去る10月15日、東京・六本木ヒルズのアリーナにF1チーム「トロロッソ・ホンダ」のマシンと最新の陸上競技用車いす「車いすレーサー」、いかついシミュレーターという“三大のマシン”が並んで展示されたイベント『RDS展』が行われた。


 これは、株式会社RDSがボーダレスな未来を体感してもらうことを目的に開催したもので、訪れた人々は、興味深く写真撮影を行っていたが、一見したところでは関連性がわからず、なぜF1マシンと三輪車なのか?と、そこがまた、興味を掻き立てていた。


 主催者のRDS社は、モータースポーツやパラスポーツ・ロボットの先行開発を行い、そこで生まれた技術を医療や福祉の現場に活用するプロジェクトに取り組んでいる。



 F1マシンが展示されていたのは、RDS社がF1チーム「トロロッソ・ホンダ」のスポンサーを務めているため。ちなみに、11月18日に行われたF1世界選手権第20戦ブラジルグランプリ(インテルラゴス・サーキット)で、ピエール・ガスリー選手が2位で表彰台を獲得。7月28日に行われたF1世界選手権第11戦ドイツグランプリ(ホッケンハイムリンク)で、ダニール・クビアト選手が3位で表彰台を獲得しており、同チームは、今期2度目の表彰台となった。


 また、最新の陸上競技用車いす「車いすレーサー」は、RDS社が制作した。9月18日には、57歳で東京パラリンピックでのメダル獲得を目指す車いす陸上の伊藤智也選手と最新の車いすレーサーを発表した。


 「共に最先端のフィールドで技術を追求し、そこで生み出された技術は様々な形で私たちの新しい日常に落とし込まれています」という杉原代表の言葉が示す通り、この『RDS展』は、普段触れることのない最先端の技術を間近で体感し、これらの技術が私たちの新しい未来につながっていくことを伝えるために開催したという。



 『RDS展』から約1ヶ月。展示されていた最新の車いすレーサー『WF01TR』を使用する伊藤智也選手が、11月7日~15日の期間ドバイで開催されたパラ陸上の世界大会でひとつ大きな結果を出した。T52クラスの1500m、400m、100mと3つの種目でメダルを獲得し、東京パラリンピックの代表に内定した。一度は、引退しながらも東京パラリンピックでのメダルを目指し、現役復帰した56歳の挑戦が、また一歩前に進んだ。そして、この結果は、伊藤選手のメダル獲得ということだけでなく「感覚の数値化」ということの価値を示した結果でもあった。



 伊藤選手をテストドライバーに迎え『WF01TR』の開発が始まったのは2017年。車いすレーサーのマシン開発はテストドライバーの感覚をもとに開発されていたが、RDSでは、伊藤選手の走行中のフォーム、力の分散バランスなどを3Dスキャナーやモーションキャプチャーを使って計測。感覚を徹底的に数値化し、そのデータに基づいてマシンの開発を行った。プロトタイプを製作したあとは、テストを繰り返しながらマシンをアップデートし、月日を重ねることにマシンが進化。先端技術の詰まった最新の車いすレーサーが完成した。


 障害といっても、不自由な部分は人それぞれ。車いすひとつにしても、左右腕の力や重心の位置など、人によって異なるが、いまはまだ“車いすに人に合わせる”時代。この伊藤選手の「感覚を数値化」をきっかけに生まれたのが、シミュレーター『SS01』。座った状態で座面に触れる身体形状の3Dデータやハンドリムの回転速度、回転トルク、重心移動など、様々なパーソナルデータを取得できる。このシミュレーターは、スポーツの先行開発によって生まれた技術であり、いずれ車いすのパーソナライズ化に大きく貢献することになるだろう。


 F1の技術やデータが大衆車の中に落とし込まれていくように、RDS社は、スポーツ・エンターテイメントから生まれた技術を、新しい日常に落とし込み、人々のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上を目指していく。


 





情報提供元: News Lounge