映画「箱男」公開記念「ELECTRIC DRAGON 80000V」上映イベントで笑みを浮かべる石井岳龍監督(撮影・村上幸将)

永瀬正敏(58)が18日、主演映画「箱男」(23日公開)完成を記念して、東京・ユーロスペースで行われた01年7月公開の映画「ELECTRIC DRAGON 80000V」1日限りの上映会に、両作を手がけた石井岳龍監督(67)と登壇した。トークの中で、同監督は「俳優の中の俳優…私にとっては映画俳優という絶大な信頼がある」と、永瀬を日本屈指の映画俳優だと絶賛。その一方で「つい、甘えて箱をかぶせたり、半分、仏像にしたり、猿にしたり…申し訳ない」と、永瀬の絶大な才能を信じるあまり、監督作にキャスティングした際に、かぶりものばかりさせてしまったと“公開謝罪”した。

「箱男」は、1993年(平5)に亡くなった芥川賞作家・安部公房さんが73年に発表した代表作の映画化作品。永瀬は劇中で、段ボールを頭からすっぽりとかぶり、のぞき窓から一方的に世界をのぞき見る、全てから完全に解き放たれた人間が望む最終形態「箱男」への一歩を踏み出した“わたし”を演じた。

また「ELECTRIC-」では、顔の半分を仏像仮面で覆い、怪電波をキャッチする謎の電気修理人・雷電仏蔵を演じた。まず石井監督が、撮影当時を振り返り「寒かったですね。夜の映画がなんで毎日、渋谷の屋上で朝まで…寒かった。とんでもない大変な撮影で、多くのスタッフを失いました。『2度と、お前と仕事しない』と」と、笑いながら語った。

永瀬は、顔の半分を覆った雷電の仏像仮面について「半分、被っています」と、実際に仮面を着けていたと説明。同監督から「(装着時は)ストローで、何か…固形物は食べられなかったのでは?」と装着時は食事が難しかったかと聞かれると「装着している時は、そうですね」と振り返った。

石井監督の18年の映画「パンク侍、斬られて候」では、永瀬は将軍の格好をした猿・大臼延珍(でうす・のぶうず)を演じた。永瀬が完全に、猿になってしまったかのようなビジュアルが当時、世間を驚かせた。永瀬は「監督が『京劇みたいなので大丈夫ですよ』と最初、気を使っていっていただいた」と、同監督のアプローチを明かした上で「僕の方から『全身、猿で』と。そこまで、やらないとと」と自ら全身、猿の特殊メークを志願したと明かした。同監督から「暑かったんですよね。真夏で、しかも毛皮ですから。全身、ふやけたよね」と、改めてねぎらわれると「特殊メークの方に『ウルトラマン』『これ以上はできません』と言われました」と、当時の製作陣との会話を明かした。

撮影には“秘密兵器”もあったという。「特殊メークの方に、レーサーが着る、Tシャツの中を冷水が流れるのを用意していただいてお芝居したんですけど。最初は、全身で4時間くらいかかった。皆さん、慣れて半分くらいの時間で済むようになったけれど…外すわけにはいかなかった」と、特殊メークの裏事情を振り返った。そして「予備のヤツを、いただきました。家にあります」と、猿の特殊メークの一部を自宅に置いていると明かし、客席を笑わせた。

その言葉に耳を傾けていた石井監督は、俳優・永瀬正敏への最大級の賛辞を口にした。

石井監督 私は昭和の世代の映画館で映画を見続けて…そういう時に、生まれた俳優さんたち、たくさんいますけど、そういう匂いがすごくする方。若い新人監督の作品でも、脚本を読んで良いと思ったらやりたいという、フットワークの軽さ。やはり映画、スクリーンで、ものすごく力を発揮される、俳優の中の俳優…私にとっては映画俳優。

その上で、石井監督は「そういう絶大な信頼があり、つい甘えて箱をかぶせたり、半分、仏像にしたり、猿にしたり…申し訳ない」と永瀬に謝罪。永瀬が「恐縮です」と照れ笑いを浮かべる中、同監督は「今度、かぶりものなしで…」と、笑いながら約束した。【村上幸将】

◆「パンク侍、斬られて候」 芥川賞作家の町田康氏が04年に発表した同名小説を、石井監督と脚本の宮藤官九郎とのタッグで実写化。とある街道に“超人的剣客”を自称する浪人・掛十之進(綾野剛)が現れる。巡礼の物乞いを突如、切りつけて「この者たちは、いずれこの土地に恐るべき災いをもたらす」と語り、世紀のハッタリ合戦を展開していく。綾野、永瀬のほか「箱男」「ELECTRIC DRAGON-」で永瀬と共演の、浅野忠信(50)は腹ふり党の元大幹部の茶山半郎、村上淳(51)が刺客・真鍋五千郎役で出演。掛十之進と真鍋五千郎が斬り合う場面で飛び出した技「秘剣 睾丸(こうがん)稲荷返し」や、掛十之進と茶山の絡みのシーンで、アドリブでタックルを仕掛けた浅野に、綾野もドロップキックを返したことなどが話題となった。

情報提供元: 日刊スポーツ_芸能
記事名:「 石井岳龍監督、段ボール、仏像仮面、全身猿…かぶりものさせ続けた永瀬正敏に公開謝罪