「あの子はだあれ?」で映画初主演を務めた渋谷凪咲。NMB48を卒業し本格的に女優業へはばたく(撮影・小沢裕)

“渋谷”再開発計画が幕を開ける。元NMB48で女優の渋谷凪咲(27)が、映画「あのコはだぁれ?」(公開中)で初主演している。補習授業を行う夏休みの学校に姿を見せた「いないはずの生徒」をめぐる、ホラーの巨匠・清水崇監督最新作。アイドル時代からこだわってきた“笑顔”を封印して臨んだ作品について、「新しい自分を見つけたい」と独り立ちして目指す次のステージでの姿について聞いた。【松尾幸之介】

★新しい自分を見つけたい

ヒグラシの鳴き声がよく響く。人けのない夏休みの学校を舞台に、補習授業を行う臨時教師、君島ほのか役を熱演している。約30年前に起こった生徒の自殺が“あのコ”の登場とともに結びつく。暑い夏にピッタリの学園ホラーだ。

「壮大なテーマやシーン、仕掛けもいろいろありますし、自分で見ても終盤にかけては畳みかけるように怖いです。叫ぶシーンはリアルな雰囲気を出すために本番以外では声を出していなくて、どんな感じになるのか自分でもわからない中で撮りました。自分ってこんな声出るんだとか、取り乱したらこんなことになるんだというのを知れるきっかけにもなりました。みなさんの反応が楽しみです。時間を見つけて映画館にも行って、お客さんのリアクションを肌で感じたいなとも思っています」

映画出演は18年公開の「海辺の週刊大衆」以来2度目。主演の大役とともに、今回が“本格演技初挑戦”と銘打たれている。経験豊富な俳優陣との共演から感じることは多かったという。

「(生徒の)高谷さなの一家とのシーンは、演技と分かっていてもすごく怖かったです。私は何も話さないシーンなのに勝手に涙が流れてきて。目の前で見ているだけで感情が動かされるすごいパワーだなと。監督にも『涙が出ていたらおかしいですか?』と聞いたんですけど、『そのままでいいよ』と言ってくださって。このお仕事は、見ていただく方はもちろん、目の前の人の心も動かしてこそなんだなと思いました」

昨年末で約11年間所属したNMB48を卒業。女優として新たな1歩を踏み出した。

「今まではファンの方々だったり、グループのみんなと一緒に目標へ向かっていて、頑張る理由が明確にあったからやれていました。自分の立ち位置もわかりやすかったですし、自分のためだけじゃないからこそ、よりパワーがみなぎっていました。卒業すると、夢であったり、自分が何をしたいのかをしっかり保っていないと進んでいく道がブレていってしまう。それは今までとは全く違う部分だなと感じています。新しい自分を見つけたいという思いも卒業理由の1つなので、お芝居の仕事だったり、いただけたチャンスやきっかけを逃さずしっかり頑張りたいなと思っています」

★お笑いセンス原点は母親

渋谷といえば、愛くるしい笑顔とバラエティー番組などでみせるコメント力や大喜利のセンスでファンや視聴者を癒やし、楽しませてきた。“独り立ち元年”となる今年への思いを聞いていると、培ってきたイメージを1度リセットする気概も感じられた。

「今まで笑顔の一本やりみたいな感じで勝負していたんですけど(笑い)、今回の映画ではほとんどないんです。笑顔を封印という部分は自分の中でも新しいことです。今はお芝居が楽しくて、NMB48に入った時と同じで、悩んでいることにすらわくわくできています。そうした感じで11年間活動できたので、今回の卒業も、NMB48に入ったことに続く、人生の大切なきっかけになるんじゃないかなと思っています」

存在感を発揮しているバラエティーでも、まだまだ「自信がない」と口にする。課題に感じた声の細さを克服するべくボイストレーニングに通うなど、常に学び、成長を目指す向上心が謙虚な姿勢へとつながっている。

「自分の性格的にも、この仕事をしていたら自信を持てることはないと思います。どのジャンルにも上には上がいますし、常に追いかけ続ける日々ですけど、ふと振り返ったら願っていた自分に近づけていたり、着実に前に進めているなという感覚があるので。ネガティブすぎるわけではないんですけど、自信がないからこそ、反省して努力もできるきっかけになります。芸人のみなさんとこの先もずっとお仕事をしていきたいからこそ、常に磨き続けないとその場にはいられない。その気持ちを大切にみなさんから吸収していきたいと思ってます」

お笑いセンスの原点は、母親の影響であることも明かした。

「母がお笑い好きで、よく上沼恵美子さんのラジオを一緒に聞きながらお昼寝したり、家族で旅行に行った時は、ドライブしながら母が買ってきた稲川淳二さんの怖い話のCDをかけて『キャー』って言いながら行ったり。そういうのを母がやってくれて、自分もお笑いが好きになりましたね。母は天然で、こんな優しい人いるのかってぐらい優しい人。私も普段は突っ込まれる側の人ですけど、お母さんには突っ込んでいます(笑い)」

将来の目指す姿を聞くと、ロールモデルには、読売テレビ制作のバラエティー「大阪ほんわかテレビ」で共演する、間寛平(75)月亭方正(56)を挙げた。

「年齢を重ねるごとにおちゃめでかわいらしい人になれたらいいなと思っています。おふたりはおいくつになられても少年みたいな無邪気な心で、瞳がキラキラしていて。番組でも、どの芸人さんよりもはしゃいで、汗をかかれている。こんな2人に自分もなりたいなと思っています。大喜利などで褒めていただくこともありますけど、これからまた新たな武器を見つけて、常に進化し続けていきたいです」

▼「あのコはだぁれ?」大庭闘志プロデューサー

過去に出演されていたミュージカル「ぐれいてすと な 笑まん」を見て、笑いにお芝居に歌に踊りにとマルチな才能を強く感じ、ひかれました。短い期間の中でレッスンや本読みに真摯(しんし)に取り組む姿、現場でスタッフやキャスト1人1人に毎日笑顔で声をかけてくださる姿、こまやかで丁寧な立ち振る舞いはまさしく“座長”でした。ホラー映画なのに笑いの絶えない和やかな空気感を現場で作ってくれたのは渋谷さんの力も大きかったと思います。初の本格的演技とは思えない観客の皆さんを引き込む表情やしぐさ、今まで見たことのない渋谷凪咲の姿にぜひ期待していただけたらと思います。

◆渋谷凪咲(しぶや・なぎさ)

1996年(平8)8月25日、大阪府生まれ。12年12月、NMB48の4期生としてデビュー。14年3月、シングル「高嶺の林檎」で初選抜入り。AKB48との兼任期間も過ごすなど中心メンバーとして活躍し、23年末に卒業。ドラマは23年日本テレビ系「だが、情熱はある」、24年BS松竹東急「アイドル失格」など。現在、フジテレビ系「イタズラジャーニー」進行、日テレ「DayDay.」隔週金曜レギュラーなど。162センチ。血液型A。

◆映画「あのコはだぁれ?」

「呪怨」シリーズなどの清水監督による、23年公開作「ミンナのウタ」のDNAを受け継ぐ最新作。渋谷のほか、生徒役に早瀬憩、山時聡真、荒木飛羽、今森茉耶、蒼井旬、穂紫朋子の若手6人を起用。染谷将太らが脇を固める。

情報提供元: 日刊スポーツ_芸能
記事名:「 渋谷凪咲 再開発計画開幕!アイドル時代からこだわった笑顔封印、ホラー映画で本格演技初挑戦