【悼む】楳図かずおさん、口調は軽いが中身は濃く…唯一無二の作品は徹底したオリジナル指向ゆえ
<悼む>
「漂流教室」「まことちゃん」などで独自の世界観を展開した漫画家、楳図かずおさんが10月28日に亡くなった。88歳だった。小学館が5日、報道各社にファクスを送信し、発表した。
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楳図かずおさんを初めて取材したのは80年、「まことちゃん」のアニメ映画化の発表会見だった。
同じ日、同じ施設でトップスター山口百恵さんの引退記念映画「古都」の製作発表が行われていた。会場の寂しい空気を、本人は意に介さない様子で、等身大のまことちゃん人形を抱えて登壇。お決まりの「グワシッ!」で切り出した。
当時43歳。7色のラメに輝くジャケット姿。首を前後左右に動かしながら、思っていたより高い声で話す。「子どもたちが塾通いに追われているからこそ、ナンセンスな笑いが響くんです」。口調は軽いが中身は濃い。唯一無二の楳図ワールドに引き込まれた。
ギャグ漫画以外でも、ストーリー性のあるSFやホラーは心奥をえぐり、どれもがまぎれもない楳図印だった。強い個性の背景には「影響を受けるから、他の人の作品は目にしたくない」という徹底したオリジナル指向があった。
おなじみのシャツの赤白ボーダー柄は、高じて自宅の外壁にも。「景観を損ねる」という付近住民の声にも折れなかった。
子どものような純真さとあふれ出るような才能を併せ持った人だった。【相原斎】