若松孝二監督

2012年(平24)10月17日に東京・新宿の路上で交通事故に遭い76歳で亡くなった、若松孝二監督をしのぶ毎年恒例の「若松孝二監督命日上映」が十三回忌を迎える今年、パワーアップする。

10月11日から命日の同17日まで1週間にわたり、東京・テアトル新宿で日替わり上映会を行う。上映後は連日、ゲストを招いてのトークショーも実施。さらにシネマイクスピアリ(千葉)や、若松監督が立ち上げたシネマスコーレ(名古屋)そしてシアターセブン(大阪)でも上映会を開催する。

「俺が死んでも映画は残る。映画に時効はない」という若松監督の言葉を実践するかのごとく、今年の上映作品は多岐にわたる。70年「性賊 セックスジャック」から04年「17歳の風景 少年は何を見たのか」をへて、ベルリン映画祭で寺島しのぶが銀熊賞(女優賞)を受賞した10年「キャタピラー」までの若松監督作品を上映する。

また、若松プロに集った若者たちの青春を描いた、白石和彌監督の18年「止められるか、俺たちを」と、1年前の命日上映で特別先行上映され、今年3月に公開された続編「青春ジャック止められるか、俺たちを2」(井上淳一監督)と、作品内に劇中映画として登場した「燃えろ青春の一年」も上映。さらに「青春ジャック」で杉田雷麟が演じた井上淳一監督と、東出昌大が演じたシネマスコーレ木全純治代表のコンビが、監督とプロデューサーとしてタッグを組んだ14年「いきもののきろく」(原案・主演・永瀬正敏/主題歌・PANTA)の東京初上映など、例年を超えた広がりをみせる。

若松プロダクションの尾崎宗子代表と井上淳一監督がコメントを発表した。

尾崎宗子若松プロダクション代表 父である若松孝二の口から、生前、「俺が死んでも映画は残る。映画に時効はない」と聞いた時、私は半信半疑でした。それが、12年前、突然父がいなくなり、若松プロを継ぐことになり、最初は一年だけと思って始めた命日上映会が二年になり、三年になり、五年になり、十年になって、はじめてその言葉が本当だったと実感しました。毎年毎年、父が残した作品を見て、父の思い出を共有してくださるお客さんたち。映画に時効はありませんでした。ありがたいことに、今年はテアトル新宿さん、シネマイクスピアリさん、シアターセブンさんで一週間の命日上映会を組んでいただき、また、シネマスコーレでは命日に旧作が上映されます。若松孝二の映画が今年もひとりでも多くの方に届くことを願っています。しかし、若松孝二に頼ってばかりもいられません。閉塞(へいそく)感で破裂しそうになっているこの世界に向けて、作品を生み出す磁場としての若松プロであり続けたいと願っています。

井上淳一監督 僕が若松プロにいたのは19歳から25歳までの5年半に過ぎません。正直言えば、ここにこのままいても先はないと考え、離れることを決意しました。それでも僕は、若松プロ出身と口にする時、どこか誇らしげだったと思います。それは若松プロを通り過ぎた先輩後輩も同じだったのではないでしょうか。足立正生さんもガイラさんも高間賢治さんも荒井晴彦さんも、みんな。その秘密に少しでも迫れたらと、二本の脚本を書き、その内一本は監督しましたが、やはり分かりません。今回の命日上映週間でその謎を解き明かせたら、というのはあまりにも宣伝惹句(じゃっく)すぎるでしょうか。でも、そういう1週間になればいいと思っています。最後に自分の監督作品の宣伝をさせてください。「青春ジャック」をご覧になった方はわかると思いますが、「燃えろ青春の一年」は劇中で出てきた河合塾の映画です。まさか河合塾の入塾式で上映するためだけの映画がテアトル新宿のスクリーンで見られるなんて、僕自身が感無量です。同時上映の「いきもののきろく」は木全純治シネマスコーレ代表の初プロデュース作品で東京初上映になります。この映画を作り、シネマスコーレで上映した10年前は47分の短編を単独で劇場公開するすべがありませんでした。公開方法を探る内に無駄に時間が過ぎました。しかし、先日、「箱男」を見て、この時間は無駄ではなかったと確信しました。「いきもののきろく」は永瀬正敏さんの原案です。「箱男」を見て、気づきました。これは「箱男」を作れなかった時期の、永瀬さんの「箱男」ではなかったのか、と。その映画を「箱男」と前後して上映できるのは、映画の神様のなせる業ではないでしょうか。また、この映画の主題歌は、昨年亡くなったPANTAさんです。この映画には多くの追悼が詰まっています。ぜひ、ご覧ください。

情報提供元: 日刊スポーツ_芸能
記事名:「 「若松孝二監督命日上映」十三回忌でパワーアップ、テアトル新宿で10・17まで1週間上映