俳優の柳下大(28)とタレントのイモトアヤコ(30)が6月27日、東京・渋谷『パルコ劇場』で行われる朗読劇『ラヴ・レターズ 〜2016 The Climax Special〜』(作:A.R.ガーニー/訳・演出:青井陽治)に出演する。
同朗読劇は、幼なじみの男女2人が、50年以上の長きにわたる手紙のやりとりを通して、10代の情熱・不満、20代の希望、30代の充実、40代の不安と迷い、50代の孤独感など、そのときどきの想いを正直にぶつけあって綴られている。
1989年ニューヨークで初演されるやいなや、全世界で上演され静かなブームを巻き起こした。パルコ劇場でも1990年8月19日に幕を開けて以来、この1つの台本を、年齢も個性も異なった様々な延べ450組以上の名だたる俳優・女優の“カップル”が読み続けてきた。
現パルコ劇場ラストイヤーとなる今年、「ラヴ・レターズ 2016 クライマックス・スぺシャル」と題し、この名作を演じるにあたって、アンディ役の柳下とメリッサ役のイモトに、意気込みや思いなどを聞いた。
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27年間、延べ450組以上の名だたる俳優・女優の“カップル”が読み続けてきた名作。新“カップル”に決まった2人。
イモトは、三谷幸喜が作・演出の舞台『君となら』(2014年夏)に次いで2回目の舞台出演で、「朗読劇は、全く初めて。人前で読むのは小学校の時に当てられて以来」だとか。
それだけに、「単純にうれしかったですが、27年間という歴史の中で、たくさんの方々がやってこられた。中身は同じなのに、そのときの組み合わせで全く違う作品になっているんだろうなぁと。(だから、27年間も続いてきた重さを感じると、)うれしさ反面怖さもあります。『「ラヴ・レターズ」かぁ』って感じです」と、作品へのリスペクトから、ややビビリ気味。
一方、柳下は、俳優集団『D-BOYS』のメンバーとして数多くの舞台をこなしているが、朗読劇は、日本劇作家大会2014豊岡大会 スペシャルリーディング『をんな善哉』(2014年6月14日、兵庫県・城崎国際アートセンター、作:鈴木聡/演出:中津留章仁)や街角リーデイングを1~2回の経験がある程度で、本格的なものは初めて。
「もちろん、知っていましたけど、タイミングが合わず観たことはなかったんです。いつかは出たいなぁと思っていた作品だっただけに、(現PARCO劇場の)ラストイヤーという形で、記念すべき回に出れると決まった時にはうれしかったです。本を読んで、やりがいがすごくある本で、さすが27年間も続いている作品だと。相手役誰だろうと思いました」と、意欲的な感想を。
その「相手役」について、最初は2人とも知らされていなかったという。初めてパートナーの名前を聞いたとき、「面白いなぁと。イモトさんだとは思いませんでした」という柳下に対しイモトも、「そうでしょう、そうでしょうね。私もやると思っていなかった」と、おどけた後、「柳下さんとは、一度、ドラマで共演させてもらっています。でも、こんなガッツリと!2人しかいない中の1人ですからね・・・。今日、一緒にお稽古してみて、頼ろうと思いました(笑)」と、ぶっちゃける。
この朗読劇は、原作者からの注文で、「一回しか本の読み合わせをやっちゃいけない」というルールがある。フレッシュな感覚にこだわっているようだが、このアプローチは奇しくも、2人にも共通していた。
柳下は、「最初の今日のイメージを一番新鮮にもらいたいなぁと思っていたので、読んでいるときには(人物像を)決めきらず、淡々と読んでいました。舞台の時には、いろいろ試したかったり、新鮮なものを新鮮にもらいたいので、真っ白でただセリフだけを覚えたというふうにしていきます。逆に、ドラマや映像(映画)の時にはある程度決めていきますけど」という。
イモトも、「舞台は2回目なのに、しったか(ぶり)でいきますけど」と、笑わせつつ、「私も同じです。決めないようにしてます。ノープランで行きます。相手の人やドラマだと監督さんにすべてゆだねる感じです」と、2人とも現場での相手との空気感や初めて会ったときのインスピレーションを大事にしていくというアプローチ方法だった。
初めて顔を合わせての本読みをした感想を、柳下は、「可愛いメリッサだな。こう来るかなぁと思っていたのが、全然違っていてハッとさせられた。振り回されないように。でも、付いていって追っちゃう。ほっとけないメリッサだなと。人によって(まったく)違う(メリッサになるだろう)から(今まで他の組の「ラヴ・レターズ」を)観なくてよかったですよ」という。
イモトは、「かき乱してやろうという気持ちでした。第一幕が終わった時に、アンディだけには甘えられるなぁと心から思いました。そこだけには素を見せられる。わがままにしても安心感がある。それを感じました。どんなにこっちが情緒不安定で感情的になっても、付いてくるときもあるけど、大きな心で観てくれているなぁと。安心につながる。最後の後半とかすごい好きでした」と、2人も手ごたえを感じたようだった。
本番に向けて2人が気を付けるところは、「私は、“その場、臨機応変に!”がモットーなので。その時の雰囲気、空気、食べた朝ご飯でも違ってくると思う。臨機応変に楽しむしかないなぁ」(イモト)。「とにかく読み間違いしないようにという事だけです。カタカナがね・・・あれさえクリアできれば、そのまま読めばいいかなと思っています。わりとノープランなんで(笑)」(柳下)
さらに柳下は、「読んでる感覚よりは書いている感覚でしゃべってます。そのときの書いている気持ち、その“思い”が言葉にでている。自分(アンディ)の手紙は書いているつもりで、メリッサの手紙は読んでいる感覚。そこにメリッサの声が聞こえてくるという感覚でやっています。腹立たしい時や急かしたいときには、声も大きくなります」と、付け加えた。
最後に、お2人から、朗読劇『ラヴ・レターズ 〜2016 The Climax Special〜』見どころについて聞いた。
柳下 生涯、50年間分のラブレターを2時間で読み切る。子供の時に芽生えた恋ごころが、どこかに離れそうで離れない関係。その時間経過も感じてもらいながら観ていただけたら。
イモト とにもかくにも、この一回、2時間しかない一発勝負!2人の「ラヴ・レターズ」、休館前の現パルコ劇場の雰囲気、来てくださっているお客さんの化学反応がどんな感じになるのか楽しみ。観ている人も、失恋した人もいるでしょうし、付き合っている人もいるでしょう、どこかで自分と何かを合わせて聴くことになると思うので、聴いている人の思いもこっちに伝わってくる感じの空気感を楽しんでいただきたいなぁと。
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■あらすじ
幼馴染みのアンディとメリッサ。彼らは思春期を迎えてお互いを一番近い異性として意識しはじめる。しかし同時に、自分たちが友だち以上の関係にはなれないことにも気づき、二人はそれぞれまったく別の道へと進んでいく。互いに別の人間と結婚した2人だったが、ふとしたきっかけで再会する。