名前に違わず、清爽な笑顔をのぞかせる藤間爽子(撮影・野上伸悟)

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藤間爽子にとって、2024年は躍進の1年となった。

読売テレビで放送中の連続ドラマ「つづ井さん」(木曜深夜0時59分)でドラマ、映画を含めた映像作品で初主演。出演した映画も5本公開され、1日公開の映画「アイミタガイ」(草野翔吾監督)では唐突に命を落としてしまう、これまでにない役どころを演じた。8月に30歳になり人生としても俳優としても1歩、次のフェーズに踏み込んだ今を語った。【村上幸将】

■3代目藤間紫として重なる親子のシーン

藤間が「アイミタガイ」で演じた郷田叶海は写真家で、主演の黒木華(34)が演じたウエディングプランナー秋村梓の親友だ。中学時代にいじめられていた梓を救い、大人になっても背中を押してきたが、物語の冒頭で、事故で唐突に命を落としてしまう。連ドラのレギュラー出演に初挑戦した21年の日本テレビ系「ボイス2 110緊急指令室」では、元交際相手からDVを受ける警察官を演じた。ビンタされ、10回も足蹴(あしげ)にされ、頭を壁に打ち付けられるシーンも演じたが亡くなる役を演じた経験はあったのか?

「言われてみたら…ないですね。初めてだ。でも(台本を読んで)どこか見ている人の片隅に存在として残り続けて引っ張る、インパクトのある役かなと思いました。撮影日数はそんなに多くなかったけれど…インパクトを残そうとか意識せずに演じていましたが」

叶海は死後も、梓がLINEにメッセージを送り続けてしまうほど、心のよりどころにしてきた存在だ。田口トモロヲ(66)演じる父優作と駅で出会い、軽く会話を交わして別れる、ごく普通のシーンの後、亡くなってしまうが、観客はきっと梓と同じように、胸の片隅に叶海の存在を常に感じつつスクリーンを見つめてしまうであろう、存在感の強い役どころだ。

「叶海にとって、別に、それが(父と対面する)最後になるなんて思っていなかっただろうし、ただ日常の1つが切り取られただけのシーンで。最後の姿にはなるけれど、あえて意味深な芝居をしようとかは思わず、日常の1つだっただけ、と思って演じました」

お互いを気遣いつつもフラットな親子関係は、日本舞踊の紫派藤間流家元を襲名した3代目藤間紫としての藤間と、その歩みを支えてきた父文彦さんとの関係性と重なって見え、藤間自身の人生もかいま見える。

「もしかして、役者というお仕事はおのずと映像を通して(自らの人生が)見えるものなんですかね。叶海は、人が通り過ぎてしまうようなこと、変化にも立ち止まって、気付いてあげられるような繊細な優しさを持った子。その優しさが、両親がうまくいっていないことも感じていて、気にかけてお父さんに伝えたかったんだろうなと…」

■見習いたい同世代の大先輩 黒木華さん

黒木との共演は、22年のテレビ東京系ドラマ「僕の姉ちゃん」に続き2度目。4歳年上と、ほぼ同世代ながら「大先輩」と捉える。

「初めましてではなかったのが良かった。前回は職場の先輩と後輩役で、今回は親友で幼なじみの役。とても気さくな方で、初めてお会いした時から自然体でお話しできるし…それは芝居の中でも共通していた。華さんが飾らずにしゃべってくれるから、私も変に緊張せずに話すことができた。

事前に話し合って、こうしようとか決めごとをするとかなく、2人の雰囲気は作り上げられた気がします」

実は、共通点は多い。黒木は野田秀樹氏のワークショップに参加し、10年のNODA・MAP公演「ザ・キャラクター」でデビュー。藤間も6歳で祖母藤間紫さんとともに歌舞伎座の舞踊会で初舞台を踏み、18年には長塚圭史が主宰の劇団「阿佐ヶ谷スパイダース」に入団と、ともに舞台がベースだ。また、藤間が18年7月に萩尾望都氏の短編漫画をもとに同氏と野田氏が共同で戯曲化した「半神」に主演した一方、黒木も11年に阿佐ヶ谷スパイダースの舞台「荒野に立つ」に出演している。

「華さんは舞台、ドラマ、映画とか、いろいろなジャンルで活躍されている。私も舞台、ドラマ、映画をやらせていただいていて、もしかしたら近い、というか同じ境遇、空気になるのかな。でも、私にとって、華さんは大先輩のイメージ…もちろん、一緒にいたら楽しく話せますけど。華さんの上に立つ姿勢を見て、現場で、むしろみんなを気遣っている。上に立つ人ほど、いろいろな人のことを気にかけてくださるんだなと感じて。私は今まで親友とか、誰かを支える役というのが、なぜか多くて…もし、そういう(主演する)現場があったら見習いたいなと、すごく感じました」

■多忙ドラマ&日舞も「ボチボチです」

「もし」と口にしたが、累計90万部の作家つづ井氏の絵日記をドラマ化し、筋金入りのオタク女子である同氏本人を演じた「つづ井さん」で主演を務めた。映画も2月に「夜明けのすべて」、6月に「九十歳。何がめでたい」、9月に「夏目アラタの結婚」、10月には「チャチャ」と出演作の公開が相次いだ。主演の機会も今後、さらに巡ってくるだろう。30代に突入し今後、どうありたいと考えているのだろうか?「『つづ井さん』で皆さんと一緒に作り上げていく中で、作品を楽しんでもらいたいという思いは主演をやって初めて人一倍、感じるんだなと思いました。具体的にこれをやりたいというのじゃないけれど、出会う作品、役でこんなことに楽しめるんだ、こんな自分がいるんだと毎回、すごく気付かされます。自分を成長させていただける役や作品にこれからも出会いたいし、ひた向きに向き合っていきたいという思いです」

日本舞踊家としても舞台に立ち、流派を率い、指導も行う多忙な日々だ。「一昨年はドラマと日舞の年だった。今年、5本も映画が公開されたのは、昨年が映画の年だったからでは?」と問いかけると「私より、私のことを知っている。そうだったっけ? と思う。でも…ボチボチです」と言い、クスッと笑った。

◆藤間爽子(ふじま・さわこ)1994年(平6)8月3日、東京都生まれ。17年に青学大文学部を卒業し、同年のNHK連続テレビ小説「ひよっこ」に出演。21年2月に、09年に亡くなった祖母藤間紫さんの名跡を継ぎ、紫派藤間流3代目家元を襲名。22年1月に襲名披露・紫派藤間流舞踊会を開催。23年度後期のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」では、趣里演じるヒロイン花田鈴子の一番の親友タイ子役で出演。25年1月17日公開の菅田将暉の主演映画「サンセット・サンライズ」(岸善幸監督)に出演。

情報提供元: 日刊スポーツ_芸能
記事名:「 藤間爽子が躍進の1年を語る 連ドラで初主演、出演映画5本公開 多忙な日々も「ボチボチです」