤二朗と稲垣吾郎という個性派をキャスティング。見事なアンサンブルに演出の妙を感じさせた。

デビュー作「SRサイタマノラッパー」(09年)以来、作品ごとに題材を変えてきた。「モテるために映画監督になった、なんて言ってきましたが、全然モテてませんよ(笑い)。娯楽色の濃い作品ばかりでしたから、今までとは違う『あんのこと』はドキュメンタリー的に撮りました」。

新作は一転、時代劇の「室町無頼」(公開中)だ。「根が飽きっぽいんです。その時々に知りたいと思ったことが題材になり、分かったと思ったら次へ行く性分なんです」と笑った。【相原斎】

情報提供元: 日刊スポーツ_芸能
記事名:「 監督賞は入江悠監督「モテるために映画監督に」初めてのシリアス作品「あんのこと」ブルーリボン賞