米ニューヨークで開催中の「ジャパン・カッツ」で、同映画祭初の特別生涯功労賞を受賞した藤竜也

藤竜也(82)が18日(日本時間19日)米ニューヨークで開催中の北米最大の日本映画祭「ジャパン・カッツ」で、同映画祭としても初の特別生涯功労賞(lifetime achievement award)を授与された。

その檀上で、流ちょうな英語のスピーチで会場を沸かせた。

今回の授与は、日本で公開中の最新作「大いなる不在」(近浦啓監督)が出品されたことを受けてのもの。78年の映画「愛の亡霊」など60年以上にわたるキャリアを持つ、藤の日本映画界における偉大な俳優としての功績と俳優人生をたたえられた。藤は、76年の映画「愛のコリーダ」がジャパンカッツで上映されるはずが、かなわなかった思い出も交え、万感の思いでスピーチした。

「藤竜也です。こんなに素晴らしい賞を私にくださりありがとうございます。そして初めまして。お会いできて光栄ですこの場所に来られてとてもうれしいです。というのも これは私の2度目のニューヨークへの渡航で1度目はほぼ50年前です。その時は 映画の…タイトルが難しいんだよな(スタッフから『In the Realm of the Senses』(愛のコリーダの英語タイトルを言われ)『Realm』か 日本人には発音が難しいんですよ Realmだか何だか…」

「とにかくその映画でニューヨーク映画祭にご招待いただきまして我々は上映のためにリンカーンセンターに行ったわけです。ところがとても残念で悲しいことに 本編の検閲の問題で上映が出来なかった。私たちはとてもがっかりしたし犯罪者か何かになったような気分でね。ともかく、それから50年たった今、私はここにいてこんな素敵な賞をいただいた。ありがとうございます」

藤は檀上で、前回の渡米の際、上映がかなわなかった「愛のコリーダ」が今回、上映されると明かし、喜びを口にした。

「私が一番驚いたのは、明日の夕方メトログラフシアターで、その映画『愛のコリーダ』(R,,,Realm…? と言いつつ、頬をたたき)がついに上映されます。50年を経てようやくお客様にお礼を言えます。本当に時間の経過を感じます。映画って素晴らしいし人生も本当に素晴らしいものです。ありがとうございました」

藤のスピーチにを動かされた観客による割れんばかりの大きな拍手で、受賞式は締めくくられた。また、藤が23年9月にサンセバスチャン映画祭(スペイン)71年の歴史で日本人俳優初の最優秀俳優賞(シルバーシェル賞)を受賞した「大いなる不在」の公式上映も、エンドロールが始まるとともに大きく長い拍手が響き渡った。上映後には近浦監督とともに登壇し、拍手や笑いが起き、一体感に包まれた公式上映となった。

藤は「大いなる不在」で、主演の森山未來(39)が演じた俳優・遠山卓の父で元大学教授の陽二を演じた。原日出子(64)が演じた、再婚した妻直美と生活する一方、実の息子である卓とは没交渉だった。その中、警察に捕まり、久々に再会を果たすが、その時には認知症になっており、変わり果ててしまっている役どころだ。

19日(現地時間)からニューヨーク劇場アンジェリカ・フィルムセンターで、また26日にはロサンゼルスのレムリシアターでの劇場公開のほか、台湾、韓国、インドネシア、スペインで配給が決まっている。

◆「大いなる不在」 俳優の遠山卓(森山未來)は、小さいころに自分と母を捨てた元大学教授の父・陽二(藤竜也)が警察に捕まったと連絡を受けた。妻の夕希(真木よう子)を伴い、に久々に九州の父の元を訪ねると、父は認知症で別人のようになっていた。再婚した義理の母直美(原日出子)も行方不明になっており、卓が父と義母の生活を調べ始める。藤は、近浦啓監督(46)とは、同監督のデビュー作となった13年の短編「Empty House」、長編デビュー作となった18円「コンプリシティ/優しい共犯」に続き3作目のタッグとなる。サンセバスチャン映画祭シルバーシェル賞の受賞は、藤にとって05年「村の写真集」で上海映画祭(中国)最優秀男優賞を受賞して以来18年ぶりの国際映画祭での俳優賞受賞となった。

情報提供元: 日刊スポーツ_芸能
記事名:「 藤竜也、ジャパン・カッツ初の特別生涯功労賞で英語スピーチ 50年経て「愛のコリーダ」上映へ